生まれてきた赤ちゃんが低出生体重児であったり、呼吸障害を持っていたりしたときに入院するのが「NICU(新生児集中治療室)」です。今回は、赤ちゃんがNICUに入院することになっても慌てないために、NICUとはどのようなもので、どのような治療を受けることになるのかについてご説明します。
NICU(エヌアイシーユー:新生児集中治療室)とは?
NICU(エヌアイシーユー)は新生児集中治療室ともいい、集中治療が必要な出産後間もない新生児を専門に治療するための施設のことです。
NICUはベッド一つに対して7㎡以上の広さが確保されており、施設内は感染源となるウイルスや細菌をシャットアウトする設備を備えています。
また、自家発電装置があり、電解質定量検査、血液ガス分析などの必要な検査が常時行えるような設備も整っています(※1)。
NICUへ入院する赤ちゃんはどんな状態?
NICUへの入院が必要となるのは、低体重や先天的な重症疾患がある新生児です。その具体例として、ここでは国立成育医療研究センターがNICUで管理するのが望ましいとして挙げている新生児の例を紹介します(※2)。
● 呼吸障害がある
● 心不全症状がある
● 出生体重が1,800g未満(特に1,500g未満)
● 在胎34週以下で生まれた
● 肺炎、敗血症、髄膜炎などの重症感染症が疑われる
● 新生児仮死
● 痙攣している
● 黄疸などで交換輸血を要する
● 出血傾向がある
● 外科的手術を要する
● 先天性心疾患が疑われる
● 重度または多発性の奇形がある
● 嘔吐する
● ミルクの飲みが悪い
● 元気がない
● 泣きが弱い
● わずかな刺激で異常な動きを見せる
NICUではどんな治療が行われるの?
NICUには呼吸心拍監視装置や人工呼吸器、保育器、血液学分析装置、超音波診断装置などの機器が用意されており、これらを使って次のような治療を行います(※3)。
保温する
新生児は自分で熱を作り出すことができません。特にNICUに入るような早産児やハイリスクな新生児は、その機能が未熟なため、それが引き金となって様々な障害が起きる可能性があります。NICUではそれを防ぐため、適切な温度や湿度の管理を行います。
栄養を与える
新生児期は発育が急速で、この時期に適切な栄養を十分に与えないと体格や知能に影響が出てしまいます。そこで、栄養不足などに陥らないように点滴などによって栄養を与えたり、消化促進のため排便のコントロールなどを行います。
感染を防ぐ
新生児は免疫が未熟なため細菌やウイルスに感染しやすく、悪化もしやすい状態です。特に早産児や胎内で十分に発育できなかった赤ちゃんは注意が必要で、そのため、様々な方法で感染予防を行います。
ディベロップメンタルケア
早産児は脳の発達が急速で感受性が高く、外界からの影響をもっとも受けやすいため、過剰なストレスから保護し、ケアを行うことが必要です。環境を子宮内に近づけるため、室内を薄暗く静かな状態に保ち、赤ちゃんの姿勢にも配慮します。
家族の心のケア
NICUでの治療は、新生児だけではなく、その家族に対しても行われます。
小さく生まれてきた赤ちゃんや、病気を持って生まれてきた赤ちゃんに、ママやパパは戸惑いを覚えることもあるかもしれません。そのため、ママやパパが赤ちゃんを家族の一員として迎え、絆を深めていけるように支援します。
また、出生後に手術が行われたり、赤ちゃんの病状が悪化することもあるため、ママやパパの気持ちに寄り添い、不安の解消に努めます。
NICUを退院できるのはいつ?
NICUを退院できる時期は赤ちゃんの状態によって異なります。
例えば、在胎週数が28週以上、37週未満で生まれた赤ちゃんは本来の出産予定日まで、22〜23週ごろに生まれた赤ちゃんは4〜5ヶ月ほど入院することになります。1,000g未満の超低出生体重児は約3ヶ月間入院が必要になります。
なお、NICUに入院した赤ちゃんの2〜3%は、半年以上の入院を余儀なくされます。そのうちの約半数は合併症をもつ超低出生体重児ですが、成長に伴って病状が軽くなるため、多くは入院から1年以内に退院できます。
しかし、残りの半数の赤ちゃんは先天的な異常を持っていたり、重症心身障害を持っていたりするため、病気自体が完治することは難しく、病状が落ち着くまで1年以上の長期入院となることもあります(※3)。
NICUの費用は全額自己負担?
NICUに入院すると、新生児特定集中治療室管理料という名の入院費が発生しますが、健康保険が適用されるため自己負担は一部で済みます(※1,4)。
また、国や各自治体が次のような助成制度を用意しており、対象条件を満たせば所得などに応じて入院費の一部を助成してもらうこともできます(※5)。
● 乳幼児医療費助成
● 養育医療
● 育成医療
● 小児慢性疾患医療費助成
詳しく知りたい場合は、各自治体に問い合わせてみてくださいね。
NICUとGCUの違いは?何が基準になるの?
NICUと似ている施設として、「GCU(ジーシーユー)」というものがあります。
GCUとは、移行期(回復期)治療室ともいい、急性期治療が終了、または集中治療を必要としなくなった新生児を治療するための施設です。
NICUの後方病床の位置付けにありますが、NICUとは違い、面積や病床数に対しての基準は特になく、赤ちゃんの病状の安定に伴い、退院に向けた支援が行われます。
一方、GCUの設備はNICUと同じで、自家発電装置を備え、電解質定量検査、血液ガス分析などを常時行えるようになっています。治療機器に関しては、NICUと同じものが独自に備え付けられているか、NICUと共有という形になっています(※1)。
NICUについて知っておこう
生まれたばかりの赤ちゃんがNICUのある病院へ転院となったり、集中治療が行われるようになると、戸惑うことが多いかもしれません。
しかし、NICUに入院する赤ちゃんの90%以上は生後半年以内で退院しており、入院中も医師や看護師、助産師、検査技師、医療ソーシャルワーカーなどによるチーム医療が昼夜を問わず行われています(※3)。
ママやパパにとって心配はたくさんあると思いますが、NICUのスタッフと相談されることが安心へとつながるでしょう。また、自治体や医療機関ごとに家族を支援してくれる制度や仕組みもあります。NICUの医療や制度を活用して、赤ちゃんの成長を見守ってあげましょう。
NICUは新生児に特化した高度で専門的な治療を行う施設です。そのため、すべての病院にあるわけではなく、地域ごとに拠点となる病院に併設されているものです。出産前の妊婦さんは、万が一に備えて、近くのNICUがある病院を把握しておくようにしておくといいかもしれませんね。