妊娠中はずっとお腹の赤ちゃんのことが気になりますよね。安定期に入れば体調は落ち着いてきますが、トラブルがまったく起こらなくなるわけではありません。特に妊娠中期に現れる「後期流産」には要注意です。流産のほとんどは妊娠12週目までに起こる「早期流産」ですが、その時期を過ぎても流産が起こることはあります。今回は、妊娠中期に起こる後期流産について原因や兆候、確率などをご説明します。
後期流産とは?妊娠中期に起こるの?
妊娠22週未満で、妊娠の継続ができなくなることを「流産」といいます。このうち妊娠12週未満で起こる流産を「早期流産」、妊娠12週〜22週未満で起こる流産を「後期流産」と呼びます。
妊娠中期は妊娠16週~27週の期間を指すので、後期流産というのは妊娠初期の後半から妊娠中期の途中までに起こるものです。
日本では妊娠12週以降の流産は死産として扱われ、死産届を提出する必要があることからこのように分類されています。
後期流産が起こる確率は?安定期でも危険なの?
流産が起こるのはそれほど珍しいことではなく、全妊婦さんの約15%に見られます(※1)。その流産の約80%が早期流産で、残りの20%が後期流産です。
妊娠中期は母体や胎児の状態が落ち着く「安定期」とも呼ばれますが、決して何があっても大丈夫というわけではありません。確率は高くありませんが、安定期にも流産が起こることはあります。
妊娠中期に流産が起こる原因は?
早期流産のほとんどは細胞の染色体異常などが原因です。しかし、後期流産になるとママの体が原因で起こるといわれ、以下のようなものが挙げられます。
子宮筋腫
「子宮筋腫」は子宮内の平滑筋という筋肉から発生する良性の腫瘍で、子宮内で肥大化します。成人女性の20~30%は大小にかかわらず子宮筋腫があるといわれ、次のような流れで流産を起こすといわれます。
まず、筋腫が大きくなって血管が圧迫し、着床卵や胎盤の栄養不足が起きます。そして子宮の血流が悪くなると子宮収縮を起こして流産を引き起こすのです。
子宮奇形
子宮の形に先天的な異常がある「子宮奇形」が、流産の原因になるといわれます。子宮の形がいびつなために血流障害が起き、子宮筋が伸びにくくなる、子宮の面積が狭いなどの理由で流産につながるのです。
ただし、子宮奇形が必ず流産を引き起こすわけではありません。
子宮頸管無力症
子宮口近くの頸管と呼ばれる部分(子宮頸部)の閉じる力が弱く、胎児が大きくなるにつれて開いてしまうのが「子宮頸管無力症」です。妊娠中に子宮頸管が開いてしまうと、妊娠が継続できなくなってしまいます。
子宮頸管無力症は体質的なもので、一度子宮頸管無力症と診断された場合は次の妊娠でも同じ症状が現れる可能性があります。
絨毛膜羊膜炎
子宮の中で赤ちゃんが入っている袋である卵膜は、子宮壁側から、脱落膜、絨毛膜、羊膜と呼ばれる3枚の膜でできています。このうち絨毛膜と羊膜が細菌に感染して炎症を起こすのが「絨毛膜羊膜炎」です。
妊娠中は免疫力が低下するため、ちょっとした細菌でも感染してしまい、流産を引き起こすことがあります。
過度のストレスや運動
過度のストレスがかかったり、激しい運動をしすぎることが、後期流産の原因になることもあります。日常生活でよほどのことをしなければ流産になることはありませんが、妊娠中期でも流産が起きうることを肝に銘じ、無理をしないように心がけてください。
後期流産の兆候・症状、対処法は?
後期流産ではどんな兆候や症状が現れるのでしょうか?早期流産と似た症状が現れるので、以下のような異常を感じたときは早めにかかりつけの産婦人科に相談しましょう。
出血がある
妊娠中期は体調も安定しているので出血が起こることはほとんどありません。もし出血が見られたら後期流産の可能性を疑いましょう。痛みがなくても出血が見られたら念のため産婦人科を受診してください。
お腹が痛い、お腹が張る
お腹が痛いのは流産の兆候の一つです。いつもとは違う痛みを感じたり、周期的にお腹が張ったりするのは子宮収縮が起きている可能性もあります。
おりものが多い、かゆみがある
おりものが増える、陰部にかゆみがある場合は、子宮や膣で炎症が起きている可能性があります。炎症が広がると流産につながることもあります。
これらの兆候が見られたらできるだけ早くかかりつけの産婦人科を受診しましょう。妊娠中はどんなトラブルが起こるかわかりませんので、早めの対処を心がけてください。
後期流産は予防できる?
後期流産は原因がはっきりしているものが多いので、ある程度対策をたてることはできます。ただし、対策を行ったからといって、100%流産を予防できるわけではないということは覚えておきましょう。
例えば、子宮筋腫であれば薬を服用したり、漢方などを使って腫瘍が大きくならないように気をつけたりすることができます。また、絨毛膜羊膜炎も、規則正しい生活をして免疫力を保つようにしておけば予防になります。体質による子宮頚管無力症でも定期的な妊婦健診を受診すれば早期発見につながりますよ。
そのほか、日頃から無理をせずに過ごすことも大切です。
後期流産は過度なストレスや激しい運動が引き金になることもあるので、仕事が忙しいからといって妊娠前と同じように動いてしまうのはやめましょう。お腹はまだ大きくありませんが、赤ちゃんが宿っていることを意識して、無理のない範囲で働くようにしてください。
安定期でも流産が起こることはある
妊娠中期になると体も安定してきて「もう大丈夫」と思ってしまいがちです。つわりがひどくて動けなかった人のなかには、動けなかったぶん、安定期に入ってから家事や仕事を一気に始めたくなる人もいますよね。
しかし、これまで説明したように、安定期とはいっても流産が起こる確率は少なからずあります。妊娠中は何が起こるかわからないので無理をせず、何かあったら迷わず産婦人科を受診するようにしてくださいね。