胎児発育不全とは?胎児の成長が遅い原因は?障害が残る?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

妊娠したら赤ちゃんは自然に大きくなっていくものだと考えている方がほとんどだと思います。しかし、数パーセントの確率で「胎児発育不全」という異常が発生し、胎児の成長が滞ってしまうこともあります。今回は、胎児発育不全の原因や症状、治療法のほか、障害の可能性などをご説明します。

胎児発育不全とは?

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「胎児発育不全(FGR)」とは、子宮内の赤ちゃんの発育が遅れている、あるいは止まってしまい、妊娠週数の基準値と比べて小さい状態をいいます。

胎児発育不全は、全妊娠の約8~10%を占め、高齢妊娠などのハイリスク妊娠だと発生する確率が高まります(※1)。

以前は「子宮内胎児発育遅延(IUGR)」と呼ばれていましたが、現在では「胎児発育不全」が正式名称として使われています。

胎児発育不全の診断方法は?

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超音波検査によって胎児の推定体重を算出し、妊娠週数ごとの「胎児体重基準値」と比較して小さい場合に、胎児発育不全が疑われます。

ただし、何らかの発育異常があって赤ちゃんが小さいのか、それとも体は小さいけれど元気なのか、を確認する必要があるため、推定体重だけでなく、羊水の量や胎児の腹囲、胎盤・臍帯の異常なども診たうえで、総合的に診断されます(※1,2)。

基準よりも赤ちゃんの体重が少なかったとしても、超音波検査や染色体検査で特に異常が見つからない場合、「小さめで健康な胎児(normal small)」と判断されます。

胎児発育不全の原因は?

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胎児発育不全を引き起こす原因は、大きく以下の3つに分類できます(※1,2)。ただし、これらの要因が複数関係していることもあります。

1. 胎児側の原因

胎児の体の細胞数が増え、臓器が形成される妊娠初期に、胎児側の原因で発育不全が起こることがあります。主な理由は、染色体の異常や先天的形態異常、子宮内感染などで、胎児発育不全の10~30%を占めます。

2. 胎盤の障害

胎盤になんらかの障害があると、赤ちゃんに栄養をうまく供給できなくなります。胎盤梗塞や前置胎盤、臍帯付着異常といったものが引き金になります。妊娠中期以降で発症します。

3. 母体側の原因

妊婦さん自身が妊娠高血圧症候群や多胎妊娠、その他の合併症になっていたり、喫煙をしたりしていると、赤ちゃんへの栄養供給が妨げられる場合があります。このケースも、妊娠中期以降に発症します。

胎児発育不全の症状や特徴は?

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胎児発育不全が起きていたとしても、基本的に自覚症状を感じることはありません。ほとんどの場合、妊婦健診を受けた際に可能性が指摘されることになります。

赤ちゃんに現れる症状は、胎児発育不全が引き起こされる原因によって異なります。

胎児側の原因

妊娠初期に、胎児自身に発育を妨げる原因があって発症した場合は、体幹や手足の発育が同じくらいずつ抑制されるため、バランスの取れた体型にはなりますが、全体的に小さくなります。

重症のケースだと、胎内にいる間や生まれてからすぐに赤ちゃんが亡くなってしまう恐れもあります。

胎盤・母体側の原因

妊娠中期以降に、胎盤や母体が原因で胎児発育不全になっている場合、死亡リスクは比較的低くなります。しかし、部分的に発育が抑制されるため、頭は正常な大きさで体だけが痩せている、といった特徴が現れます。

胎児発育不全の治療法は?

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胎児側に原因がある場合は、明確な治療法がないのが現状です。ただし、胎盤や母体に原因がある場合には、その原因を取り除くことで胎児発育不全の改善に期待ができます。

たとえば、妊娠高血圧症候群などの合併症があれば、その治療を優先します。また、喫煙している場合にはただちに禁煙します。

場合によっては、胎児発育不全の原因を調べたり、分娩のタイミングを見極めるために入院となることもあります。何も症状がないとしても、お腹の赤ちゃんの状態が急変することもあるため、慎重な経過観察が必要です。

母体が栄養不良であると、赤ちゃんも十分な栄養を得られずに発育不全となることもあるので、妊娠中は必要な栄養をしっかり摂るようにしましょう。

胎児発育不全だと障害が残る?

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胎児発育不全で生まれた赤ちゃんの予後は、その原因と重症度にもよりますが、全体的に見ると正常に発育した子に比べると、神経障害などが残る確率が2倍だといわれています(※2)。

一般的に、胎児発育不全が軽症で赤ちゃんの状態が悪くなければ、普通分娩で出産することも可能です。生まれたあとの状態は良好で、多くは発育も正常に近づいていきます。

ただし、重症の場合には、誘発分娩が必要になったり、陣痛のストレスに赤ちゃんが耐えられないために帝王切開が選択されたりすることもあります。

早産になると、未熟児のリスクが加わるため、予後が悪い傾向にあります。

また、染色体異常など胎児側の原因で発育不全が起こると、様々な臓器の奇形を合併していることもあり、臓器障害が見られる恐れがあります。

胎児発育不全をできるだけ予防する妊婦生活を

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胎児や胎盤に原因があることを除いて、胎児発育不全は妊婦さんの生活改善で予防することもできます。赤ちゃんにきちんと栄養を届けるために、喫煙や冷え、睡眠不足などで血行を悪くしないように気をつけましょう。

高血圧や糖尿病、膠原病など持病のある人は、妊娠前に病状を落ち着かせておくことも大切です。

また、妊娠中に体型が崩れるのを嫌ってダイエットで食事量を制限してしまうと、胎児が栄養不足に陥ってしまうことも。お腹の赤ちゃんの成長のためにも、しっかり栄養をとり、健康的なマタニティライフを過ごすようにしてくださいね。

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