赤ちゃんが生まれて、さあ母乳育児!というときに、母乳がビュービューと噴水のように出て、赤ちゃんがむせてしまうことがあります。出すぎる母乳で溺れている赤ちゃんを目の前にすると、心が痛みますよね。そこで今回は、母乳が噴水のように出すぎている状態は何が原因なのか、どう対処すればいいのかなどをご紹介します。
母乳が噴水のように出すぎるのはなぜ?
母乳が噴水のように出すぎる状態は、母乳分泌過多症の可能性があります。母乳分泌過多症とは、ママの体で作られる母乳の量が、赤ちゃんが飲む量を上回っている状態です。
母乳が出すぎる原因には、次のようなものが考えられます。
授乳の方法が不適切
母乳がどのくらい分泌されるかは、もともと赤ちゃんが飲む量に合わせて体内でコントロールされています(※1)。
しかし、母乳の量を増やそうとするあまり、胸が張ってくるまで授乳をしなかったり、一回の授乳で短時間で左右の乳房を切り替えたり、授乳後も搾乳するなどを習慣化してしまうと、体が母乳を作る量を間違えてしまいます。
すると、母乳が作られる量が増え、噴水のように出すぎてしまうことがあります。
オキシトシンへの反応がいい
赤ちゃんがママの乳首を吸うと、乳腺が刺激され、脳からオキシトシンというホルモンが分泌されます(※2)。
オキシトシンは、胸の筋肉を収縮させて母乳を出す作用を持っています。オキシトシンへの反応は個人差があり、強いと母乳が出すぎることがあります。
プロラクチン分泌異常症
赤ちゃんがママの乳首を吸うことでオキシトシンと同時に、プロラクチンというホルモンも分泌されます(※2)。
プロラクチンは乳腺の細胞に働きかけ、母乳を作る役割をします。このプロラクチンが何らかの理由で過剰に分泌されることで、乳腺で作られる母乳の量が多くなり、母乳が出すぎる原因になります。
下垂体腺腫
下垂体腺腫という病気の際にも、母乳が出すぎる場合があります。下垂体とは脳にあるホルモンを分泌する部分で、オキシトシンやプロラクチンといったホルモンもここから出されます(※3)。
この下垂体に腫瘍ができることで、それらのホルモンが過剰に分泌され、母乳が出すぎる場合があります。
母乳が噴水のように出すぎるときの対処法は?
母乳が噴水のように出すぎると、赤ちゃんがむせてしまうことがあります。そんなときに試してほしい対処法は下記の3つです。
片方の乳房がスッキリするまで同じ方から授乳する
授乳の際、左右をコロコロ入れ替えず、片方がスッキリするまで同じ乳房から飲ませてみましょう。
もし1回の授乳でスッキリしなかったり、入れ替えた側の乳房の飲みが不十分でまだ張っている場合、赤ちゃんが欲しがった場合、その後3〜4時間の間に行う授乳はその乳房から与えます。このようにすることで、母乳が作られすぎるのを防ぎます。
ただし、この方法は乳腺炎などのトラブルを起こすこともあるので、産婦人科医や助産師など、専門家に相談してから行うことをおすすめします。
乳房を冷やす
乳房が温まり、血行がいい状態だと、母乳の分泌量は多くなります。
そのため、保冷剤などをタオルにくるみ、乳房の血管を冷やすことで、母乳が出すぎる状態を抑える効果が期待できます(※2)。
母乳が出すぎると、病気になりやすい?
母乳が噴水のように出過ぎる場合、乳房に母乳が残りやすく、うっ滞性乳腺炎になる可能性があります。
うっ滞性乳腺炎とは、母乳がたくさん乳房に溜まることで乳房がパンパンになって、痛くなる、熱を持つ、硬くなる、赤くなるなどの症状が出ることです(※4)。38.5度以上の発熱や悪寒、インフルエンザのような体の痛みなどの全身症状が伴う場合もあります(※5)。
うっ滞性乳腺炎の場合、こまめな授乳や乳房マッサージで母乳が溜まるのを防げば、回復することが多いですが、悪化したり長引く場合は手術が必要になる場合もあります。
また、うっ滞性乳腺炎を発症しているときに細菌に感染すると、化膿性乳腺炎に発展する場合があります。化膿性乳腺炎とは、乳頭から細菌が入って感染する病気で、悪化すると乳腺に腫瘍ができることもあります。
化膿性乳腺炎を発症した場合、抗菌薬の投与や乳房マッサージ、場合によっては切開して膿を取り除く治療などが必要になることもあります。
母乳が噴水のように出すぎるというママは、乳房がパンパンになるまで母乳が溜まらないよう、こまめに少しずつ搾乳し、母乳パッドはこまめに取り換えるなどの予防を行いましょう。
母乳が噴水のように出すぎるママは、ハーブティーなどもおすすめ
今回紹介した対処法を試してもまだ噴水のように母乳が出てしまうような場合は、ハーブティーを試してみるのもおすすめです。
セージなどはヨーロッパでは卒乳に使われてきたハーブとして知られており、ハーブティーの専門店などでは、セージを中心とした「卒乳ブレンド」を取り扱っているところもあります。
母乳の悩みはつきないものですが、うまく対処しながら、母乳育児を少しでも快適にできるといいですね。