「産褥体操(さんじょくたいそう)」をご存知ですか?産後6〜8週目頃までの、体が妊娠前の状態に戻っていく時期を「産褥期」といい、その時期に行う運動のことです。産褥体操については耳にしたことがある人でも、知らないことも多いと思います。そこで今回は、産褥体操のやり方や目的、効果、いつから始めるのがいいのかご説明します。
産褥体操とは?

「産褥体操」とは、産後の安静にしていなければならない産褥期でも始められる体操のことを指します。
体操と聞くと激しく体を動かす運動を考えがちですが、横になった状態でもできる、とても簡単な運動です。
負荷の小さい動きから始めて、徐々に負荷を大きくして体を慣らすので、妊娠中に運動不足になってしまったママでも気軽に始められますよ。
産褥体操の目的は?どんな効果があるの?

産褥体操は、産後の体の回復を早めるのが目的です。
妊娠・出産でママの体は大きく変化していて、疲労も蓄積しています。
産後6〜8週目くらいまでの産褥期に体は少しずつ回復していきますが、そこで産褥体操をすることで回復が早まる効果が期待できるのです。
産後は、普段はつながっている左右の腹筋(腹直筋)が伸びて開いたり、尿道や腟を引き締める骨盤底筋がゆるんだりしています。
こうした筋肉の変化は何をしなくても自然に回復しますが、産褥体操をすると筋肉が引き締まり、血行も良くなります。
産褥体操で血行が良くなると、母乳の分泌にもよい影響を与えます。悪露の排泄を促して子宮の収縮を早めたり、むくみの改善、骨盤や腟の回復を早めるなどの効果も期待できます。
産褥体操は体調の改善を目的としているので、劇的な効果は期待できません。
ただ、その後の骨盤矯正や産後ダイエットにもつながる土台作りのようなものなので、焦らずにじっくり取り組んでくださいね。
産褥体操は産後いつから始めていいの?

産褥体操は体への負担が小さいので、出産当日から始められます。分娩後から体の回復は始まるので、むしろ早く始めるのがおすすめです。
産褥期は、早い人では産後6週目まで、遅い人でも産後8週目までといわれます。できるだけ早く始めて、産後6〜8週目までは継続することをおすすめします。
ただし帝王切開で出産した人は、いつから産褥体操を始めていいか医師に確認するようにしましょう。
また、産後すぐに始められるとはいっても、体調が優れないときは無理をしてはいけません。そんなときはゆっくり体を休めて、体調が回復してから始めてくださいね。
産褥体操のやり方は?時期によって方法が違う?

