出産を乗り越えて愛しい赤ちゃんに出会えると安心しますが、産後しばらくは、下腹部の痛みが続きます。これは「後陣痛」という症状で、産後すぐから起きるママが多くいます。今回は、後陣痛とはどのような痛みなのか、いつまで続くのか、痛みを和らげる方法、帝王切開や経産婦にも痛みはあるのかについてご説明します。
後陣痛とは?産後に起きる原因は?
後陣痛とは、産後に起こる下腹部の痛みのことを指します。
臨月の子宮は、妊娠初期の頃と比べて、大きさが約5倍、容量は500~1,000倍にもなります(※1)。産後は、この大きくなった子宮を元の状態に戻すために、子宮が不規則に収縮します。この働きを、「子宮復古」と呼びます。
後陣痛は、この子宮復古に伴う痛みです。
後陣痛の痛みの程度は人それぞれで、「生理痛に似た鈍い痛み」「針でチクチク刺されるような痛み」などといわれます。基本的には陣痛ほどの痛みではありません。
後陣痛はいつまで続く?授乳中は痛みが強まるの?
後陣痛は分娩後2~3日で治まるのが一般的です(※1)。しかし、痛みを感じる期間には個人差があり、人によっては1週間ほど後陣痛が続くこともあるようです。
また、母乳の分泌に関わる「オキシトシン」というホルモンには、子宮の収縮を促す働きがあるので、授乳時には後陣痛の痛みが増すこともあります。産後、「赤ちゃんにたくさん母乳を飲んでもらうと体の回復が早まる」といわれるのはこのためです。
後陣痛の痛みはつらいかもしれませんが、自分の体を回復させているために起こるんだと考えて、母乳をたくさんあげてくださいね。
なお、産後1ヶ月以上過ぎても後陣痛のような下腹部痛が治まらない場合、子宮がうまく回復できていない状態である「子宮復古不全」の可能性があります。腹痛が続くようであれば、1ヶ月健診などで医師に相談しましょう。
経産婦のほうが後陣痛は痛い?
後陣痛は、初産のママよりも、出産経験のある経産婦のママのほうが強い痛みを感じやすいといわれています。これは、経産婦のほうが子宮がよく伸び縮みするため、より強い収縮が必要となり、より強い後陣痛が起こるからです。
双子や三つ子などの多胎妊娠や、羊水の量が多い羊水過多症の場合も、同様の理由で後陣痛の痛みが強くなる傾向にあります。
帝王切開でも後陣痛は起こるの?
「陣痛を経験しない帝王切開なら後陣痛がないのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
妊娠生活で大きくなった子宮を元通りの状態に回復させなければならないのは、どの分娩方法でも同じです。帝王切開でも子宮復古が必要なので、後陣痛は起こります。
帝王切開の場合は、後陣痛に加えて術後の傷跡の痛みも伴うので、産後に痛みを感じやすいかもしれません。
後陣痛の痛みを和らげる方法は?
後陣痛は子宮復古の過程で起こるものなので、痛みがあるのは自然なことです。むしろ痛みがあるほうが子宮の回復が進んでいるともいえますが、陣痛のようなひどい痛みがあると日常生活にも支障が出てしまいます。
後陣痛の痛みがひどいときは、下記のような緩和方法を試してみてください。
体を温めて血行を良くする
子宮周辺の血行を良くすると、後陣痛の痛みを緩和させる効果が期待できます。腹巻きをつけたり、カイロや湯たんぽを当てたりして、お腹周りを冷やさないようにしましょう。あたたかい飲み物を飲むなどして、体の内側から温めるのもおすすめです。
また、冷えやすい首・手首・足首などの部位を温めるのも、全身の冷えを抑えるのに効果的です。
枕やクッションを下腹部に当ててうつぶせに寝る
子宮を少し圧迫してあげると、後陣痛の痛みが和らぐことがあるようです。
圧迫する加減が難しいのですが、枕やクッションのような少しやわらかいものを下腹部に当ててうつ伏せに寝ると、程よい強さで圧迫できます。強く圧迫しすぎないように、枕やクッションの硬さには気をつけてくださいね。
子宮の周りを優しくマッサージする
深呼吸しながら下腹部を優しくマッサージするのも後陣痛の痛みを緩和するのに効果的だとされています。アロマオイルを使ってマッサージをすると、精神的にもリラックスできておすすめですよ。
授乳時に後陣痛の痛みが強くなる人は、授乳前にマッサージしておくといいでしょう。
リラックスする
後陣痛に対して不安を抱きすぎず、リラックスしておくことも大切です。好きな音楽を聴いたり、アロマの香りをかいだりと、自分なりのリラックス方法を試してみましょう。
産後は赤ちゃんの授乳や沐浴、寝かしつけなど、育児で大変な時期ですが、パートナーや家族の協力を得ながら、少しでも自分の時間を取るようにしてくださいね。
後陣痛を和らげるために痛み止めは飲んでいい?
後陣痛がひどく、睡眠の妨げになるようであれば、医師の判断で痛み止めが処方されることもあります。
授乳中に痛み止めを飲むと、赤ちゃんへの影響があるのではと心配になる人もいるかもしれませんが、多くの薬は母乳中に移行する量が非常に少なく、赤ちゃんに影響を与える薬はとても限られているといわれています(※2)。
「授乳中だから」と我慢せず、後陣痛に悩まされているのであれば、適度に薬の力に頼ることも大切です。
ただし、体質や他の薬との飲み合わせなどもあるので、自己判断で服用せず、痛み止めを使用する前に医師に相談するようにしましょう。
出産後の後陣痛は子宮が回復している証
後陣痛は生理現象で、子宮が順調に回復している証です。痛みを感じたとしても、「子宮が元通りになっているんだ」と前向きに捉えられるといいですね。後陣痛の痛みは長く続くわけではないので、今だけだと考えて乗り切りましょう。
ただ、あまりにも後陣痛の痛みが強いようなときは、我慢せずに医師に相談してください。後陣痛が異常に痛いときは、子宮内感染が起きている可能性もあります。産後の体はデリケートなので、いつも以上に気遣ってあげてくださいね。