心拍確認できた後でも流産することがある?その確率や兆候は?

監修医師 産婦人科医 永瀬 絵里
永瀬 絵里 産婦人科専門医。2001年、東海大学医学部卒業。神奈川県内の病院で産婦人科医としての経験を積み、現在は厚木市の塩塚産婦人科勤務。3児の母。「なんでも気軽に相談できる地元の医師」を目指して日々診療を行っ... 監修記事一覧へ

「赤ちゃんの心拍が確認されたら安心」と聞いたことがあると思います。しかし、心拍が確認された後でも残念ながら流産が起こることはあります。心拍確認後に流産になると自分を責めてしまう気持ちになるかもしれませんが、この時期に起こる流産は誰のせいでもありません。今回は心拍確認後の流産はどれくらいの確率で起こるのか、その原因は何か、兆候(症状)が現れるのかについてご説明します。

妊娠初期は流産が起こりやすい?

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妊娠初期の流産は、全妊娠のうち10~15%に見られ、なかでも妊娠12週未満で起こる流産が最も多いとされます(※1,2)。

流産の多くは、胎児側に染色体異常などの先天的な問題があったために起こります。染色体異常がある場合は、胎児の様々な器官が形成される前に流産になってしまうことがあるのです。

また、流産がなぜ起こったのかを明確に知ることは難しく、原因不明であることも多くあります(※2)。

心拍確認後に流産が起こる確率は?何が原因なの?

ママ 悩む

「赤ちゃんの心拍が確認されれば安心」といわれるのは、一般的に妊娠5~6週には、赤ちゃんの心臓の動きが確認できるほどまで順調に成長していると判断できることが多いからです(※3)。

しかし、妊娠7週以降になってもエコーで心拍が確認できない場合は、赤ちゃんがうまく成長できておらず、流産の可能性が考えられます。

ただし、心拍を確認できたとしても、そのあと流産の危険がまったくないわけではありません。日本産科婦人科学会によると、エコーによる心拍確認後に流産が起きる割合は全流産のうち16〜36%ほどあります(※3)。

そのため、心拍が確認できた時点では赤ちゃんが元気に生きているといえますが、その後の成長については定期的な検査で慎重に見ていく必要があるのです。

なお、心拍確認後の流産の理由として、受精卵が胎児へと成長する過程で絨毛細胞が異常増殖する「胞状奇胎」など様々なものが考えられますが、特定できないことも多くあります(※2)。

心拍確認後の流産に兆候は現れるの?

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心拍確認後に流産が起こる場合も、一般的な初期流産と同じような兆候が見られます。以下のような症状が現れたときにはかかりつけの産婦人科に相談しましょう。

不正出血

妊娠中は子宮への血流が増加するため、異常がなくても出血しやすくなっています。

ただし、ダラダラと少量の出血が長く続く、あるいはレバー状の塊が血液と一緒に出る、というような場合、まずは産婦人科医に相談しましょう。

下腹部の張りや痛み

流産になりかけている「切迫流産」の兆候に、少量の不正出血と軽い下腹部痛があります。これらの症状が続く場合は、かかりつけの産婦人科医に状況を伝えましょう。

今のところ、切迫流産に有効な治療法はありませんが、出血や腹痛をやわらげるために薬を投与したり、自宅または入院で安静にしたりするよう医師から指示されることもあります。

つわりがあまりに重い

つわりの種類や程度には個人差があるため、一概には言えませんが、染色体異常が原因で起こる「胞状奇胎」の症状に、重いつわりやむくみなどが挙げられます。

近年では、エコー装置の精度が上がったことにより、早期に胞状奇胎を診断できるようになりました(※2)。あまりにつわりが重く、むくみや茶色っぽいおりものが見られる場合は病院を受診しましょう。

つわりなどの妊娠初期症状がなくなる

逆に、つわりや胸の張りなどの妊娠初期症状が急になくなった場合も、流産の可能性が考えられます。また、妊娠中は高いまま保たれるはずの基礎体温が急に下がるのも、流産の兆候として挙げられます。

ただし、これらの症状が続く期間や程度は人それぞれなので、気になる変化があれば1人で心配しすぎず、かかりつけの産婦人科で診てもらってください。

心拍確認後の流産で自覚症状がないこともあるの?

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自然流産の種類の一つに、「稽留(けいりゅう)流産」があります。これは、胎児がママのお腹の中で亡くなってしまったものの、体外に出されずに子宮内に留まっている状態です。

稽留流産が起こっても、出血や腹痛などの自覚症状がほとんどないのが特徴です(※2)。また、赤ちゃんの心臓はすでに止まっていても、ママのお腹にはまだいるため、つわりが継続するケースもあります。

ママが自分で稽留流産に気づくことはまず難しいですが、妊婦健診のエコー検査で胎芽が見られるものの、心拍が確認できない場合、稽留流産と診断されます(※2)。

心拍確認後の流産は予防できるの?

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心拍確認後の流産は心拍確認前と同様に、原因が特定できない、または赤ちゃんに先天的な異常があることがほとんどなので、確実な予防法はありません。

しかし、厚生労働省によると、タバコが早産や自然流産のリスクを高めると指摘されています(※4)。妊娠を考え始めた時点で禁煙するようにしましょう。

心拍確認後の流産でも自分を責めないで

妊婦さんにとって、妊娠7週頃までにエコーで赤ちゃんの心拍が確認できたら一安心。ただし、心拍確認後であっても、残念ながら流産が起こる可能性はあります。原因がはっきりしているわけではないので、万が一流産が起こってしまっても自分を責めないでくださいね。

妊娠すること、妊娠が継続できること、無事に赤ちゃんを出産できること、その一つひとつが奇跡的なことです。妊娠が判明したあとも、定期的に妊婦健診を受け、赤ちゃんの成長を見守ってあげましょう。

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