妊婦は血糖値が高い?妊娠中に正常値へ下げるには?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

妊娠中はホルモンバランスや体調の変化が激しいので、妊婦さん特有の病気を招くことがあることをご存知でしょうか。妊娠中に血糖値が高くなることで起きる「妊娠糖尿病」もその一つです。

今回は妊娠中の血糖値について、妊婦は高くなりやすいのか、糖尿病と診断される数値はどれくらいか、正常値へ下げるためにできる工夫はあるのかなどをご紹介します。

妊婦さんは血糖値が高くなりやすいの?

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血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度を表す数値です。

人間の体内には、血糖値を調整する働きがある「インスリン」というホルモンがあります。

何らかの理由で、インスリンの効きが悪くなる、あるいはインスリン自体が分泌されにくくなると、ブドウ糖が分解されずに血液中に残り、血糖値が高くなります。

妊娠すると、ブドウ糖をお腹の赤ちゃんへ届けるため、ママの体はインスリンが作用しにくい体質となります(※1)。さらに、胎盤ではインスリンが分解され、妊娠していないときの約2倍の量のインスリンが必要になるとされています。

また、妊娠中に増えるプロゲステロンやエストロゲンなどのホルモンは、インスリンの作用と拮抗します。

このようなことから、妊娠中は血糖値が高くなりやすい状態といえます。

妊娠中の血糖値の検査方法は?

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妊娠すると、妊娠初期に採血をして血中の血糖値を調べたり、妊娠中期にブドウ糖を50g摂取して1時間後の血中の血糖値を調べる「50gGCT法(50gブドウ糖負荷テスト)」という検査をしたりするのが一般的です。

検査の結果、血糖値が高くて妊娠糖尿病などが疑われる場合は、75gのブドウ糖を摂取して1時間後の血中の血糖値を調べる「75gOGTT(75gブドウ糖負荷テスト)」と呼ばれる再検査を行い、診断します(※1)。

これらの他に、食事を取っていない状態で血中の血糖値を計測する「空腹時血糖検査」が行われることもあります。

妊娠糖尿病になる血糖値の数値は?正常値はどれくらい?

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妊娠糖尿病とは妊娠中にはじめて指摘された糖代謝異常で、75gOGTTを実施して、以下のいずれか1つ以上を満たした場合に診断されます(※2)。

1. 空腹時血糖値 ≧ 92mg/dL
2. 1時間値 ≧ 180mg/dL
3. 2時間値 ≧ 153mg/dL

妊娠糖尿病は正式には「糖尿病」ではありません。妊娠の影響で起きる糖代謝異常のことで、糖尿病には至らないものの高血糖がある状態を指します。

もし空腹時血糖値 が126mg/dL以上、もしくは血液検査で過去1〜2ヶ月の血糖値の推移を示すHbA1cが6.5%以上である場合は、「妊娠中の明らかな糖尿病」と診断されます(※2)。

妊娠中に血糖値が高いと赤ちゃんに影響があるの?

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妊婦さんの血糖値が高いと、赤ちゃんにもさまざまな影響を与える可能性があります。下記では、その代表的な影響をご説明します。

巨大児

妊婦さんの血糖値が高いと、赤ちゃんにブドウ糖が過剰に供給されることで、大きく成長しすぎ、巨大児になることがあります。

その場合、経腟分娩のときに肩が恥骨に引っかかってしまう「肩甲難産」になるリスクが高まり、帝王切開となったり、お産が長引いたりすることがあります。

胎児発育不全・機能不全

血糖値が高いことで母体の血管に障害が起きると、栄養や酸素が赤ちゃんへ十分に運ばれなくなり、胎児発育不全や胎児機能不全を起こす恐れがあります。最悪の場合、胎児死亡にもつながる可能性があります。

新生児低血糖

母体の血糖値が高い状態が続くと、お腹の赤ちゃんが過剰な糖分に適応し、体内でインスリンを分泌する動きが強まります。

この状態のまま生まれてくると、赤ちゃんの体内には過剰なインスリンが残った状態になり、生まれてすぐに血糖値が急低下してしまうことがあります。

この他にも、血糖値が高いと妊娠高血圧症候群などの合併症を引き起こすリスクも高まり、結果的に流産や早産につながってしまう可能性もあります。

妊娠中に血糖値が高い場合の治療法は?

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妊娠中に血糖値が高くなってしまったら、まずは自宅での食事の改善のため、栄養士さんなどから指導を受けることになります。生活習慣の乱れが原因の場合は、見直しをすることで血糖値が安定することも多いです。

ただし、実践しても良くならない場合は、入院して1日の栄養バランスや摂取エネルギーを調整する「食事療法」を行うこともあります。

食事療法の経過が良ければ、退院して自宅で食事に気をつけながら生活を送ることになりますが、それでも血糖値のコントロールが難しい場合は、インスリンを自身で注射する必要があります。

注射と聞くと怖いと思うかもしれませんが、非常に細い針なのであまり痛みを感じることはありませんし、出産後には注射は中止できることがほとんどです。

血糖をきちんとコントロールできれば、合併症もなく通常どおりに出産でき、産後は血糖ももとに戻るケースが多いです。

赤ちゃんのママ自身のためにも、しっかりと治療を受けるようにしてくださいね。

妊娠中の血糖値改善は生活習慣の見直しから始めよう

妊娠中に血糖値が高く、妊娠糖尿病と診断されたとしても、多くが出産後には治まります。治療をしっかりと受けて、万全の体制で出産を迎えられるようにしたいですね。

まずは食生活を中心とした生活習慣を見直して、できることからはじめていきましょう。

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