妊娠がわかってから、胎児の「染色体異常」という言葉を初めて耳にした妊婦さんもいますよね。でも、どのような状態を染色体異常というのかなど、わからないことも多いのではないでしょうか。
今回は、胎児の染色体異常の原因や、出生前検査で染色体異常がわかるのかについて、ご紹介します。
染色体異常とは?
人間の細胞のひとつひとつには、23対46本の染色体があり、両親からの遺伝情報が詰まっています(※1)。
「染色体異常」とは、父親と母親から受け継いだ染色体の数や構造が通常と異なることをいいます。
染色体異常によって起こる疾患の代表的な例には以下のようなものがあります。
ダウン症候群
ダウン症候群の約95%は、21番目の染色体が1本多いために起こる「21トリソミー」です(※2)。
ダウン症候群の症状や程度には個人差が大きいですが、一般的に精神発達の遅れや知能障害、筋力が弱い、身長が低い、顔が丸くて平坦などの特徴がみられます。目や耳、心臓、腸などの病気を合併している例も多くあります。
ダウン症候群の赤ちゃんが生まれる割合は、約600〜800人に1人です(※3)。高齢出産になるほど発症率は高くなり、母親の年齢が20歳で1,667人に1人、30歳で952人に1人であるのに対して、35歳では385人に1人、41歳では86人に1人になります(※1)。
エドワーズ症候群(18トリソミー)
エドワーズ症候群は、18番目の染色体が1本多いために起こります(※4)。主な症状は、知的障害や出生時の低身長、心疾患、臓器の異常、手足の変形などです。
エドワーズ症候群の赤ちゃんが生まれる割合は、3,500〜8,500人に1人で、女の子に多いです(※5)。
パトー症候群(13トリソミー)
パトー症候群は、13番目の染色体が1本多いために起こります(※6)。パトー症候群の赤ちゃんには、口唇裂や口蓋裂などの顔面奇形、小眼球症、網膜異形成、重度の知的障害などがみられることが多いです。
パトー症候群の赤ちゃんが生まれる割合は、5,000〜12,000人に1人です(※7)。
染色体異常が起こる原因は?
卵子の染色体異常は、母親の年齢が上がるにつれて増加します(※8)。また、精子の染色体異常についても、年齢の上昇とともに遺伝子レベルの異変が増えるとされています。
ただし、母親や父親の年齢が若くても染色体異常の赤ちゃんが生まれることもあるため、加齢だけが原因ではありません。
どの年齢でも染色体異常が起こる可能性があり、稀に遺伝が原因となることもあります。妊娠するときに何か心配なことがあるときは、遺伝カウンセリングの専門家に相談しましょう。
妊娠中に胎児の染色体異常を知る方法はある?
一部の染色体異常は、妊娠中に出生前検査を受けると高い精度で知ることができます。
出生前検査には、「非確定的検査」と「確定的検査」があります(※9)。
非確定的検査
染色体異常の可能性を調べるための検査で、確定診断ではありません。採血や超音波によって検査をします。
結果によっては、確定的検査を受けるかどうかを検討する必要があります。
非確定的検査の種類と調べられる病気
● NIPT:ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミー
● 超音波マーカーの検査・コンバインド検査:ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミー
● 母体血清マーカーテスト:ダウン症候群、18トリソミー、開放性神経管奇形
確定的検査
染色体異常が、ほぼ100%の確率でわかる検査です。羊水または絨毛を採取して調べます。
さまざまな種類の染色体異常の有無がわかりますが、症状や病気の重さまでは調べられません。妊婦さんのお腹に針を刺すため、わずかながら流産のリスクがあります。
確定的検査の種類と調べられる病気
● 羊水検査:染色体の病気全般
● 絨毛検査:染色体の病気全般
出生前検査を受けるにあたっては、染色体異常の可能性があるとわかった場合にどうするかを考えておく必要があります。かかりつけの医師に検査内容を確認し、専門の病院で遺伝カウンセリングを受けて、パートナーや家族と話し合ったうえで決めていくといいでしょう。
遺伝カウンセリングでは、出生前検査の詳しい検査方法やもし染色体異常があった場合のことについてなど、さまざまな相談ができます。
染色体異常について気になったら相談しよう
染色体異常について不安になることもあるかもしれませんが、未然に防ぐことはできないものです。
出生前検査によって染色体異常の可能性を調べることで、赤ちゃんが生まれる前に心の準備をしておくことができますが、一方で、不安や悩みが深くなることもあります。
染色体異常や出生前検査について気になることがある場合は、まずはかかりつけの産婦人科医に相談してみてくださいね。