神経管閉鎖障害とは?原因と症状、治療法は?葉酸で予防できるの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県横浜市のなごみクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギー科を担... 監修記事一覧へ

赤ちゃんの先天性疾患の一つに「神経管閉鎖障害」があります。妊娠初期に起こる先天異常で、神経管の下部に障害が発生するものを「二分脊椎症」、上部に現れるものを「無脳症」と呼びます。前者では生涯にわたって治療やリハビリが必要になる可能性があり、後者では流産・死産となる重大な疾患です。今回は、神経管閉鎖障害の原因や症状、治療・サポート方法のほか、妊娠初期の葉酸摂取との関係性についてご説明します。

神経管閉鎖障害とは?症状は?

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神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄などの中枢神経の元になる「神経管」の一部が塞がらず、脳や脊髄が正常に機能しなくなる疾患です。神経管閉鎖障害が起こるのは、遅くとも、ママのお腹にいるときに神経管が作られる妊娠4~5週頃です。

神経管のどの部分が塞がらないかで障害の現れ方は異なり、大きく分けて「二分脊椎症」と「無脳症」が見られます。

二分脊椎症

神経管の下部が塞がらないことで発症します。本来、脊椎の管の中にあるべき脊髄が外に出てしまい、癒着や損傷することで様々な神経障害が起こります。日本国内での発症率は、1万人に5人前後です(※1)。

下半身の神経が麻痺して歩行障害や運動障害が起こるほか、膀胱や直腸などを動かす筋肉の麻痺により排尿・排便障害、大人になってからは性機能障害が起こることもあります。また、約半数の子供で軽度から中程度の知的障害が発症します(※1)。

潜在性の二分脊椎症の場合、幼児期はあまり症状が見られず、学童期や思春期、ケースによっては大人になってから障害が起こることもあります。たとえば、腰の部分で癒着した脊髄が身長の伸びについていけず、引き伸ばされることで転びやすくなったり、尿を漏らしたりといったことが起こります。

無脳症

神経管の上部に閉塞障害が現れるのが「無脳症」です。神経管から脳が正常に作られず、頭蓋と大脳が欠損した状態になるのが特徴です。超音波(エコー)検査により、妊娠14週頃には診断できます(※2)。

脳以外の臓器には異常がない場合がほとんどで、胎児期は成長を続けますが、脳が形成されていないと生きていくことができないために、残念ながら流産や死産の割合が高くなります。

神経管閉鎖障害の原因は葉酸不足?

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神経管閉鎖障害の主な原因は、葉酸の摂取量不足、妊娠期間中の環境、遺伝的要因の3つとされています(※1)。

妊娠初期における葉酸の不足

妊娠初期は神経管を元に脳や神経、心臓といった様々な器官が作られる時期で、細胞の増殖に必要なDNAの合成を促す葉酸が必要とされます。

妊娠初期に葉酸の摂取量が不足するか、葉酸の吸収・代謝を妨げるアルコールを大量に摂取していると、細胞の増殖が滞って神経管閉鎖障害の発症リスクが高まってしまいます。

妊娠中の環境と遺伝的要因

妊婦さんに、糖尿病や肥満、てんかん薬の内服、妊娠初期の高熱発作、放射線被爆、ビタミンAの過剰摂取があると、神経管閉鎖障害の原因となることがあります。

また、神経管閉鎖障害のケースのうち、20~30%は遺伝子異常が関係しているため、完全に予防することは難しい病気です。

神経管閉鎖障害は葉酸摂取で予防できる?

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妊娠初期の葉酸不足が神経管閉鎖障害の原因の一つであることがわかっているので、世界中で妊婦さんの葉酸摂取が推奨されています。特に、妊娠前から葉酸サプリメントを摂取していると発症リスクを70~80%減らせるといわれます(※1)。

日本でも厚生労働省が妊娠の可能性のある女性に対して、葉酸サプリメントなどを利用して1日に400μg(0.4mg)以上摂取することを推奨しています(※3)。

ただし、厚生労働省は葉酸の上限摂取量を1日1,000μg(1mg)としています(※3)。サプリメントは手軽に栄養を摂れるのが良い所ですが、葉酸の過剰摂取には注意しましょう。

神経管閉鎖障害の治療・サポート方法は?

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神経管閉鎖障害であると診断された場合、出生後の外科手術による治療や身体障害などへの医療・福祉のサポートが必要となることが多くあります。

脊髄が皮膚に覆われておらず、むき出しになっている「髄膜瘤」の状態では、出生後すぐに背中の閉鎖手術が必要となることもあります。また、神経の損傷場所にもよりますが、下肢障害に対してはリハビリや車いす・補装具などのサポート、排泄障害があれば導尿や浣腸などの対処が不可欠です。

神経管閉鎖障害と一口に言っても程度は様々であり、医療だけでなく教育や就業の問題など生涯にわたってトータルなケアが求められています。

神経管閉鎖障害を葉酸摂取で予防しましょう

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神経管閉鎖障害の発症には、遺伝的な要因が関係しているケースもあるので、自分の努力で100%予防できるわけではありません。しかし、妊娠初期にきちんと葉酸を摂取することでリスクを予防できる確率は高まるため、妊娠を望んだ段階で葉酸の摂取を始めましょう。

環境的・遺伝子的要因で赤ちゃんが神経管閉鎖障害を発症した場合、治療やリハビリが必要となります。本人だけでなく、育てるパパやママにも困難が伴うものですが、一緒に治療に励みながら赤ちゃんの成長を見守ってあげてくださいね。

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