妊婦の逆流性食道炎の症状は?妊娠初期のつわりと違う?臨月も出る?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

胃酸が胃から逆流して食道に炎症を起こす病気を「逆流性食道炎(胃食道逆流症)」といいます。高齢者や肥満の人が発症しやすい病気ですが、実は妊婦さんも逆流性食道炎になりやすいのをご存知でしょうか。

今回は、妊婦の逆流性食道炎について、妊娠初期のつわりとの違いや臨月に起こりやすい理由などもご説明します。

逆流性食道炎が起こる仕組みは?

逆流性食道炎

胃液や消化中の食べ物が食道に逆流し、食道に炎症を起こすのが「逆流性食道炎」です(※1)。

普段は胃液で食道が傷つくのを防ぐため、食道と胃をつなぐ「下部食道括約筋」という筋肉が食道を締めて、胃の内容物が逆流しないよう機能しています。

しかし、暴飲暴食や高脂肪食、妊娠などにより下部食道括約筋がゆるんでしまうと、胃液の逆流が起こりやすくなります。

胃の内容物の逆流によって逆流性食道炎を起こすと、食道の粘膜がただれたり潰瘍ができたりします。

妊婦は逆流性食道炎になりやすい?臨月にも起こる?

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妊娠中の逆流性食道炎には、主に「ホルモンバランスの変化」と「子宮の大きさの変化」という2つの要因が影響していると考えられています(※2)。

ホルモンバランスの変化

妊婦さんの体内では、妊娠を維持するために「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という女性ホルモンの分泌量が増えます。

プロゲステロンの働きで、胃腸の筋肉(平滑筋)がゆるみ、食べたものを直腸へ運ぶために消化管の筋肉が収縮する「蠕動(ぜんどう)運動」が低下します。

そのため、食べたものが消化されにくくなり、逆流してしまうことがあります。

子宮の大きさの変化

ホルモンの作用で胃腸の働きが弱くなっているうえに、胎児が成長して子宮が大きくなってくると、胃は下から突き上げられるように圧迫されます。

その結果、食道と胃をつなぐ下部食道括約筋の圧力が下がり、胃の内容物や胃酸が食道の方へ逆流しやすくなってしまうのです。

このように、妊婦さんの逆流性食道炎は妊娠によるホルモンバランスや子宮の大きさの変化が引き金となるため、お腹が大きくなる妊娠中期以降、特に臨月に症状がひどくなる人が多いようです。

妊婦の逆流性食道炎の症状は?妊娠初期のつわりと違う?

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逆流性食道炎になると、胸やけ(みぞおちの上が焼けるようにジリジリする、しみる)や酸っぱい液体が上がってくるなどの症状が現れます(※1)。

症状が強いと食べ物を食べられなくなったり、不快感のせいで眠れなくなったりする人もいます。また、逆流した胃液で喉にも炎症が起こり、声が枯れたり、咳が出やすくなったりすることもあります。

先述のとおり、逆流性食道炎は妊娠中期以降に起こることが多いですが、人によっては妊娠初期から現れます。妊娠初期にはつわりによる吐き気や胃のむかつき、げっぷなどがあるので見分けがつきにくいかもしれません。

個人差が大きいですが、妊娠12〜16週頃につわりが治まってくる人が多いので、それ以降も吐き気や胸焼けが続いているときは逆流性食道炎の可能性があります。

妊娠中の逆流性食道炎は病院に行くべき?

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妊娠中に胸焼けや吐き気、胃のムカつきなどがひどく、日常生活に支障が出るようであれば、かかりつけの産婦人科で相談しましょう。

逆流性食道炎が悪化すると、食道が狭くなり、食べ物が喉を通りにくくなったり、炎症を起こした部分から出血して吐血や貧血を起こしたりする恐れもあります(※1)。

妊娠初期につわり、妊娠中期以降に逆流性食道炎と続いてしまうと、なかなか思うように食事が摂れないかもしれません。脱水症状に陥らないように、氷を舐めるなどして水分をこまめに摂るよう心がけましょう。

妊婦は逆流性食道炎の薬を飲んでもいい?

妊婦 薬
逆流性食道炎が原因で、妊娠中にずっと吐き気や不快感があるのはつらいですよね。少しでも症状を軽くしたいところですが、胎児に影響を与える可能性もあるため、自己判断で胃薬などを服用することはおすすめできません。

市販薬のなかにも、妊娠中でも服用できるとされるものはいくつかありますが、飲む前に必ず医師や薬剤師に相談してくださいね。

妊娠中の逆流性食道炎を予防するには?

妊婦 食事

妊娠中はどうしても逆流性食道炎になりやすい状態ですが、普段の過ごし方として以下のようなポイントを意識すると、症状の予防・緩和につながりますよ(※1)。

生活面で気をつけること

● 腹部を締め付けない
● 重いものを持たない
● 前かがみ姿勢は避ける
● 右側を下にして寝ない

腹圧が上がると胃を圧迫するため、胃酸の逆流が起こりやすくなります。既に気をつけているとは思いますが、お腹に力が入るような行動や、腹部を締め付けるような格好は避けるようにしてくださいね。

食事面で気をつけること

● 食べすぎない
● 勢いよく食べない
● 食後すぐに横にならない
● 脂肪分が多い食事は避ける

チョコレートやコーヒー、柑橘類、炭酸飲料などは胃酸を多く分泌させたり、胃と食道のつなぎ目を緩ませたりしやすいです。食べたり飲んだりしたあとに、胸焼けなどの症状が起こる場合は避けるようにしましょう。

妊婦の逆流性食道炎につながる生活習慣を見直そう

妊娠中は、ホルモンバランスが変わったり子宮が大きくなったりすることが原因で、逆流性食道炎が起こりやすくなります。

できるだけ胃に負担をかけないよう意識して、食事内容や姿勢など生活習慣を見直すことで、少しでも症状を改善できるといいですね。

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