妊娠37週に入れば正期産に当たるので、「もうすぐ出産!」とソワソワした気持ちになりますよね。いつ陣痛が来てもいいように準備をしていても、なかには出産予定日が過ぎても陣痛がこない場合があります。予定日を過ぎてしばらく経つと、人工的に陣痛を促して出産をする「誘発分娩」の処置が取られます。今回は誘発分娩とはどういうものか、その方法や入院の流れ、出産までにかかる時間、費用など詳しくご説明します。
誘発分娩とは?
誘発分娩とは、経膣分娩ができる状態で陣痛が来ていない場合に、人工的に陣痛を引き起こして分娩を促すことをいいます。子宮頸管をやわらかくしたり、薬を投与して子宮収縮を促したりします。
誘発分娩はあくまで、母体と胎児の安全を守ることが目的なので、希望すればできるわけではありません。出産予定日を過ぎたらすぐに誘発分娩になるというわけでもありません。
いくつかの条件を踏まえた上で、母体と胎児の健康状態を見て実施されます。
どんなときに誘発分娩が適用される?
誘発分娩が実施できる人は限られています。前提として、あらかじめ経膣分娩ができる状態で、自然分娩を行うことになっている人が対象です。
その上で、以下のような条件を満たしているかどうかで医師が判断します。
正期産の時期を過ぎそう、あるいは過ぎた
正期産を過ぎると、胎盤の機能が低下して母体と胎児へのリスクが高まります。そのため、正期産の時期が終わる妊娠41週6日目までの間で、母体と胎児の健康状態を見ながら誘発分娩の処置が取られます。どのタイミングで判断するかは病院によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
微弱陣痛になった
自然に陣痛が来て入院したとしても、陣痛が弱い「微弱陣痛」になって、なかなか分娩に至らない場合に誘発分娩が行われます。微弱陣痛では母体と胎児が長い時間苦しい思いをして体力が奪われるため、母子ともにリスクが高まります。
陣痛が来る前に破水が起きた
陣痛が来る前の破水は前期破水と呼ばれ、誘発分娩が適用されます。破水が起きた後は24時間以内に出産しないと胎児に危険が及ぶため、陣痛が来るのを待たずに誘発分娩を行います。
そのほか、妊娠の継続が母体や胎児に悪影響を与えると判断された場合には誘発分娩が実施されます。また、予定日超過による精神的なストレスが大きい場合などで誘発分娩が適用されることもあります。
誘発分娩の方法や入院の流れは?
誘発分娩の条件に当てはまるかを確認した後、子宮頸管がやわかくなっているかをチェックします。子宮頸管がやわかくなっていれば最初から陣痛促進剤を投与しますが、子宮頸管がやわらかくなっていなければ最初に子宮頸管熟化処置が行われます。卵膜剥離などを実施して子宮頸管の熟化を促したあとで陣痛促進剤が投与されます。
誘発分娩の流れは、母体や胎児の状況によっても異なりますが、ここでは一番多い「予定日超過」でのケースをご紹介します。
1. 出産する日と時間を決める
出産予定日を過ぎても陣痛が現れず、妊娠41週に入る頃になると誘発分娩が検討されます。そして、子宮収縮剤の副作用などについて説明が行われ、誘発分娩を実施する日時を決めます。なお、実施日の前に自然に陣痛が来て出産に至ることもあります。
2. 入院をして陣痛促進剤を投与する
病院によって異なりますが、誘発分娩の数日前に入院して体調を管理します。そして誘発分娩の予定日当日に陣痛促進剤を服用するか、点滴投与します。
3. バルーンを挿入して子宮口を開く
子宮頸管の熟化具合によっては、陣痛促進剤を投与しながら子宮口にバルーンを入れるなどで子宮口を広げます。
4. 子宮口が全開になったら分娩台へ
子宮口が全開になったら自然に陣痛が来たときと同じように分娩台へ上がって出産します。
陣痛促進剤を投与している間は急な体調の変化が起きないように、血圧や脈拍、子宮収縮の状況、胎児の心拍などがしっかり管理されます。
誘発分娩にかかる出産時間は短いの?長いの?
自然に陣痛がきて出産する場合、本陣痛がきてから出産までの時間は初産婦で12〜15時間ほどです。ただし、個人差が大きく、数時間で分娩が終わる人もいれば、20時間以上かかる人もいます。
陣痛促進剤を使った誘発分娩も、かかる時間はあまり変わりません。誘発分娩で陣痛が来てからすぐに出産する人もいれば、陣痛がくるまで長い時間がかかり、出産まで長時間に渡ることもあります。
また、陣痛促進剤がうまく効果を発揮しないケースもあり、その場合は日を改めて別の陣痛促進剤を使用するなどで入院期間が長引くこともあります。
誘発分娩の費用は?保険は適用される?
誘発分娩を行った場合の費用は、陣痛促進剤の投与回数や分娩内容、入院日数なども関係し、病院によっても大きく異なります。
一般的に、3~20万円ほどが自然分娩の費用に加算されると考えてください。陣痛促進剤に数万円、差額ベッド代が必要になる病院だと1日1万円ほどかかります。誘発分娩の費用については出産予定の病院に事前に確認しておきましょう。
ちなみに、出産は病気ではないので自然分娩の場合は健康保険が適用されず、誘発分娩も自然分娩の範囲内とされているため、健康保険の適用外になります。ただし、個人で加入している医療保険で入院特約などに入っていれば保険適用される可能性もあるので、保険会社に適用範囲を確認してください。
誘発分娩にリスクはあるの?
誘発分娩の場合、陣痛促進剤によるリスクがあります。陣痛促進剤は人工的に陣痛を引き起こすものなので、陣痛促進剤が効きすぎて、子宮収縮が過度に強くなる「過強陣痛」になる場合があるのです。
その結果、胎児を圧迫して「胎児機能不全」を起こしたり、「子宮破裂」や「子宮頸管裂傷」を引き起こしたりすることがあります。また、出産後に子宮が疲れ切って止血が行われなくなる「弛緩出血」が起きることもあるので注意が必要です。
誘発分娩も自然分娩の一種なので落ち着いて対応を
誘発分娩と聞くと何か特殊なことをするような気がして不安になるかもしれません。しかし、出産を促すために陣痛促進剤を使ったり、子宮頸管熟化処置を行ったりするのは、どちらも母体や胎児の安全を確保するのが目的です。
陣痛を促したあとの流れは自然分娩とほとんど変わらないので、誘発分娩の可能性があるといわれても慌てないでください。どのような出産をするにしても医師とよく相談をして、納得したうえで自分にとって一番いいお産を迎えられるといいですね。