人工授精(AIH)とは?費用や流れ、方法は?始める時期はいつ頃?

記事監修 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年に山梨医科大学(現 山梨大学)医学部を卒業。板橋中央総合病院を経て、現在は沖縄県立中部病院 総合周産期母子医療センターに勤務。産婦人科専門医、周産期専門医として、一般的な産婦人科診療から、救... 続きを読む

子供が欲しい夫婦にとって、なかなか妊娠できないと「不妊かもしれない」と悩むこともありますよね。いまや不妊治療は決して珍しいものではなく、日本では6組に1組のカップルが不妊治療を受けています(※1)。不妊治療には様々な方法がありますが、今回はそのうちの一つである「人工授精」について、治療の流れや方法、費用などをご説明します。

人工授精(AIH・AID)とは?

不妊 相談 カップル 病院

人工授精とは、女性の子宮内に人工的に精子を注入して授精させる生殖医療技術のことをいいます。

人工授精は精子の提供者によって大きく2種類に分けられ、配偶者が提供した精子を利用するものを「配偶者間人工授精(AIH=artificial insemination with husband’s semen)」と呼び、第三者から提供された精子を利用するものを「非配偶者間人工授精(AID=artificial insemination with donor’s semen)」と呼びます。

基本的に、不妊治療のはじめの一歩はタイミング法です。タイミング法を何回か試しても妊娠しない場合や、男性側に明らかな不妊原因がある場合などに人工授精が行われます。

人工授精は男性不妊への治療法?

? 疑問

人工授精が行われるのは、主に男性側に不妊の原因があると考えられる場合です(※2)。

人工授精が適応される男性側の不妊原因

● 精液に含まれる精子の数が少ない
● 精子の運動率が低い
● 性交渉でうまく勃起しない
● 性交渉で腟内にうまく射精できない
● 精子が子宮内へうまく入らない

そのほか、女性の子宮頸管粘液の分泌が不十分でないときなどに、人工授精が検討されることもあります。

不妊症の可能性がある場合は、まず人工授精が必要かどうかを判断するためにも、きちんとパートナーと相談して、夫婦一緒に不妊検査を受けることをおすすめします。

検査で不妊の原因が明らかにならないことも多いですが、その場合は年齢なども考慮しながら最適な不妊治療の方法を医師と検討していくことになります。

人工授精の流れや方法は?

妊娠 精子 卵子 受精卵

人工授精は、排卵前から準備を始めて、排卵後に人工授精を行い、妊娠しているかどうかを確認するという流れとなります。主な流れは以下の通りです。

1. 排卵日を推測(生理1~5日目頃)

人工授精では、排卵のタイミングに合わせて精子を注入する必要があるので、生理が来たら排卵の時期と方法について検討します。

排卵の方法は女性の体の状況によって、自然の排卵に任せるか、排卵誘発剤を使用するかを決めます。

2. 排卵前検査(生理10~12日目頃)

排卵日を正確に予測するため、超音波検査で卵胞の大きさや子宮内膜の厚さを測ったり、排卵検査薬で黄体形成ホルモン(LH)の分泌量を調べたりします。

排卵日を特定したあとは、人工授精の実施日・時間を決めます。

3. 排卵日(生理12~14日目=排卵日前日~当日)

人工授精を行う当日は、男性はあらかじめ採取した精子を病院に持参します。

病院では、精液中の雑菌によって女性が感染を起こすリスクを下げ、より運動率の高い精子を選んで授精させるため、精液を洗浄・濃縮します。成分を調整した精子を、注入器を使って女性の子宮内へ入れます。

なお、人工授精後、場合によっては黄体補充療法などで着床率を高める処置を行うこともあります。

4. 妊娠判定(生理28日目=生理開始予定日以降)

次の生理開始予定日を過ぎても生理が来ない場合は、妊娠で分泌されるhCGというホルモンを尿検査で測ることで、妊娠判定を行います。

一般的には、人工授精を3~6周期繰り返しても妊娠が成立しない場合は、体外受精や顕微授精への切り替えを検討することとなります。

人工授精での精子は、どうやって採取するの?