産褥体操のやり方は様々ですが、今回は産後1~5日頃におすすめの産褥体操のやり方をご紹介します。
産褥体操は体に掛かる負担が小さいので、できるものからチャレンジしてみてください。無理はせず、様子を見ながら徐々に回数を増やしていきましょう。
産後1日目(出産した次の日)の産褥体操
産後1日目は体を動かさず、寝ながら、または座りながらできる体操から始めましょう。
1. 胸式呼吸
- 仰向けに寝て、膝を立てる。両手はみぞおちの上に置く
- 手が持ち上がるくらい大きく鼻から息を吸い込む。少し息を止めてからフーッと吐き出す
- これを2~3回程度繰り返す。慣れたら5~6回行う
2. 腹式呼吸
- 胸式呼吸と同じように仰向けに寝て、膝を立てる。両手はお腹の上に置く
- お腹を空気でふくらませるように、できるだけ大きく息を吸い込む。少し息を止めてからフーッと吐き出す
- これを2~3回繰り返す。慣れたら5~6回行う
3. 足の運動
- 仰向けで寝るか座った体勢で、膝を真っ直ぐ伸ばす
- 足首だけを前後にパタパタと動かす
- 同じ体勢のまま、足首を左右にパタパタと開く
- それぞれ5回程度繰り返す
※膝を曲げないのがポイント。ふくらはぎを意識すると膝が曲がらずに力を入れやすい。
4. 下半身の引き締め運動
- 仰向けに寝るか座った体勢で、膝を立て、膝同士をくっつける
- お尻の筋肉、肛門、腟、尿道口の順にグッと力を入れて引き締める。全体に力を入れたまま1~2秒キープしてから力を抜く
- 1日に10回程度取り組む
5. 首の運動
- 座ったままか立った体勢で、首を前後・左右に倒す
- そのままの体勢で、首をひねって左右を向く
- 朝昼夕に2~3セットずつ繰り返す
※立ちながらやるときは倒れないように、壁や机などに手を添える。フラフラしたときは無理せずに中止する。
産後2日目の産褥体操
産後1日目の産褥体操ができたら、少し動きのある体操を加えてみましょう。
6. お腹の運動
- 両足を伸ばして仰向けに寝る。両手はお腹の上に置く
- 手を見るように頭だけを起こす。1~2秒ほど頭を起こした状態でキープし、その後ゆっくり下ろす
- 息を止めないように注意しながら5〜10回繰り返す
7. 肩の運動
- 座ったままか立った体勢で、脇を締める
- 肩を内回り・外回りにゆっくり回す
- それぞれ朝昼夕に、10回ずつ繰り返す
産後3日目
体を動かすことに慣れてきたら、さらに新しい動きを取り入れてみましょう。
8. 手首の運動
- 手首の力を抜いた状態で、10回程度ブラブラと振る
- 指先をグー・パーと開いたり閉じたりを10回ずつ繰り返す
- これを1日に数回繰り返す
9. 背筋の運動
- 背筋と足を伸ばした状態で座る
- 上半身を右側にひねる。ひねった状態のままで2〜3秒キープする
- 反対も同じようにして、それぞれ3〜5回ほど繰り返す
産後4日目の産褥体操
産後4日目には、さらに動きのある体操が加わります。これまでの体操での様子を振り返って、無理のない範囲でトライしてみてください。
10. 首筋の運動
- 仰向けに寝る。お尻の穴をぎゅっと締めた状態で両手を前に出し、頭だけを起こす
- 手を出したまま、ゆっくり頭を下げる
- 朝夕5回ずつ繰り返す
11. 骨盤の運動
- 仰向けに寝て、膝を立てて合わせる。足の裏はぴったり床につける
- 手の甲を上にして、両手は両脇に置く
- 深呼吸しながら、膝だけをゆっくり左右に交互に倒す
- 朝夕5回ずつ繰り返す
12. 足の運動
- 仰向けに寝て、膝を立てて合わせる。足の裏はぴったり床につける
- 膝を曲げたまま片足を上げ、太ももが床と直角になった状態でキープし、深呼吸を1回する
- 上げている足の膝をまっすぐ上に伸ばし、足全体が床と直角になった状態でキープし、深呼吸を1回する
- 足をゆっくり下ろし、反対の足も同じようにする
- それぞれ朝夕5回ずつ繰り返す
産後5日目の産褥体操
産後5日目には次のような動きにも挑戦してみましょう。
13. 上半身の運動
- 仰向けに寝て足を腰幅に開き、両膝を立てる。腕は手の甲を上にして体の脇に置く
- お尻の穴をぎゅっと締める。息を吐きながらお尻、腰、背中の順番で持ち上げる
- 膝から背中にかけて、まっすぐ斜めになった状態で息を吸い、1〜2秒止める
- 息を吐きながらゆっくり腰や背中を下ろす
- 5〜10回ほど繰り返す
産褥体操でも体調に注意しながら取り組もう

産褥体操は負荷が小さいといっても、体調がすぐれないときには無理をしないでください。
産褥体操を始めるときは、医師や看護師に相談すると安心ですね。
産後の回復スピードには個人差があるので、くれぐれも無理のないように自分の体調に合わせながら回数や強さを少しずつ変えていきましょう。