妊娠初期は体にさまざまな変化が起こる時期なので、マイナートラブルに悩まされる妊婦さんも多くいます。なかでも腹痛やお腹の張りを感じると、「産婦人科を受診した方がいいのかな?」と、不安になることもあるのではないでしょうか。今回は、妊娠初期に見られる腹痛について、原因や対処法、病院に行くべき症状などをご説明します。
妊娠初期に腹痛は起こりやすいの?
妊娠初期は、まだお腹の大きさは目立たないものの、ママの体の中では様々な変化が起きています。
受精卵が着床して妊娠が成立すると、妊娠していなかったときには分泌されない「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」というホルモンが分泌されはじめます。
それにより妊娠初期は、「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2つの女性ホルモンの分泌も促進されます(※1)。
これらのホルモンは、妊娠を維持する一方、腰痛や腹痛などのマイナートラブルを引き起こす原因の一つでもあります。
妊娠初期の腹痛の原因は?
いわゆる「安定期」に入っていない妊娠初期は、心も体もデリケートな時期。腹痛があると、「お腹にいる赤ちゃんは大丈夫かな?」と不安になってしまいますよね。
しかし、軽い腹痛であれば、妊娠によって起こりうる生理的な現象の一つなので、心配しすぎないでくださいね。
具体的には、前述のホルモンの作用によって、次のような体の変化が起きていることが腹痛の原因と考えられます。
子宮が引き伸ばされる
妊娠初期は、見た目にはわかりづらいものの、お腹の中で赤ちゃんが毎日少しずつ成長しています。
その成長に伴い、ママの子宮も大きくなっていきます。子宮の筋肉が引き伸ばされていく過程で、人によっては少し違和感や痛みがあるかもしれません。
お腹全体に負荷がかかる
子宮が大きくなるにつれて、子宮の周りの靭帯が引っ張られたり、臓器が圧迫されたりするので、お腹全体に鈍い痛みを感じることもあります。
妊娠初期はまだそれほど子宮が大きくなっていませんが、妊娠週数が進むにつれてどんどん大きくなり、骨盤部やその周りへの負荷が増えていきます。
その結果、腹痛だけでなく、腰痛や頻尿などのマイナートラブルに悩まされることもあります。
便秘
妊娠前はお通じが良かった人でも、妊娠すると便秘になりがちです。それによって腹痛が起こることもありえます。
先述のとおり、妊娠が成立するとプロゲステロンという女性ホルモンが増加します。これにより胃腸の平滑筋がゆるんで動きが鈍くなるうえに、大きくなった子宮に胃腸が圧迫されてしまうため、食べたものをうまく消化しづらくなり、便秘が起こりやすくなるのです。
妊娠初期の腹痛の対処法は?
妊娠初期は、まだお腹が大きくないぶん、仕事や日常生活で無理をして動いてしまいがちです。しかし、腹痛など気になる症状があるときは、座ったり横になったりして、体を休めましょう。
お腹まわりの血行が悪くなると、腹痛が悪化することもあります。ひざ掛けや腹巻きで下半身を温めたり、飲み物はできるだけ温かいものを選んだり、夜はシャワーだけで済ませず湯船にゆっくり浸かったりと、体をなるべく冷やさない工夫をしてみるのも良いですよ。
なお、便秘を解消することで腹痛が治る場合もあります。お通じに悩んでいる人は、納豆や海藻類、根菜類などからバランス良く食物繊維を摂り、こまめに水分補給をしてくださいね(※2)。
妊娠初期の腹痛や違和感は、「少し気になる」程度であればあまり心配する必要はありません。「お腹の中で赤ちゃんが大きくなっている証拠だな」と落ち着いて様子を見てくださいね。
妊娠初期の腹痛で病院へ行く目安は?
基本的には、少し安静にして治まるくらいの軽い腹痛であれば問題はありません。ただし、次のような場合は、念のためかかりつけの産婦人科を受診してください。
● 5~10分ほど休憩しても腹痛が治まらない
● 短時間のうちに何度も腹痛がある
● 強いお腹の張りや下腹部痛がある
● 不正出血がある
● つわりなどの症状が急に消えた
これらの症状が見られる場合、切迫流産や流産の兆候の可能性もあります(※1)。
ただし、妊娠中のお腹の張りや不正出血は時々見られるものです。万が一のことを考えると不安な気持ちになってしまうかもしれませんが、まずは落ち着いて病院を受診し、医師に相談してみましょう。
妊娠初期の腹痛が続くときは医師に相談を
妊娠初期の女性の体内では、さまざまな変化が起こるので、戸惑うことも多いかもしれません。腹痛があると、お腹の赤ちゃんが元気に育っているのか不安になるものですが、痛みが軽いようであれば基本的には問題ありませんよ。
ただし、腹痛以外にも気になる症状があったり、放っておいてもいいのかどうか判断に迷ったりするのであれば、かかりつけの産婦人科を受診しましょう。