不妊症の原因を教えて!どんな症状が現れるの?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

赤ちゃんを授かりたいと願いながらなかなか妊娠できないカップルは、世界的に見ても全体の約9%といわれています(※1)。妊娠できない原因は様々で、男女どちらにもあるものです。まずはその原因を特定することが大切ですよ。そこで今回は、不妊症の原因にはどんなものがあるのか、女性と男性それぞれに分けてご紹介します。

不妊症とは?定義は?

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不妊症とは、「妊娠を望むカップルが性交渉を行っているにもかかわらず、一定期間を過ぎても妊娠できない状態」と定義されます(※1)。

ある研究によると、排卵日とその前2日頃に性交渉を行うと、89%が6周期までに、99%が12周期までに妊娠したと報告されています(※2)。

そのため最近では、「一定期間」を1年と考えるのが一般的で、妊娠を望んで1年経っても妊娠しない場合に不妊検査を受けるように推奨されています。

ただし、年齢を重ねるほどに妊娠できる確率は下がっていくので、30代に入ると、1年を待たず、早めに相談するようすすめられます。

不妊の原因は女性と男性のどちらに多い?

確率

不妊の原因は女性側にあると考えられがちですが、男性側に原因があることも多くあります。

WHO(世界保健機関)が行った不妊原因調査によると、不妊の原因が女性にあることが約41%、男性にあることが約24%、女性男性どちらにもあることが約24%、原因不明が約11%となっています(※1)。

実は、不妊の半分近くは男性にも原因があります。また、調べれば必ずしも原因が見つかるわけでなく、原因がみつからない可能性もあります。原因が一つではなく、様々な原因が重なって起きていることもあります。

ここからは、女性と男性それぞれに、どのような不妊の原因があるのかをご説明します。

女性の不妊症の原因と症状は?

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女性の体で妊娠が成立するには、「排卵された卵子が卵管に取り込まれ、子宮から卵管へと進んできた精子と受精し、卵管を通って子宮にたどり着いた後に着床する」という一連の流れが必要です。

この流れのどこか1ヶ所にでも問題が発生してしまうと、妊娠しづらくなってしまいます。

女性側の不妊症の原因を調べるためには、流れのどこに問題があるかを見分ける必要があります。

排卵の問題

排卵がなかなか起こりにくいことを「排卵障害」と呼びます。排卵障害の原因としては、脳下垂体ホルモン分泌の異常や多嚢胞性卵巣症候群、早発卵巣不全などが挙げられます。

症状

排卵に問題があると、生理が全く来なくなったり、周期が不順になることもありますが、普通に生理が来ていても、実は排卵していなかったということもあります。

自覚症状がなく、検査をしてみて初めてわかるということもあります。

治療

赤ちゃんのもとになる卵子が排卵されなければ、妊娠することができません。

排卵に問題があることがわかったら、低用量ピルでホルモンバランスを整えたり、排卵誘発剤を使用したりして、排卵を促す治療が行われます。

卵管の問題

卵管の問題には、卵子の通り道である卵管が詰まる「卵管閉塞」のほか、卵子が上手く卵管に取り込まれない、受精卵を子宮まで届けることができないなどがあります。

卵管の問題は、クラミジアなどの性感染症による炎症が原因であることが多く、子宮内膜症による癒着で起こることもあります。

症状

クラミジアが原因の場合、おりものの増加や不正出血、下腹部痛などの症状が現れます。ただしこれらの症状は軽いことが多いため、自分では気がつけず、放置されやすいのが特徴です。

子宮内膜症が原因の場合、性交痛、排便痛、腰痛、月経時以外での下腹部痛などが見られます。特に、生理を重ねるごとにどんどん強くなる生理痛が特徴です。

治療

原因がわかれば、その治療を優先的に行います。

クラミジアには抗菌薬の服用、子宮内膜症には低用量ピルやホルモン剤の服用、腹腔鏡下手術などを行うのが一般的です。

子宮頸管の異常

子宮と腟をつなぐ子宮頸管部分に異常があると、精子を卵子のもとまで運ぶことができなくなり、不妊につながります。

症状

子宮頸管の異常は自覚症状を感じにくく、自分ではわからないことが多いです。

子宮頸がんなどの治療で「円錐切除手術」を行うと、子宮頸管の異常が原因の不妊になることがあります。

治療

不妊の原因が子宮頸管だけにある場合は、それに対しての治療は行わず、子宮内に精子を注入する「人工授精」を行うケースがあります。人工授精を行えば、妊娠することが可能です。

