出産後は、かわいい赤ちゃんと楽しく過ごす毎日が始まる一方で、生活のリズムが大きく変化しますよね。その変化は夫婦の関係にも影響を及ぼし、「離婚したい!」と思ってしまう人もいます。産後に夫婦関係に亀裂が入るこのような状況は「産後クライシス」とよばれ、近年クローズアップされてきています。そこで今回は、産後クライシスとは何か、原因や離婚を回避する解決法などについてご紹介します。
産後クライシスとは?

産後クライシスとは出産後に起こる夫婦の危機のことで、以前は仲がよかったのに、出産をきっかけに夫婦仲が悪化する現象のことを指します。
産後、一時的に夫婦仲が冷え込むという現象自体は、昔からよく見られるものでしたが、NHKのテレビ番組で「産後クライシス」という言葉が使われたことがきっかけで、最近になって認知度が高まってきました。
幸せの象徴というイメージが強い出産ですが、夫婦仲が悪くなってしまうきっかけにもなるということがわかってきています。
産後クライシスの原因は?

それでは、なぜ出産後に夫婦仲が悪くなりやすくなるのでしょうか。ここでは、産後クライシスの主な原因についてご説明します。
ホルモンバランスの変化
産後は、妊娠中に大量に分泌されていた2つの女性ホルモン、プロゲステロンとエストロゲンが一気に減少しホルモンバランスが大きく変動します(※1)。そのため、精神的に不安定になりやすいようです。
自律神経にも影響が出るため、感情(イライラ)をコントロールすることが難しくなりがちです。
また、「幸せホルモン」ともよばれるエストロゲンが急激に減少することで、産後の女性はうつに近い状態になりやすいともいわれています。
ライフスタイルの変化
産後は、好きなときに好きなことができなくなり、子供中心の生活に変わります。自由な時間が急激に減るため、ストレスを感じやすくなり、神経が過敏になることもあります。
また、家事と育児でママのやることが増え、産前よりも「やってほしいな」と思う機会が増えるものですが、そのときにパパがのんびり本を読んでいたり、テレビを見ていたりすると、ホルモンバランスの変化もあって、さらにイライラしてしまいがちです。
育児疲れ
育児は24時間体制で昼夜関係なく続きます。慢性的な睡眠不足が続き、まだ残っている出産の疲れやライフスタイルの急激な変化と相まって大きな負担となります。
夫婦生活の減少
パパにはホルモンバランスの変化などがないため、以前と性欲は変わりません。しかし産後は、多くのママが「それどころじゃない」「そんな気分になれない」と感じてしまう時期です。
その結果、これまで説明してきたような原因も加わり、夫婦生活が自然と減少していきます。するとスキンシップが減り、ますます夫婦間の溝が大きくなります。
産後クライシスは離婚の原因になる?

産後クライシスの特徴は、パパに対する不満や嫌悪感が大きくなることです。家事や育児をしてくれない、やってくれても思うように動いてくれない、不手際が目立つ、恩着せがましいなど、パパの家事や育児への姿勢が甘いと感じるケースが大半です。
産後、ほとんど自分の時間が取れないママに比べて、赤ちゃんが生まれる前と変わらず、自分のことまでママに任せっきりのパパもいます。そういう状況だと、パパの何気ない言動にも不満がつのり、それが積み重なるとママの我慢が限界に達してしまい、パパへの愛情が冷めてしまうのです。
これが進み、お互いの愛情がなくなると、一緒にいることが辛くなって離婚に至るケースもあります。具体的には、厚生労働省が母子家庭を対象に行った平成23年度の調査によると、子供が0~2歳のときに母子家庭になった家庭は約35%だそうです(※2)。
それでは、どうしたら産後クライシスを解消できるのでしょうか。離婚に至らないために、以降では産後クライシスの解決方法を、ママ編・パパ編に分けてお伝えします。
産後クライシスの解決法!ママ側の心得は?

まずは、ママの不満を解消することが先決です。そしてパパがうまく家事・育児を主体的にしてくれるように導くという、ちょっとしたワザも必要ですよ。
ママ友をつくる
同じ立場のママ友と会って話すのはおすすめです。多くのママが同じような不満を抱えているので、共感しあうだけで気分転換できますよ。ときには吐き出してすっきりすることも大切です。
不満があっても感情的にならない
難しい場合もありますが、感情的に責められるとパパも気分はよくありません。できるだけ冷静に気持ちを伝えましょう。
1人で家事・育児を抱え込まない
パパが仕事などで忙しいなら、実家や有料の託児サービスなどを頼るのも一つの方法です。自分の時間を持つことで心にゆとりができれば、パパに対しても感情的になりにくくなりますよ。
感謝を伝える
パパがした家事や育児に対して、注意やNGを出すことはせず、「洗濯物たたむの、手間だよね。助かる。ありがとう」など、まずは感謝の気持ちを伝えましょう。
パパが主体的に取り組み始めたら、さりげなく「こうしたら、もっと簡単だよ」などとアドバイスをして、少しずつ改善を図るのが得策でしょう。
スキンシップを欠かさない
夫婦生活を無理に行うことはありませんが、パパにできない理由をちゃんと説明しましょう。
また、いってらっしゃいのキスをする、お出かけのときは手をつなぐ、お互いにマッサージしあうなど、できるだけスキンシップをとれるといいですね。パパの気持ちが離れてしまうことを防ぐことができますよ。
産後クライシスの解決法!パパ側の心得は?

産後クライシスによる離婚を防ぐには、何よりもパパの意識改革が必要になってきます。少しでもママが楽になってほしい、というパパの姿勢が見えるだけでもママは嬉しいものです。
ママが一人になれる時間を作る
スーパーへ買い物に行くだけでもよいので、ママが一人で外出する時間を作ってあげましょう。パパが子供を連れて散歩するのもいいですね。
子育てを「手伝う」という考えを捨てる
育児は「手伝う」のではなく、「一緒にするもの」だと考えましょう。育児はママだけの仕事ではありません。できることは進んでやるようにしましょうね。
女性のホルモン変化を理解する
妊娠中から産後にかけてはホルモンバランスが崩れがちで、女性は精神が不安定になりやすい状態です。ママ自身が冷静にコントロールできるものではない、ということを理解しましょう。
夫婦生活について理解する
ママは24時間の育児でクタクタです。ホルモンバランスの変化もあり、一時的に性欲も減退してしまっています。その状況だけでも理解しておくと、心の負担は軽くなるはずですよ。
産後クライシスで離婚したいと思ったら?

色々試してみたけれど、ホルモンバランスの乱れや疲れによって、自分では感情のコントロールができなくなってしまうこともあります。どうしてもイライラがおさまらないという状態は、産後の女性なら誰でも起こりうる自然なことです。
そんなときは、不安を一人で抱え込んだり、自分を責めたりせず、心療内科や子育て支援センターなどでカウンセリングを受けるのも一つの手です。気持ちをすべて吐き出すことで心が楽になることもありますよ。
産後クライシスでも離婚は回避できる
産後クライシスは、夫婦が協力すれば乗り越えられるものです。ネガティブに考えるのではなく、むしろ産後クライシスは夫婦の絆が強まる、二人が夫婦として親として成長するために必要な経験だと捉え、前向きに対処していけるといいですね。
出産前のプレママは、産後の家事や育児の分担をどうするのかなど、今のうちに夫婦で話し合っておくといいでしょう。また、夫婦で産後クライシスについての認識を深めておけると、さらにいいですね。