出産するとき、赤ちゃんはママの骨盤の間を通り抜けて出てきます。この骨盤の通り道(骨盤腔)が赤ちゃんの頭よりも狭いと、上手に通り抜けられないことがあります。これを「狭骨盤」といい、難産の原因になってしまうことも。そこで今回は、骨盤が狭いとどのように難産になるのか、狭骨盤と診断されたらどう対処すればいいのかなどをご説明します。
狭骨盤とは?
狭骨盤とは、出産時の赤ちゃんの通り道である骨盤腔が平均よりも狭いことをいいます。
日本産科婦人科学会の定義によると、骨盤腔の奥行(産科的真結合線)か、横幅(入口横径)のどちらかが平均値よりも狭い場合に、「狭骨盤」か「比較的狭骨盤」と診断されます(※1)。
奥行(産科的真結合線) | 横幅(入口横径) | |
狭骨盤 | 9.5cm未満 | 10.5cm未満 |
比較的狭骨盤 | 9.5〜10.5cm未満 | 10.5〜11.5cm未満 |
正常(平均値) | 10.5〜12.5cm | 11.5〜13.0cm |
骨盤腔の形や広さは人によって異なるので、赤ちゃんの頭の大きさもあわせて考慮したうえで、自然分娩(経腟分娩)ができるかどうかを総合的に判断します。
狭骨盤になる原因は?
ママの身長が150cm以下であったり、骨格が小さかったりする場合に狭骨盤が見られることがあります(※2)。
かつては栄養状態が悪いために体の発育が未熟になり、骨盤が狭くなることもありましたが、最近では、栄養不良で狭骨盤になる人は減ってきています。
そのほか、先天的な発育障害や奇形、代謝異常、骨盤・脊柱疾患などが原因で狭骨盤になることも、まれにあります(※2)。
骨盤が狭いと難産になる?
骨盤が狭いと赤ちゃんは産道を通り抜けられないので、無理に自然分娩しようとすれば難産になる可能性があります。
正常なお産であれば、赤ちゃんは後頭部から先にママの骨盤を通り抜けます。しかし、狭骨盤の状態だと、赤ちゃんの体が横になったり(横位)、体が回転して斜めになったりするため、スムーズに出てくることが難しくなってしまうのです(※1)。
赤ちゃんがなかなか出てこられない状態が続くと、赤ちゃんが酸素不足に陥ったり、ママの産道が裂けてしまったりする恐れがあるため、事前に骨盤や赤ちゃんの頭の大きさなどを調べ、通過できるかどうかの判断が必要です。
狭骨盤だと帝王切開が必要なの?
明らかな狭骨盤で、赤ちゃんが通過できないと事前に判断できれば予定帝王切開になります。
ただし、出産前に狭骨盤とはっきり診断できず、実際にお産が始まってみないとわからないことも多くあります。狭骨盤の可能性が高いと判断されても、赤ちゃんの頭の大きさなどによっては自然分娩できることもあるので、骨盤が狭いと必ず帝王切開になるわけではありません。
そこで、事前に判断が難しい場合は、試験分娩を行うこともあります(※2)。これは、帝王切開の準備をしたうえで自然分娩を試み、もし途中で自然分娩ができないと判断されたら緊急帝王切開に切り替える、という方法です。
「狭骨盤かも」と医師から言われたら?
X線検査などの結果、「狭骨盤の可能性がある」といわれると、「無事に出産できるかな…」と不安になってしまうかもしれません。
しかし、先述のとおり、あらかじめ骨盤が狭いことがわかっていれば、安全なお産のための処置が取られるので、あまり不安がらずにリラックスして過ごしてくださいね。
ママにできることとしては、骨盤が狭いと出産が長丁場になる可能性が考えられるので、今のうちから体力づくりに取り組んでおきましょう。ウォーキングやマタニティヨガ、マタニティスイミングなど、軽めの運動を続けるのがおすすめですよ。
ただし、体に負担をかけすぎないように、どの程度であれば運動してもよいか、かかりつけの医師にまず相談してみましょう。
狭骨盤と診断されても落ち着いて
狭骨盤の可能性が指摘された場合、多くは試験分娩になります。試験分娩が始まってからは、状況を見ながら緊急帝王切開などの処置がとられる可能性もあるので、「どのタイミングで帝王切開に切り替わるのか?」などを事前に確認しておくと、落ち着いてお産に臨めるかもしれません。
出産は、何が起こるかわからないものなので、骨盤が狭いかどうかに関わらず、誰にでもトラブルが起こる可能性はあります。ただ、あれこれ心配しすぎるのもよくないので、赤ちゃんに会える瞬間に思いを馳せながら、できるだけリラックスして残りの妊婦生活を楽しめるといいですね。