つわりは病気ではなく、妊娠中の生理的な現象のひとつとはいえ、吐き気が続くとつらいですよね。できれば薬に頼って、少しでも楽になりたいと考える妊婦さんもいるかもしれません。しかし、妊娠中でも服用できる吐き気止めの薬はあるのでしょうか?今回はつわりの吐き気軽減に効果のある薬や漢方についてご説明します。
つわりはなぜ起こるの?
つわりとは、妊娠初期に起こる不快症状のことです。吐き気が起こる人もいれば、眠気、頭痛、めまい、倦怠感などが現れる人もいます。
つわりの症状や程度には個人差があり、日常生活に支障が出るほど強いつわりに襲われる妊婦さんがいる一方で、つわりがほとんどない妊婦さんもいます。
つわりが起こる原因は、まだはっきりわかっていませんが、妊娠によってホルモンバランスが大きく変化するためではないか、と考えられています。
つわりのときに処方される吐き気止めの薬は?
つわりの症状である吐き気がひどい場合には、かかりつけの産婦人科でビタミン剤や吐き気止めの薬が処方されることもあります。
医師や薬剤師から副作用のリスクや注意点を聞き、用法・用量を守って正しく服用しましょう。
「ピドキサール」(ビタミンB6)
まだ研究成果として確実とはいえない段階ですが、ビタミンB6は、吐き気や嘔吐の予防・改善に効果があるのではないか、と考えられており、アメリカの産科婦人科学会では、妊娠中の吐き気や嘔吐の治療として、ビタミンB6を1日に数回投与する治療を推奨しています(※1)。
日本でも、吐き気止めの薬が処方される前に、「ピドキサール」などのビタミン剤(ビタミンB6)を処方してしばらく様子を見ることがよくあります。
ビタミンB6はサプリメントとして市販されているものもありますが、自己判断で飲まずに、まずはかかりつけの産婦人科医に相談してくださいね。
「プリンペラン」(メトクロプラミド)
「プリンペラン」は、胃腸の機能を整え、吐き気や嘔吐、食欲不振や胸やけなどを改善する効果がある薬です。
妊娠中に飲んでも、お腹の赤ちゃんに奇形が発生するリスクや、早産や死産などが発生する確率が高まることはなく、安全性が認められています(※2)。
副作用として、めまいや眠気が起こることがあるため、服用後の車の運転などは注意する必要があります。
「グルタチオン」(タチオン)
「グルタチオン」は解毒剤の一種で、中毒症状をやわらげる効果がある薬です。副作用が比較的少なく、つわりだけでなく自家中毒、慢性肝炎などの治療にも使われます(※3)。
「ピレチア」(プロメタジン塩酸塩)
ピレチアは、吐き気や乗り物酔い、アレルギー性鼻炎などの治療に用いられる抗ヒスタミン薬です。妊娠中に飲んでも、お腹の赤ちゃんの奇形リスクは増えないとされ、つわりがひどい妊婦さんにも処方されることがありますが、保険は適用されません(※2)。
副作用で眠くなることがあるため、服用後は、車の運転など集中力が必要な作業は避けた方が良いとされます。
つわりのときに、胃薬は飲めるの?
妊娠中は、つわりの吐き気とあわせて、胃痛に悩まされることがあるかもしれません。
そんなときは、吐き気止めの薬と同じく、自己判断で胃薬を飲んだりせず、まずはかかりつけの産婦人科医に相談して妊娠中でも安全に飲める薬を処方してもらいましょう。
市販薬のなかにも、妊婦さんが飲める胃薬として「太田胃散」、「ガスター10」「エビオス錠」などがあります。ただし、これらを購入する前にも、産婦人科医や薬剤師に相談するようにしてくださいね。
つわりの吐き気止めとして、漢方薬を飲める?
つわりの吐き気をやわらげるために、次のような漢方薬が処方されることもあります(※4)。
● 五苓散(ごれいさん)
● 小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)
● 六君子湯(りっくしんとう)
● 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
● 茯苓飲(ふくりょういん)
● 人参湯(にんじんとう)
● 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
一般的に漢方薬は、医薬品に比べて効き目がゆるやかですが、副作用が比較的少ないという特徴があります。
なお、個人の体質や症状に合わせて適切な漢方薬を飲むことが大切なので、はじめて服用するときはかかりつけの産婦人科や漢方医のいる薬局で相談してみましょう。
つわりの吐き気止め薬は、医師に相談を
つわりの吐き気があると、できるだけ早く薬を飲みたくなるかもしれませんが、お腹の赤ちゃんへの影響も考えて、自己判断で服用することは避けましょう。必ずかかりつけの産婦人科医に相談し、自分の体質や体調にあったものを飲んでくださいね。
つわりで何度も嘔吐を繰り返して食事がとれず、体重が急減している場合、「妊娠悪阻」という治療が必要な状態に陥っている可能性もあるので、つらいときは無理せず、病院を受診しましょう。