赤ちゃんの成長は個人差が大きいものですが、少しでも周りから成長が遅れたり、ずれていたりすると、もしかしたら何かの障害や病気なのかもと不安になることもありますよね。なかでも「自閉症」の子供は特徴的な行動をとることから、他の子供の行動と見比べて、「うちの子はもしかして自閉症…?」と心配するママも多いのではないでしょうか?今回は、自閉症の赤ちゃんの特徴や症状、診断法や対応法についてご紹介します。
自閉症とは?発達障害の一つなの?

自閉症は、先天性の発達障害です。発達障害にも様々な症状があり、自閉症は発達障害の大きなくくりの一つとされます。
自閉症の人は、遺伝的な要素を含めて生まれつき脳に障害があり、目や耳から入ってきた情報を整理・認知して体を動かす、言語を理解することが苦手です。
自閉症という名前から、他人に対して心を閉ざしてしまうのではないかというイメージをもたれがちですが、いわゆる心の病気ではありません。
自閉症と同様の特徴を持つものの、言葉や知的発達の遅れがほぼないアスペルガー症候群という発達障害もあります。現在は、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害をあわせて「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれています(※1)。
自閉症の特徴は?

ひとくちに自閉症といっても症状は様々です。自閉症は症状が強い子もいれば弱い子もいて、健常児との境目はあいまいだといわれます。自閉症のような行動があくまでもその子の個性だとも考えられるので、判断が難しいのです。
ただ、赤ちゃんに合わせた成長を促してあげるためにも、医学的には自閉症を診断する基準が設けられています。以下の3つの特徴が、3歳までの間に認められた場合に自閉症と診断されます。
社会性の欠如
自閉症の赤ちゃんは、年齢が上がるにつれて自分と相手との関係を正しく理解できず、適切な行動をとることが難しくなります。
目線があわないなど周囲への関心が薄く、他の子供と一緒に遊べないことが多くあります。逆に人を凝視したり、人見知りをせず知らない人に対しても平気で話しかけたりと、極端で一方的な関わり方をする子もいます。
コミュニケーション能力の欠如
自閉症の赤ちゃんは、言葉の意味を上手く理解できない特徴があります。言葉の遅れ、オウム返し、意味のない言葉の繰り返しなどがよくみられ、全く言葉が出ない場合もあります。また、自分が話したいことしか話さず、会話がつながらないことがあります。
興味や行動の偏り
自閉症の赤ちゃんは、自分の好きなことや興味のあることにだけ熱中する特徴があります。また、こだわりがとても強く、初めてのことや、思い通りにいかないことがあると、パニック状態に陥りやすい傾向があります。
自閉症の赤ちゃんの症状は?どんな行動をとるの?

自閉症の症状は、特徴的な行動に現れます。自閉症の赤ちゃんには、次のような行動がよく見られます。
1. 多動
じっとできず目的もなく走り回ったりして落ち着きがなく、目が離せないことがあります。多動だけが目立つ場合、注意欠陥・多動性障害(ADHD)の可能性もあります。
2. 言葉の遅れ
自閉症の赤ちゃんは、言葉の遅れが目立ちます。一度覚えた言葉が出なくなったり、ママやパパの指示に反応を示さなかったりすることがあります。単語を言わないことも多いのが特徴です。
3. 強いこだわり
自閉症の赤ちゃんは、いつも同じ状態であることに強く固執します。食事では決まった物しか食べない、おもちゃをきれいに並べるなど、位置、行動、習慣へのこだわりが強く、同じことを何度も繰り返すことがあります。
4. 意志の疎通ができない
自閉症の赤ちゃんは、自分の意思を伝えることが苦手なため、何かを要求するときは、相手の手をつかんで引っ張っていくような行動(クレーン現象)をとることがよくあります。また、指さしをしないのも自閉症の赤ちゃんの特徴です。
5. 周囲に関心を持たない
自閉症の赤ちゃんは周囲に関心がないため、目が合わなかったり、名前を呼ばれても振り向かなかったりします。また、後追いをしない、一人でいても泣かない、他の子供と遊ぶことが少ないといった傾向があります。
6. 感覚異常
聴覚、視覚、触覚、臭覚などの感覚が正しく脳で処理されないため、様々な感覚が極度に過敏であることが多くなります。逆に鈍感で痛みを感じなかったりすることもあります。
7. 睡眠異常
成長しても睡眠のリズムがなかなかつかめず、2時間おきに目を覚ますなど、睡眠時間が極端に少ない状態が続きます。
赤ちゃんの頃から自閉症の兆候はあるの?新生児でも分かる?

