葉酸は妊娠中に必要な栄養素のひとつです。ただ「普段の食事からはどれくらい摂取できるの?」「サプリメントから摂る必要があるの?」という疑問を抱えている人も多いのではないでしょうか。今回は、食品から摂る「天然葉酸」とサプリメントから摂る「合成葉酸」の違いや、妊活中や妊娠中に摂るのはどちらがいいのかについてご説明します。
葉酸ってなに?天然と合成があるの?
葉酸はビタミンB群の一つで、水に溶けやすい「水溶性ビタミン」の仲間です。体内で、二つの重要なものを作る働きがあります。
一つは、DNAです。
DNAは、細胞の核のなかにある遺伝子をつくる物質で、細胞が増殖するときに欠かせません。
受精卵になったばかりの赤ちゃんは、細胞分裂を繰り返して大きくなっていきます。そのため、妊娠初期、特に妊娠してから1ヶ月のあいだの妊婦さんは、多くの葉酸を摂取する必要があります。
もう一つは、血液です。
葉酸は、ビタミンB12と協力して、体内の血液を作っています。妊娠中は貧血になりやすいので、葉酸の摂取が欠かせません。
また葉酸には、「天然葉酸」と「合成葉酸」があり、それぞれ「ポリグルタミン酸型」と「モノグルタミン酸型」と呼ばれます。ここからは、それぞれの違いについて詳しく説明していきいます。
天然葉酸(ポリグルタミン酸型)とは?
天然葉酸は、主に食品中に含まれている葉酸のことで、「ポリグルタミン酸型」とも呼ばれます。
葉酸は、熱に弱いうえに水溶性なので、調理中に50%近くが分解されるか、茹で汁に溶けだしてしまいます(※1)。
また、ポリグルタミン酸型の葉酸は、体内に入ったあとも栄養素として使われるまでに様々な代謝の段階があり、利用効率が50%ほどと見積もられています(※1)。
このように、天然葉酸(ポリグルタミン酸型葉酸)は、食品から手軽に摂取できるものの、栄養素として体内で使われる量が少ないというのが特徴です。
合成葉酸(モノグルタミン酸)とは?
合成葉酸は、主にサプリメントに含まれている葉酸で、「モノグルタミン酸型」と呼ばれます。
モノグルタミン酸型は、ポリグルタミン酸型と違って、消化や吸収時に壊れません。
また、サプリメントは調理の必要もないので、サプリメントに含まれている葉酸は、ほとんどそのまま体内に吸収することができます。
ただし、全てのサプリメントに合成葉酸が含まれているわけではなく、天然葉酸が含まれているサプリメントもあります。
天然葉酸と合成葉酸の違いは?妊活中や妊娠中に摂るのはどっち?
天然葉酸と合成葉酸の違いは、先にもご説明したように、「食品に含まれるか、サプリに含まれるか」「体内に摂取されやすいか、されにくいか」という二点です。
「天然」と「合成」といわれると、天然成分の方が質が高いように感じるかもしれませんが、栄養の質に違いはありません。
合成葉酸の安全性が高いこともわかっており、厚生労働省も、妊娠中は、食品から摂れる天然葉酸だけでなく、サプリメントなどから摂れる合成葉酸もあわせて摂取することを推奨しています(※1)。
その理由は、諸外国の大規模な研究の結果、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減した葉酸は、ほとんどが天然葉酸ではなく、合成葉酸だったということがわかったからです。
もちろん天然葉酸に効果がないわけではなく、食事からの葉酸摂取で神経管閉鎖障害のリスクを低減できたという論文も報告されています。
しかし、まだ科学的な根拠に乏しいうえ、合成葉酸のほうが摂取したあとの利用効率が安定しているため、食事からの天然葉酸だけでなく、サプリメントからの合成葉酸の摂取も推奨されているのです。
天然葉酸と合成葉酸はバランス良く
20~40代の妊婦さんは、1日につき480μgの葉酸を摂取するよう推奨されています(※2)。天然葉酸・合成葉酸のどちらかに偏るのではなく、食事から天然葉酸を摂りながら、サプリメントからも合成葉酸を摂ることで、1日の推奨量を摂取するようにしましょう。
天然葉酸は、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜に多く含まれます。毎日の食事に取り入れられるよう、献立を工夫してみてくださいね。