避妊 手術 男性 精子 守る

人工授精には精子の採取が必要になりますが、産婦人科やレディースクリニックにはなかなか行く機会がない男性にとって、どうやって採るのか気になる人も多いようです。

不妊治療を行っている病院には、「採精室」という場所があり、そこで自分でマスターベーションを行い、病院から指定された容器に精液を入れます。

採精室は、ネットカフェの個人ブースのようなイメージの小部屋で、男性ができるだけ落ち着いて過ごせるように工夫されています。中から鍵がかけられ、病院の中でもフロアの端のほうに設置するなど、配慮されています。

自宅で採精することも可能ですが、病院で採取した方が精液の良い状態を保ちやすいといえます。

人工授精で無精子症のときはどうする?

男性 悩む 考える

男性不妊の原因の一つに無精子症があります。無精子症とは精液中に精子が全く無い状態をいい、男性の100人に1人は無精子症であるといわれています。

手術やホルモン剤投与によって治療する方法があることに加え、夫ではなく精子バンクからの精子提供を受け、非配偶者間人工授精(AID)によって妊娠・出産をめざすことも選択肢の一つとしてあります。

日本でも非配偶者間人工授精が認められているものの、まだ認知度が低いのが現状です。

産婦人科や不妊専門のクリニックで専門医に相談し、夫婦でしっかり話し合ったうえで、不妊治療の一つの選択肢として検討してください。

人工授精の費用は?保険は適用される?

お金 計算機 お札 

人工授精は自由診療扱いとなり、健康保険が適用されません。そのため、人工授精1回あたり約2~3万円の費用を自己負担する必要があります。これに加えて、診察料などがかかることもあります。

人工授精にかかる費用は病院によっても異なるので、事前に確認してくださいね。

人工授精はできるだけ早い方がいい?

家族 親子 夫婦 子供 家庭

人工授精を希望する人のなかには、数年間子供ができず、悩んだ末に来院する人も多くいます。しかし、女性・男性ともに年齢が高くなると、不妊治療の成功率は下がってしまいます。

たとえば、患者の女性が40歳未満であれば、3~4回の人工授精で約80%が妊娠するというデータがあります。一方で、40歳以上の場合、人工授精を4周期実施した場合の妊娠率は約10%です(※3)。

妊娠しやすさには、年齢だけではなく卵子や精子の質なども関係してくるので一概にはいえませんが、人工授精を行うタイミングは早ければ早いほど、妊娠する確率も高くなります。

40歳以上の女性の場合、人工授精にこだわらず、すぐに体外受精や顕微授精を検討した方が良いこともあります。

人工授精は障害児や奇形児、流産などのリスクはあるの?

リスク

人工授精を行う過程で、排卵誘発剤の副作用や、精子を針で子宮に注入することによる感染などが見られるリスクはあります。

しかし、「人工授精で生まれた赤ちゃんは障害や奇形、流産などのリスクが高い」ということを示す研究報告や統計データは、今のところありません。

ただし、不妊治療をする人は男性、女性ともに年齢が高いことが多いので、「加齢の影響で赤ちゃんの染色体異常や早産のリスクが高い」とはいえます。

人工授精をするかどうかを問わず、高齢妊娠・出産には様々なリスクが伴うということを認識しておくことが大切です。

人工授精の選択は、医師やパートナーとよく相談を

カップル ベッド 夫婦 相談

不妊は女性の問題、と思っている人も多いかもしれませんが、実は原因の半分は男性側にあります。赤ちゃんができない原因がわからないまま悩み続けるよりは、夫婦一緒に不妊検査を受け、状況に合った不妊治療を検討してみるのも良いかもしれません。

年齢にもよりますが、不妊原因が明らかになれば、タイミング法や人工授精による妊娠が期待できる可能性もありますし、最初から体外受精や顕微授精に踏み切った方が良い場合もあります。

病院に相談しに行くのはなかなか勇気がいるかもしれませんが、まずは不妊治療について気になることを専門医に相談し、今後について夫婦でよく話し合ってみてくださいね。

こそだてハックに「いいね!」して情報を受け取ろう