生理不順は不妊につながる?病気の可能性もあるの?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

毎月やってくることから、「月経」や「お月さま」などとも呼ばれている、女性の生理。しかし、きちんと毎月こないと悩んでいる人も多くいます。できれば定期的に訪れてほしいものですが、女性の体はデリケート。環境の変化をはじめ、様々な要因で女性の体は変化し、その影響が生理にも表れます。生理不順を放っておくと不妊につながる恐れもあるので、注意したいですね。今回は生理不順と不妊の関係や、生理周期を安定させるための対策をまとめました。

生理不順って、どういう状態?

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正常な生理周期は25~38日周期で、月経持続期間は3~7日間(※1)。この範囲から外れると「生理不順」といわれます。

3ヶ月以上生理がない状態を「無月経」、生理周期が24日以内の場合は「頻発月経」、39日以上3ヶ月未満で生理が来るものを「稀発月経」と呼びます。

また、1回の生理で出血が8日以上続くものを「過長月経」、2日以内で終わってしまうものを「過短月経」といいます。

ストレスが生理不順を引き起こす?

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毎月、ほぼ一定の周期で生理が来る人もいれば、毎回バラバラ…という人もいます。では、生理周期が不規則になってしまう原因はどこにあるのでしょうか?

生理不順を引き起こす原因は様々ですが、たとえば次に挙げるようなことで心身ともにストレスを感じると、生理不順につながる恐れがあります。

● 過度なダイエット
● 生活の変化(就職・転職など)
● 人間関係(仕事・恋愛など)
● 睡眠不足
● ハードワーク

ストレスで生理不順が起こるのはなぜ?

基礎体温表 グラフ 女性ホルモン 卵胞期

女性の体内では、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という女性ホルモンの分泌量が変動することで、子宮内膜が厚くなったり剥がれ落ちたりを繰り返し、生理周期が作り出されています。

上の図にあるとおり、生理周期は、卵胞が発育する「卵胞期」、成熟した卵胞が排出される「排卵期」、排卵された卵胞が黄体という組織に変化する「黄体期」、受精卵が着床しなかった場合に生理が起こる「月経」によって構成されています。

通常は、脳の視床下部が、ホルモン分泌を行う脳下垂体に指令を出すことで、女性ホルモンが分泌されます。しかし、ストレスを受けると視床下部からの信号伝達が乱れ、うまくホルモン分泌が行われなくなってしまいます。

このように、ストレスなどの影響でホルモンバランスが崩れると、生理不順が起こってしまう、という仕組みです。

生理不順は不妊につながるの?

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女性ホルモンの分泌バランスは、ストレスなどちょっとした原因で崩れやすいもの。「前回までは生理周期が規則的だったのに、今回は違った」ということもよくあります。生理不順が一時的なものであれば、過度に不妊リスクを心配する必要はありません。

しかし、生理不順が続くと、ホルモンバランスの乱れが慢性化し、妊娠しづらい体質になってしまう恐れも。また、子宮や卵巣に病気が隠れている可能性もあるので、婦人科を受診して検査を受けましょう。

生理不順の原因になりうる病気のうち、不妊につながる恐れがあるものをいくつかご紹介します。

子宮の病気

子宮筋腫や子宮腺筋症など、子宮の病気が原因で過長月経・過多月経が起こることがあります。これらの病気がある場合、進行具合などによってはひどい生理痛を伴うこともあります(※2)。

妊娠を希望する場合、低用量ピルやホルモン剤による薬物療法や、病巣のみを摘出する手術療法が行われます。しかし、症状や病気によっては、子宮を全摘出する必要があることもあります。

無排卵周期症(無排卵月経)

生理周期が51日以上の稀発月経の約30%、19日以内の頻発月経の約60%は「無排卵」だといわれています(※1)。自覚症状はほとんどありませんが、生理周期が不順なことが多く、生理の期間も長かったり短かったりします。

無排卵周期症は、卵巣機能は保たれているものの、排卵は起きていない状態です。排卵がなければ妊娠はできないので、妊娠の希望がある場合は排卵誘発剤などによる治療が必要になります。

黄体機能不全

黄体機能不全は、排卵・受精に異常はないものの、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が不足し、子宮内膜の発育異常が起こるものです。生理周期のうち、「黄体期」が短くなるため、頻発月経が起こることがあります。

子宮内膜が厚い状態で維持されないと、受精卵がうまく着床せず、妊娠しづらくなります。また、着床したとしても妊娠の維持ができず、受精卵が育たないまま妊娠が中断してしまう可能性もあります。

黄体機能不全が不妊の原因になっている場合、排卵誘発剤で排卵を促す、ホルモン剤を投与して黄体ホルモンを補充する、などの治療が行われます。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

卵胞が完全に発育しない状態で、嚢胞としてたくさん卵巣内に溜まってしまう病気です。罹患率は6~10%で、無月経や稀発月経などの生理不順の原因になります(※2)。

卵胞が発育途上のままなので、排卵障害を起こし、不妊につながってしまう恐れがあります。妊娠を希望する場合、排卵誘発剤を使うか、手術で卵巣皮質に穴を開けて自然排卵の可能性を高めるなどして治療します。

生理不順による不妊を防ぐには?

生活習慣の乱れやストレスが生理不順の原因となっているのであれば、できるだけ早く正常なサイクルに戻すため、生活習慣を改善し、ストレスの要因を取り除きましょう。

まずは以下のことを心がけてみてください。

● 栄養バランスの取れた食事を取るなど、健康的な食生活をおくる
● 規則正しい生活、睡眠を十分にとる
● 急激なダイエットをやめる
● 自分に合ったストレス解消法を実践する
● 精神的に自分を追い詰めない、気持ちを切り替える

ただし、生理不順の原因が単なるストレスではなく、先ほどご紹介したような病気の可能性もあります。生活習慣を改善しても生理不順が続いたり、不正出血など他にも症状があるときは、婦人科を受診し、検査を受けましょう。

生理不順で不妊を招かないように注意しましょう

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生理不順を放っておくと、ホルモンバランスの乱れが治らず、不妊につながる恐れもあります。生理不順で悩んでいる人は、できるだけ早く婦人科を受診しましょう。婦人科系の病気を早期発見できるきっかけになるかもしれません。

また、生理周期が不規則になると、生理のリズムがつかみづらくなってしまいます。普段から基礎体温をつけておくと、自分の体のリズムを客観的に把握できるので、おすすめですよ。

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