妊娠して最初に直面する試練が「つわり」です。何をしていなくても胃がムカムカする、気持ち悪くて吐く、眠い、だるいなど、様々な症状が押し寄せてきます。つわりが現れるということは妊娠しているというサインではありますが、できれば症状を和らげて、落ち着いた日々を過ごしたいですよね。そこで今回は、辛いつわりを和らげるための対処法についてご説明します。
つわりとは?なぜ起こるの?

つわりは、妊娠初期に現れる生理現象の一つです。主に吐き気や嘔吐などの消化器系の不快症状が現れます。
妊婦さんの半数以上に見られるつわりですが、実は、その原因についてははっきりとしたことはわかっていません。妊娠が成立すると現れることから、妊娠による体の変化が関係していると考えられているという程度です(※1)。
妊娠することで分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが急激に増えることで脳の嘔吐中枢が刺激されるから、あるいはプロゲステロン(黄体ホルモン)の増加で胃腸の機能が低下するからなど、様々な説があります。
辛いつわりの期間は?いつまで続くの?

つわりは妊娠初期の妊娠5~6週頃に始まり、妊娠12〜16週頃まで続きます(※1)。
ただし、つわりが出る出ない、症状の軽い重いは、個人差があるもの。つわりがまったくない人もいれば、安定期に入る妊娠16週以降も続いてしまう人もいるので、これらの期間はあくまでも目安と考えてください。
吐き気以外にもつわりは様々な症状が

つわりで現れる症状は、吐き気や胃のむかつきだけではありません。すべてが医学的に「つわり」とされているわけではありませんが、妊娠初期の妊婦さんには、大きく分けて以下のような5つの症状が見られる傾向があります。
1. 吐きつわり
吐き気を感じて食欲がなくなり、嘔吐することもあります。一般的によく知られている「つわり」の症状です。症状がひどくなると、一切食事ができず、水を飲むだけでも吐いてしまうことも。
2. 食べつわり
空腹になると吐き気がひどくなる症状です。食べ過ぎても気持ち悪くなりますが、まったく食べないと胸焼けがして吐き気をもよおします。
3. よだれつわり
よだれが過剰に分泌されます。よだれの量が多いと自分の唾液が不快で飲み込めなくなり、口から出さずにはいられない人もいます。
4. においつわり
においに敏感になり、苦手なにおいを嗅ぐと気持ち悪くなる症状です。ゴミなどの悪臭だけでなく、食べ物のにおいや湯気、生活臭など普段は気にならなかったものが苦手になる人もいます。
5. 眠りつわり
家にいるときも外にいるときも、四六時中眠くなります。起きているときは体がだるくて、突然眠気に襲われます。気持ち悪くなるだけではなく、眠い・だるいもつわりの一つです。
そのほか、今まで甘いものが好きじゃなかった人が急にケーキなどのスイーツを無性に食べたくなるといった嗜好の変化や、頭痛や腹痛、めまいなどの身体的な症状などが現れることもあります。
つわりが悪化すると妊娠悪阻になる?

つわりは病気ではないので、治療できる薬はなく、辛くても我慢して乗り越えなければいけません。しかし、つわりの症状が重症化すると、「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と診断され、入院が必要になることもあります。
つわりと妊娠悪阻を区別する明確な基準はありませんが、症状の重さである程度区別できるので、以下のような症状が見られたら妊娠悪阻を疑いましょう。
妊娠悪阻を疑うべき症状
● 食事や水分をまったくとれない
● 1日に何度も吐く
● トイレの回数が極端に減る(脱水症状)
● つわりが酷く、元の体重の5%以上減る
● 日常生活を送ることが困難になる
妊娠悪阻はつわりの辛い症状が1日中続くのも特徴です。「つわりで病院に行くなんて…」とは考えずに、辛いときはすぐに病院を受診しましょう。
妊娠悪阻を放置していると母子の命にかかわることもあるので、早めの対処を心がけてください。病院で点滴を打ってもらうことで症状が和らぐこともあります(※1)。
辛いつわりを和らげるには?

妊娠初期につわりが起きるのは生理現象です。つわりをなくすことはできませんが、辛い症状をできるだけ和らげられるよう対処したいですね。
つわりがひどくて十分な栄養を摂取できなかったとしても、妊娠初期の胎児はまだ小さく、母体がもともと持っている栄養で成長できるのであまり心配しないでください(※1)。つわりがひどいときは、以下の工夫をしながら無理をしないことが大切です。
寝起きにすぐ食べられるものを常備する
お腹が空くと気持ち悪くなりやすいので、空腹状態にならないようにすることが大切です。特に朝起きたときは胃の中が空っぽで吐き気をもよおすことが多いので、枕元におにぎりやクッキーなどの軽食を用意しておきましょう。
食べられるものを食べたいときに食べる
つわり中は無理に朝昼晩の3食を食べる必要はありません。食べられるものを食べたいときに食べていれば大丈夫です。レモンなどの柑橘系の果物、梅干しなど酸味の強いもの、ゼリーやプリンなどのどごしのよいものは比較的食べやすい傾向があるので、自分が食べられるものを探してみましょう。
体調が良いときに一度に食べ過ぎると胃がむかむかしてしまうので、できれば少量ずつ、何回にも分けて食べるのがおすすめです。
すぐに口に入れられる食べ物を持ち歩く
家事や仕事をしているとき、電車や車で移動しているときなどに、空腹が原因で気持ち悪くなることも。そんなときに備えて、すぐに口に入れられるガムや飴などを持ち歩くことをおすすめします。気持ち悪くなる前にこまめに口に入れておくと不快症状を抑えやすくなりますよ。
趣味に没頭する
つわりに意識が向いてストレスが溜まるほど、辛さが増してしまいます。つわりが辛いときは読書や映画鑑賞などをして意識をつわりから遠ざけることで症状が和らぐことも。安静にするのも大切ですが、何もしていないと気持ち悪さにかえって気が滅入ってしまうこともありますよ。
つわりが辛いのは赤ちゃんの成長の証
つわりは個人差があるものなので、友達や知り合いの症状が軽いとうらやましく見えてしまいますよね。
しかし、つわりが現れてひどくなるのは、赤ちゃんの成長に合わせて体が変化している証拠でもあります。つわりが辛い時期は限られているので、今だけと考えて前向きに乗り切ってくださいね。