自閉症の症状は、一般的に1歳を過ぎた頃から現れ始めるとされていて(※1)、新生児に自閉症の症状のようなものが見られても、自閉症かどうかは判断できません。
また、自閉症の赤ちゃんでも、他の赤ちゃんと変わらないことも多く、逆に1歳半頃までは他の子と同じように成長していたのに2歳になった頃から発達が停滞し始めるといったこともあります。そのため、自閉症は3歳くらいまで判断が難しいとされています。
ただし、赤ちゃんの成長の過程で以下のような症状が見られたり、気になる行動がある場合は一度小児科か乳幼児健診の際に相談することをおすすめします。
生後3ヶ月頃
● ママと目を合わせようとしない
● 抱っこを嫌がる
● 笑わない
赤ちゃんは本来、ママに対して絶対的な安心感があるので、ママの目を見つめたり抱っこしてもらって泣き止んだりするのが一般的です。
しかし自閉症の赤ちゃんは、おっぱいをあげているときも視線が合わず、抱っこを嫌がって泣くという傾向があります。
生後6ヶ月前後
● 落ち着きがない
● 抱っこされていても常に周囲を見回している
● ママに抱っこを求めない
● ママの後追いをすることが少ない
この時期は、一般的に人見知りを始めてママから離れることを嫌がりますが、自閉症と考えられる赤ちゃんはほとんど人見知りしない傾向があります。
1歳頃
● 指さしをしない
● クレーン現象を見せる
● 呼びかけに応じない
● ママやパパの真似をしない
一般的には、指さしでママに自分の見ている物を示したり欲しい物を要求したりしますが、自閉症の赤ちゃんはママの手を自分の手の代わりに使う「クレーン現象」を見せる傾向があります。ただし、クレーン現象は、自閉症ではない赤ちゃんもすることがあります。
また、言葉の理解、発語が遅いという特徴がみられます。周囲への関心が薄いため、呼びかけても応じない、親や人の真似をしないという症状が目立ちます。
2歳頃
● 言葉の遅れが目立つ
● 偏食が目立つ
● 特定のものへのこだわりが強い
2歳になると、通常は言葉の発達が加速度的に起こるため、自閉症の赤ちゃんだと言葉の遅れが目立つようになります。
発言だけでなく、ママやパパの声かけへの理解ができず、生活では同じ食事だけ食べる、入浴や外出でも特定のものだけでないと泣き続けるなど、マイペースに過ごすという特徴がみられます。
赤ちゃんの自閉症の原因は?

自閉症は先天的な脳の障害ですが、胎児の頃に脳の発達に問題が発生する原因は、まだはっきりと分かっていません。
ただし、育て方や環境によって自閉症を発症したというわけではないことは医学的にも証明されているので、自分を責めないでくださいね。
自閉症の赤ちゃんにはどう対応したらいいの?

自閉症は生まれつきの脳の機能障害なので、完治することはありません。しかし、早期の療育によりその障害を少なくして、地域での生活がしやすくなる可能性はあります。
自分の子供が自閉症であることをなかなか受け入れられずに悩む人も多くいますが、早くから自閉症の特徴にあわせた療育(言語リハビリなど)の機会を提供してあげることで他の子たちと変わりなく成長していくことができます。
むしろ自閉症があったからこそ、成人となり輝かしい才能を発揮した事例もあります。
赤ちゃんに自閉症の可能性があったとしても悲観的にならずに、まずはかかりつけの小児科の先生や児童相談所、保健センターなどに相談してみてください。
自閉症も赤ちゃんの個性の1つ
自閉症にはネガティブなイメージがついていますが、決して悲観しないでください。症状をよく理解したうえで子供本人の持っている力を伸ばしていくような教育を受けさせてあげれば、社会に適応した形で生活することができます。
他の赤ちゃんと比較するのではなく、その子自身をしっかり見守って、焦らず発達状況に合った子育てを心掛けていきましょう。自閉症も個性の1つと考えて、赤ちゃんの成長を見守ってあげてくださいね。