つわりの期間は平均で6~8週間とされています。毎日つらい症状が続くので、薬を飲みたいけど、お腹の赤ちゃんへの影響がちょっと心配ですよね。そこで候補に挙がるのが副作用が少ないといわれる漢方薬。そこで今回は、つわりに効く漢方薬はあるのか、どんな飲み方が服用しやすいのか、副作用はあるのかなどについてご紹介します。
つわりとは?
つわりとは、妊娠初期に吐き気や嘔吐、食欲不振や食の好みの変化などが起きることをいいます。時期は人によって異なりますが、妊娠5~6週あたりから始まり、12~16週頃に終わるケースが多いです(※1)。
原因について詳しくはわかっていませんが、妊娠初期にホルモンバランスが崩れることや、代謝が変化することなどが原因なのではないかと考えられています。
つわりに効く漢方薬は?
胃腸の動きを活発にしたり、食欲を増進させたりする漢方薬や、吐き気や嘔吐を抑える漢方薬を飲むと、つわりの症状が緩和されることがあります。
つわりに効く漢方薬で代表的なものには次の7つがあります(※2)。
1. 五苓散(ゴレイサン)
2. 小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ)
3. 六君子湯(リックンシトウ)
4. 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)
5. 茯苓飲(フクリョウイン)
6. 人参湯(ニンジントウ)
7. 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
ただし、半夏という生薬は毒性があるとする見方もあり、上記のうち半夏を含んだ小半夏加茯苓湯、六君子湯、半夏厚朴湯の処方を避ける医師もいます。
次の章からは、これらの漢方薬の効能についてご紹介します。
つわりに効く漢方薬その1:五苓散
つわりの際、最初にこの五苓散が挙がることが多く見られます。
五苓散は、つわりだけでなく、脱水症状が見られるときに用いられる漢方薬で、安全性も高いと考えられています(※2)。
五苓散には、茯苓、白朮に加え、血管内の水分を尿として排泄しやすくする沢瀉(タクシャ)と猪苓(チョレイ)、血行を良くする桂皮(ケイヒ)という生薬が配合されています(※3)。
つわりにおける嘔吐や吐き気の症状改善に効果が期待できますが、シナモンの香りで吐き気を催すようなら、無理に飲まないほうがいいでしょう。
つわりに効く漢方薬その2:小半夏加茯苓湯
小半夏加茯苓湯とは、吐き気を抑える半夏(ハンゲ)や生姜(ショウキョウ)といった生薬に、消化機能の活発化や精神安定作用のある茯苓(ブクリョウ)を加えた漢方薬です(※3)。
つわりの吐き気症状に効果的です。
つわりに効く漢方薬その3:半夏厚朴湯
半夏厚朴湯とは、上で紹介した小半夏加茯苓湯に、気の巡りを良くし、胃の内容物を押し下げる効果のある厚朴(コウボク)と蘇葉(ソヨウ)を加えた漢方薬です(※3)。
つわりのときの、胸の不快感や嘔吐の症状に効果が期待できます。
つわりに効く漢方薬その4:六君子湯
六君子湯とは、人参や白朮(ビャクジュツ)、茯苓、甘草(カンゾウ)、生姜、大棗(タイソウ)からなる「四君子湯」という漢方に、吐き気や嘔吐を止める半夏(ハンゲ)と、胃腸機能を整える陳皮(チンピ)という生薬を加えたものです(※3)。
服用すると、つわりの際の吐き気や嘔吐、食欲不振などの症状改善に効果が期待できます。
つわりに効く漢方薬その5:茯苓飲
茯苓飲とは、茯苓、白朮、人参、生姜、陳皮、枳実(キジツ)からなる漢方薬です(※3)。
つわりの際の吐き気や嘔吐、胃のむかつき、食欲不振の解消に効果が期待できます。
つわりに効く漢方薬その6:人参湯
人参湯とは、人参、白朮、乾姜(カンキョウ)、甘草という生薬を合わせた漢方薬です(※3)。
つわりの時期の消化器系の機能が低下することによる体力の低下、食欲不振、嘔吐の症状改善に効果が期待できます。
つわりに効く漢方薬その7:当帰芍薬散
当帰芍薬散とは、五苓散に当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、芍薬(シャクヤク)を加えた漢方薬です(※3)。
妊娠中の病気に効果があるとされているため、つわり以外にも流産の予防にも処方されることがあります。
ただし、当帰芍薬散を服用すると胃もたれを起こすこともあります。
つわりのときの漢方薬の飲み方は?
漢方薬には独特の匂いや苦味を感じるものが多いため、つわりの時期はそれを気持ち悪く感じてしまう場合もありますよね。
そこで、漢方薬を飲みやすくする方法を3つご紹介します。
他の香りや味をつける
漢方薬の飲みにくさの一番の原因はその匂いと味です。そのため、漢方薬を飲むときに、、はちみつやメープルシロップ、砂糖などで甘みをつけてお湯で溶かして飲むことで、かなり飲みやすくなります。
ただし、妊娠中に糖分を摂りすぎると、体重が急激に増えて妊娠糖尿病になるおそれもあります。甘味付けは、あくまでも飲みやすくする程度にとどめておき、糖分の摂りすぎに注意しましょう。
オブラートに包む
漢方薬の匂いと苦味を封じ込めるためには、オブラートに包むことも有効です。オブラートに漢方薬を包むと、匂いも味もほとんど感じなくなるため、飲みやすさがグッと増します。
最近ではゼリー状やカプセル型のオブラートも販売されており、漢方薬を飲むことに特化した商品もありますよ。
錠剤を処方してもらう
五苓散や半夏厚朴湯には錠剤もあります。錠剤であれば、匂いも味も比較的気になりません。粉薬が苦手という人にもおすすめですよ。処方してもらう際に、医師に「錠剤希望」と伝えましょう。
つわりのときの漢方薬に副作用はないの?
漢方薬は西洋薬に比べて、お腹の赤ちゃんに与える副作用が少ないと考えられています。しかし、なかには「禁忌薬」という使用が控えられる漢方薬や、「慎用薬」という使用に慎重さが求められる漢方薬もあります(※2)。
病院で処方される医療用漢方エキス製剤に禁忌薬はありませんが、念のため、特につわりが起こる器官形成期(妊娠12週まで)は、お腹の赤ちゃんに奇形が起こるなどの副作用があるかもしれないということは頭に入れておきましょう(※2)。
また、病院で処方される漢方薬のなかでも、血の巡りをよくするものや、体内の水分調整をするもの、下剤作用があるものに関しては、流産や早産、脱水症状を誘発する可能性があるため、それらを使用する際には注意が必要です。
しかし、生薬の相互作用で副作用が抑えられることもあり、一概に使ってはいけないということでもありません。
いずれにせよ、つわりの時期を含む妊娠中の漢方薬は、自己判断で使用せず、副作用の有無を含め、医師に相談することをおすすめします。
つわりの時期の漢方薬使用は慎重に
つわりの期間、赤ちゃんのためとはいえ、吐き気が続くのはつらいですよね。そんなとき、副作用が少ない漢方薬に頼りたいと思うかもしれません。しかし、副作用が少ないとはいえ、漢方薬も薬であるため、「絶対に安全」とされているものはありません。
そのため、漢方薬や西洋薬にかかわらず、薬を妊娠中に服用することは、どうしても必要という場合を除き、できることなら避けたいものです。
つわりの症状がひどい場合、できるだけ早く治したいと思うかもしれません。しかし、自己判断で薬を服用することのリスクもあります。
漢方薬の使用を含めた薬での治療は、自己判断で行わずに、必ず医師に相談するようにしてくださいね。