妊娠悪阻とは?原因や症状、治療法は?重症だと入院や点滴が必要?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。沖縄県立中部病院 総合周産期母子医療センターを経て、板橋中央総合病院に勤務。産婦人科専門医、周産期専門医として、一般的な産婦人科診療から、救急診療、分... 監修記事一覧へ

妊娠初期には、多くの妊婦さんが吐き気や嘔吐など、いわゆる「つわり」を経験しますが、まれにつわりの症状があまりに悪化して「妊娠悪阻(おそ)」になることもあります。妊娠悪阻は、ごくまれに重症化すると、意識障害などを引き起こす恐れもあるので、適切に対処する必要があります。今回は、妊娠悪阻の原因や症状、治療法などをご説明します。

妊娠悪阻とは?原因は?

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「つわり」は、妊娠5~16週頃の妊娠初期に見られる生理現象で、主に吐き気や胃のむかつきなど消化器系の症状として現れます。そして、治療が必要になるほどつわりが重症化した状態を「妊娠悪阻」と呼びます。

約50〜80%の妊婦さんがつわりを経験するのに対して、妊娠悪阻が見られる頻度は約1〜5%と、それほど一般的ではありません(※1)。

つわりや妊娠悪阻の原因はまだはっきりとわかっていませんが、妊娠によるホルモンバランスや代謝の変化、妊婦さんの体質などが関係していると考えられています(※2)。

妊娠悪阻は初産婦の方がなりやすい?

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妊娠悪阻の原因は明らかになっていないものの、なりやすい人の条件はある程度わかっています。主に次のリスク要因が挙げられます(※2)。

妊娠に関するリスク要因

  • 絨毛性疾患がある
  • 前回の妊娠でも妊娠悪阻があった
  • 多胎妊娠(双子など)である
  • 初産婦である

病気の既往歴

  • 糖尿病
  • 甲状腺機能障害
  • 精神疾患
  • 喘息

妊娠悪阻の症状は?つわりとの違いは?

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つわりと妊娠悪阻を区別する明確な基準はありませんが、一般的には症状の重さや現れる時間帯によって分類されています。

つわりの場合は、主に吐き気や嘔吐、倦怠感、眠気などの症状が、早朝や空腹時に強く現れます。症状の多くは一過性で、我慢できる程度ですが、人によってはひどい嘔吐が長く続くこともあります。

一方、妊娠悪阻は、何度も嘔吐を繰り返し、ほとんど食事ができないという状態が1日中続くのが特徴です。

妊娠悪阻の症状は、以下のように段階的に悪化するので、できるだけ早く対処することが大切です(※1)。

1期

何度も嘔吐を繰り返す、あるいは食べ物をほとんど食べられないといった摂食障害が見られます。脱水症状による口の渇き、だるさ、めまいなどが起こりやすくなり、体重が減少し始めます。

2期

飢餓状態になり、エネルギー源であるブドウ糖が不足するため、体内の脂肪をエネルギーとして分解します。その結果、血中・尿中のケトン体が増加するだけでなく、低たんぱく血症が起きます。ビタミンB1も不足します。

また、脱水状態に陥ることで血液が濃縮され、血の巡りが悪くなります。深部静脈血栓症のリスクが高まるので、注意が必要です。

3期

血液循環が悪くなることによる肝・腎障害や、体内のケトン体が増えすぎることによる代謝性アシドーシス、低たんぱく血症による胸水・腹水の貯留などが見られます。

4期

意識障害や眼球の揺れ、小脳障害を引き起こす「ウェルニッケ脳症」になると、最悪の場合、命に危険が及ぶ恐れがあります。

妊娠悪阻で病院を受診するタイミングは?

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病院で治療を受ける必要があるのかどうかを自己判断するのは難しいですが、「1日に何度も嘔吐している」「水すら飲めない」「体重が急激に減少している」「トイレの回数が極端に減った」といった症状が見られたときには、できるだけ早く産婦人科を受診しましょう。

病院では、妊娠の経過や尿中ケトン体検査の結果から、治療が必要かどうかを診断します。妊娠悪阻とまでは行かなくても、つわりのつらい症状を緩和するためのアドバイスをもらえますよ。

自分では気づかないうちに、脱水・飢餓状態に陥ってしまうこともあるので、迷ったら産婦人科を受診してください。

妊娠悪阻の治療法は?重症なら点滴や入院が必要?

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妊娠悪阻の程度によって治療法も異なります。妊娠悪阻と診断された場合は、軽度であっても入院して必要なビタミンや水分を補うことが基本です。

症状が重くなるにしたがって、次のように治療法を変えていきます(※1,2)。

入院により休養する

妊娠に対する不安や、仕事や家庭でのストレスが妊娠悪阻の症状を悪化させていることもあります。

その場合、まずは入院してしばらく穏やかに過ごしたり、カウンセリングを受けたりすると、症状が改善されることもあります。

少量を何回かに分けて食べる

吐き気や嘔吐があっても、少しでも食事ができるのであれば、食べられるときに食べられるものを数回に分けて少しずつ食べるようにします。

点滴で栄養を補う

入院しても症状が良くならず、嘔吐が頻繁にあり、自分で食事を摂ることが難しい場合、点滴でブドウ糖やビタミンB1などを補います。

また、つわりや妊娠悪阻の緩和に効果があるとされるビタミンB6を補給することもあります。

症状が強いときは薬を投与する

食事療法や点滴で症状が改善されない場合、吐き気やめまいを軽減する薬を投与することもあります。

妊娠初期は胎児の様々な器官が作られる重要な時期なので、薬を飲むことによる影響が気になるかもしれませんが、妊娠中も安全性が認められている薬も多くあります。

薬に頼りすぎるのも良くありませんが、症状が辛いときは薬の処方について医師に相談しましょう。

妊娠悪阻の赤ちゃんへの影響は?

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妊娠悪阻でなかなか食事ができないと、「赤ちゃんに栄養が行かなくなるのでは?」と心配になるかもしれません。しかし、赤ちゃんは「卵黄嚢」と呼ばれる栄養の貯蔵庫を備えているので、妊娠初期の間は成長に必要な栄養を自分で補うことができます。

ただし、妊娠悪阻がひどくなって脱水症状や飢餓状態に陥ると、先述のとおり母体が命の危険にさらされてしまうので、できるだけ早く治療をしたほうが良いことには変わりありません。

妊娠悪阻の兆候があればすぐに病院を受診しよう

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妊婦さんの多くがつわりを経験するからといって、吐き気などのつらい症状を我慢できるわけではありませんよね。

頑張り屋さんな人ほど、「これくらいで病院に行ったらいけないかな」と思ってしまうものですが、水分や食事が摂れないほど嘔吐が続いたり、体重が激減したりするときは、産婦人科を受診しましょう。妊娠悪阻の場合、入院して治療を受けることが、ママにとっても赤ちゃんにとっても大切ですよ。

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