産後の痔の治し方!切れ痔といぼ痔は便秘が原因?手術は必要?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

出産後、痔に悩まされるママはたくさんいます。しかし、「恥ずかしい」「赤ちゃんのお世話で忙しい」などの理由から病院に行く時間を作れず、ひとりで我慢している人もいるようです。そのまま放っておかずに、きちんと治すことが大切ですよ。今回は、産後に痔になりやすい原因と治し方、痔を悪化させないためのポイントをご説明します。

産後の痔がつらいのは、いつから?

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それまで痔とは無縁の生活を送っていた人でも、妊娠・出産を機に痔になってしまうことはよくあります。

出産を終えてしばらくの間は、後陣痛や会陰切開の痛みが続いています。そのため、「肛門のあたりに何か違和感がある」という感覚はあったとしても、痔に気づかなかったり、痛みがあまり気にならなかったりする人もいるようです。

しかし、産後1ヶ月ほどたって、出産に伴う痛みがやわらいでくる時期になると、肛門のあたりが切れているような痛みをはっきり自覚できるようになり、排便するときや寝返りを打つときにつらい、と感じるママも多くなります。

産後の痔は、切れ痔やいぼ痔が多い?

「痔」にはいくつか種類がありますが、そのうち、産後に多く見られるのは「切れ痔」と「いぼ痔」です。それぞれの症状は次のとおりです。

切れ痔(裂肛)

「切れ痔」は、肛門周辺の皮膚が傷つき、裂けている状態です。排便するときに痛みや少量の出血が見られます。排便し終わったあとに、肛門の周りがヒリヒリと痛むこともあります。

切れ痔を繰り返すと、皮膚の裂け目が深くなって炎症を起こし、ポリープなどができて肛門が狭くなることで、さらに排便時の痛みが強まります。

いぼ痔(痔核)

「いぼ痔」は、肛門まわりの血管が圧迫されてうっ血状態になり、いぼ状にふくらんだ状態です。

いぼ痔には、肛門の内側にできる「内痔核」と、肛門の外側のおしりの皮膚にできる「外痔核」の2種類があります。

内痔核の場合は痛みがないため、出血してはじめて気づくこともあります。一方で外痔核は、皮膚に知覚神経が通っているため痛みを感じます。

産後の切れ痔やいぼ痔は、便秘が原因?

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産後に痔に悩まされやすい主な理由は、次の2つです。

出産のいきみ

妊娠中は、ホルモンバランスの変化により便秘になりやすく、排便するときに強くいきむことで肛門まわりの血管に負荷がかかっていぼ痔ができたり、肛門の皮膚が裂けて切れ痔になったりします。

また、大きくなった子宮によって肛門周辺の血管が圧迫されることも、痔になりやすい原因です。

このように、妊娠中は痔になりやすいのですが、出産で強くいきむことによって肛門まわりの血管がうっ血したり、皮膚が傷ついたりしてさらに痔の症状が悪化するほか、新たに痔ができることもあります。

産後の便秘

産後は、授乳をしていると水分が母乳に持っていかれるので、意識的に水分補給しないと便が固くなり、便秘気味になります。また、会陰切開や帝王切開の傷をかばって下腹部に力を入れにくく、排便の頻度が減ることで、便秘になることもあります。

便秘が続いている状態で、排便するときに無理にいきむと、いぼ痔や切れ痔ができる原因になってしまうのです。

産後の痔を治すには?悪化を防ぐには?

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前述のとおり、産後に痔ができたり悪化したりするのは「出産のいきみ」と「産後の便秘」が原因ですが、そのほか、日常生活のちょっとした習慣が、痔を悪化させてしまうこともあります。

産後の痔をできるだけ早く治すために、次のようなことを意識して過ごしてみてくださいね。

便秘を予防・改善する

妊娠・出産を終えたあとにできる一番効果的な対処法は、便秘を治すことです。便秘にならないような生活を心がけることで、排泄のときに腸や肛門にかかる負担を減らすことができ、痔を繰り返さなくて済みます。

便秘のときは水分や食物繊維を意識して摂るようにしたり、便意を感じたら我慢せずにトイレへ行く習慣をつけたりしましょう。ただし、排便のときにあまり強くいきみすぎないように気をつけてくださいね。

下痢を予防・改善する

下痢が続くことで肛門まわりの皮膚が炎症を起こし、切れ痔を悪化させることもあるので、日々お腹の調子を整え、便秘だけでなく下痢も予防・改善したいですね。

お腹の冷えによって下痢が悪化しやすいため、できるだけ温かい飲み物をとり、腹巻きやカイロでお腹を温めるなど工夫しましょう。また、便秘のときとは反対に、胃腸への負担を軽くするため食物繊維の摂取は控えることが大切です。

肛門まわりの血行を良くする

1ヶ月健診で医師から許可が下りれば、お風呂に入れるようになります。入浴するときには、湯船にゆっくりと浸かっておしりを温めることも、痔の予防・改善に効果的ですよ。

また、長時間座りっぱなしの姿勢を続けていると、肛門まわりの血管が圧迫されてしまい、痔の原因になります。授乳などで座るときはドーナツ型のクッションを使ったり、30分に1回は立ち上がって適度に体を動かしたりするようにしましょう。

産後の痔に市販薬を使ってもいい?

痔の痛みがひどくて早く治したいときは、市販薬を使いたくなることもあるかもしれません。ただし、授乳中の場合は、自己判断で使うことはおすすめできません。

市販の痔の治療薬のなかには、「ボラギノール」(天藤製薬)のように授乳中でも使用できるとされているものもあれば、「プリザエース」(大正製薬)のようにかかりつけの産婦人科医や薬剤師に相談するよう注意書きされている商品もあります(※1,2)。

授乳中に痔の治療薬を使いたい場合は、まずはかかりつけの産婦人科医や薬剤師に相談するようにしてくださいね。

もしくは、授乳中であることを産婦人科や肛門科で伝えたうえで、赤ちゃんになるべく悪影響が及ばない薬を処方してもらう方が安心です。

産後の痔が治らないときは手術で治せる?

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産後、日常生活に支障をきたすほど痔の症状がひどく、生活習慣の改善や薬の使用によっても改善されない場合は、最終手段として肛門科などで手術を勧められることもあります。

多くの場合、手術をすれば痔を治すことができますが、手術のための麻酔薬や術後の痛み止めの薬が母乳に移行してしまうため、手術が終わったあと3~4日間は授乳をやめなければなりません。

授乳中の人は、手術前に母乳を冷凍しておいたり、ミルクを用意したりと、それなりに準備が必要になります。

痔の手術を受けるために授乳を中断するか、それとも卒乳してから手術を受けるかなど、赤ちゃんの様子も見ながら医師と相談して決めるようにしましょう。

痔のストレスをなくして産後生活を楽しもう

産後は、育児や家事などで大忙しの毎日が続くため、痔の痛みや違和感があってもすぐに対処しづらいかもしれません。病院へ行く時間がなかなか取れないときは、便秘を解消するなど生活習慣の改善を心がけましょう。

それでも良くならないときは、かかりつけの産婦人科か肛門科を受診してくださいね。ストレスを解消して楽しく子育てするためにも、一人で我慢せず医師に相談してみましょう。

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