妊婦は血糖値が高い?妊娠中に正常値へと下げるには?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

妊娠中はホルモンバランスや体調の変化が激しいので、妊婦さん特有の病気を招くことがあります。妊娠中に血糖値が高くなることで起きる「妊娠糖尿病」も、その一つです。今回は妊娠中の血糖値について、妊婦は高くなりやすいのか、糖尿病と診断される数値はどれくらいか、正常値へ下げるためにできる工夫はあるのかなどをご紹介します。

妊婦は血糖値が高い?原因は?

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血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度を表す数値です。

人間の体内には、血液中のブドウ糖をエネルギーに変える役割を担う「インスリン」というホルモンがあります。このインスリンが何らかの理由で機能しなくなると、ブドウ糖が分解されずに血液中に残り、血糖値が高くなります。

妊娠すると、ブドウ糖はお腹の赤ちゃんへと優先的に供給されるようになり、ママの体はインスリンが作用しにくくなります。そのため、赤ちゃんが必要とする以上の糖分を摂取すると、ブドウ糖が分解しきれず血液中に残ってしまい、高血糖になってしまうのです。

このため妊娠中は、妊娠していないときよりも血糖値が高くなりやすい状態にあるといえます。

妊娠中の血糖値の検査方法は?

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妊娠すると、妊娠初期と中期頃に「随時血糖法」や「50gGCT法」という検査などによって血中の血糖値を調べるのが一般的です。検査の結果、血糖値が高くて妊娠糖尿病などが疑われる場合は、「75gOGTT」と呼ばれる再検査を行い、診断します(※1)。

これらの他に、食事を取っていない状態で血糖値を計測する「空腹時血糖検査」が行われることもあります。

妊娠糖尿病になる血糖値の数値は?正常値はどれくらい?

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日本糖尿病学会によると、血糖値の正常値は「空腹時で110mg/dl未満、糖分摂取2時間後で140mg/dl未満」です(※2)。

妊婦さんの場合、75gOGTTを行い、妊娠中の血糖値が以下3つのうち1つでも満たした場合には、妊娠糖尿病と診断されます(※1)。

1. 空腹時血糖値 ≧ 92mg/dl
2. 1時間値 ≧ 180mg/dl
3. 2時間値 ≧ 153mg/dl

「空腹時血糖値が正常の範囲より低いのに妊娠糖尿病なの?」と不安に思うかもしれませんが、妊娠糖尿病は正式には「糖尿病」ではありません。妊娠の影響で起きる糖代謝異常のことで、糖尿病には至らない軽度の高血糖の状態を指します。

妊娠中は血糖値が上がりやすいので、注意喚起の意味でこの値に設定されていると考えてください。

ただし、基準の血糖値をはるかに上回る数値が出たときは、「明らかな糖尿病」と診断され、妊娠に関係なく糖尿病を発症したと判断されます(※1)。

妊娠中に血糖値が高いと赤ちゃんに影響があるの?

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妊婦さんの血糖値が高いと、赤ちゃんにも様々な影響を与える可能性があります。下記では、その代表的な影響をご説明します。

巨大児

妊婦さんの血糖値が高いと、赤ちゃんにブドウ糖が過剰に供給されることで、大きく成長しすぎ、巨大児になることがあります。その場合、経腟分娩のときに肩が恥骨に引っかかってしまう「肩甲難産」になるリスクが高まり、お産が長引くことがあります。

胎児発育不全・機能不全

血糖値が高いことで母体の血管に障害が起きると、栄養や酸素が赤ちゃんへ十分に運ばれなくなり、胎児発育不全や胎児機能不全を起こす恐れがあります。最悪の場合、胎児死亡にもつながる可能性があります。

先天奇形

赤ちゃんの臓器が発達する妊娠5~8週頃に血糖値が高いと、赤ちゃんの細胞の分化に悪影響を及ぼし、先天奇形になることがあります。

新生児低血糖

母体の血糖値が高い状態が続くと、お腹の赤ちゃんが過剰な糖分に適応し、体内でインスリンを分泌する動きが強まります。この状態のまま生まれてくると、赤ちゃんの体内には過剰なインスリンが残った状態になり、生まれてすぐに血糖値が急低下して、障害を引き起こすことがあります。

この他にも、血糖値が高いと妊娠高血圧症候群などの合併症を引き起こすリスクも高まり、結果的に流産や早産につながってしまう可能性もあります。

妊娠中に血糖値を正常値へ下げるには?

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妊娠中に血糖値が高くなってしまったら、入院して、1日の摂取エネルギーを調整する「食事療法」を行い、血糖値を下げていくこともあります。

経過が良ければ、退院して自宅で食事に気をつけながら生活を送ることになりますが、経過が悪ければ、インスリンを摂取して血糖値を下げることもあります。

また、妊娠中の血糖値は、高くなる前に予防をすることが大切です。体内で糖分になるお米や麺類、パンといった炭水化物、砂糖をたくさん使ったお菓子や清涼飲料水などはひかえめにし、できれば食物繊維の多い野菜を積極的に食べるようにしましょう。

また、運動をして汗を流すのも血糖値コントロールには大切です。調子がよければ30分程度ウォーキングをする、マタニティヨガやマタニティスイミングなどに取り組むなど、妊娠中でもできる軽めの運動を行うことをおすすめします。

妊娠中の血糖値改善は生活習慣の見直しから始めよう

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妊娠中に血糖値が高く、妊娠糖尿病と診断されたとしても、多くが出産後には治まります。しかし、妊娠中に高血糖が続いていると、産後も血糖値が上がりやすくなり、人によっては「糖尿病」に移行する可能性もあります。

そのため、「妊娠糖尿病だから産後は元通りになる」と安心せずに、血糖値が高い状態が続いていれば改善に努めましょう。妊娠中の高血糖は生活習慣が主な原因なので、生活習慣を見直すことが妊娠中の血糖値を下げる第一歩です。生まれてくる赤ちゃんのためにも、規則正しい生活が送れるといいですね。

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