着床障害

受精卵が子宮内膜に着床できないことを、着床障害といいます。

着床障害の原因は、粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腔内癒着症など、子宮に何かしらの病気や異常がある場合と、プロゲステロンという女性ホルモンの分泌が不十分な「黄体機能不全」の場合があります。

症状

症状は原因によって異なりますが、子宮に病気がある場合、不正出血や下腹部(子宮)の痛みなどが現れることがあります。

黄体機能不全が原因のときは、月経不順が起こります。正常の生理周期から3日以上のずれが続くときは、注意が必要です。

治療

原因にあわせて、手術やホルモン剤の投与などで治療を行います。症状の重さにもよりますが、妊娠を望むときは、子宮を温存する手術が可能なこともあります。

男性の不妊症の原因と症状は?

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男性側の不妊症の原因は、大きく下記の3つにわけられます。

造精機能障害

精子の状態が悪く、卵子までたどり着けなかったり、たどり着いてもうまく受精できなかったりするものです。

精液中の精子の数が減少する「乏精子症」や全くなくなる「無精子症」、運動率が低下する「精子無力症」、形に問題がある「精子奇形症」などがあります。

症状

精子は非常に小さく、肉眼で確認するのは不可能なので、造成機能障害に自分で気づくことはできません。自覚症状もなく、精液検査をしたときに初めてわかります。

治療

軽度の造成機能障害であれば、禁煙や規則正しい睡眠、栄養バランスのとれた食事など、生活習慣を整えることで改善することもあります。

それでも改善されないときは、漢方薬、ビタミン剤、血流改善薬の服用、ホルモン注射などを行うことがあります。

妊娠を急ぎたいときは、人工授精も効果的です。

精路障害

精子の通り道に炎症などが起こり、精子が外に出られない状態のことです。

症状

精路障害になっても射精自体はできることが多いので、見た目ではわかりません。自覚症状もないことが多いですが、炎症の場所や程度によっては、発熱や排尿痛を伴います。

治療

抗生物質を使用して炎症を取り除くことで改善することもありますが、体外受精や顕微授精での妊娠を目指すのも選択肢のひとつです。

性機能障害

性機能障害には、勃起ができない「ED」や、勃起はできても性行為ができない「性交障害」があります。ストレスや疲労などが原因になることがあり、近年は若い人の発症が目立つようになってきています。

症状

マスターベーションなら勃起や射精ができる、パートナー以外となら性行為ができるなど、症状は人によって様々です。

症状の程度も、全く勃起できない、勃起できても持続できないなど、個人差があります。

治療

治療は原因によっても異なりますが、バイアグラなどの薬の服用や、心のケアを行うことで改善を目指します。

ストレスを取り除き、規則正しい生活を送ることも大切です。

男性・女性どちらにもある不妊症の原因と症状は?

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体が、精子に対する免疫である「抗精子抗体」を持っていることが、不妊の原因になることがあります。男性、女性ともに自覚症状はなく、不妊に悩む人の約3%がこの症状だという報告もあります(※3)。

女性が抗精子抗体を持っていると、精子が卵子までたどり着けなかったり、たどりついても受精できなかったりすることがあります。

男性が抗精子抗体を持っていると、乏精子症や無精子症の原因になります。

また、男女ともに、調べてみても不妊の原因がわからないということもあります。原因不明といっても、本当に原因がないわけでなく、検査では見つけられない何らかの原因によって、精子と卵子が受精できていないことが考えられます(※2)。

不妊症の治療は原因の特定から

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不妊の原因は、検査をしてみないと分かりません。夫婦だけで悩んでいてもなかなか解決しない問題なので、専門機関で検査を受け、原因を特定することをおすすめします。

検査の結果、もし病気がみつかればすぐに治療を始められますし、原因がわからなかった場合は、大きな病気がなかったと安心できます。年齢を重ねるに連れてどうしても妊娠しにくくなってしまうので、検査は早めに受けたほうが、自分たちのためにもなりますよ。

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