出産後は休む間もなく日々の授乳やおむつ替え、寝かしつけなどのお世話に追われているのではないでしょうか。初めてのことばかりで疲労困憊…という人も多いと思います。しかし、疲れだけではなく、気分が落ち込んだり、イライラしたりといった症状がある場合、それは「産後うつ」かもしれません。今回は産後うつの原因や、症状がいつからいつまで続くものなのかをご説明し、セルフチェックするためのリストをご紹介します。
産後うつとは?

産後うつとはその名の通り、産後に現れるうつ症状のことです。育児へのプレッシャーや不安などがストレスになって発症するもので、うつ病の一種と考えられています。
パートナーや両親の協力を得られず、1人で育児のすべてを抱え込んでしまっているママほど発症しやすく、「家事も育児も完璧にこなしたい」と考えすぎてしまう人や、責任感が強い人は特に注意が必要です。
産後うつの原因は?時期はいつからいつまで?

産後のママの体は妊娠前の状態に戻ろうとするためにホルモンバランスが変化し、心身ともに不安定な状態になっています。日本産科婦人科学会によると、産後3~5日頃から涙もろくなったり、自信がなくなったりする「マタニティーブルーズ症候群」の症状が見られるママが多くいます(※1)。
一般的に、マタニティーブルーズ症候群は数週間で治まります。しかし、育児疲れや周囲のサポートを得られないことへの孤独感、家事と子育てを両立できないことへの罪悪感などが加わると産後うつを発症し、その割合は産後の女性の5~10%と考えられています(※2)。
産後うつになる時期や長さには個人差があります。発症時期は産後2~4週間頃が多く、環境によっては産後1~3ヶ月が過ぎてから症状が出る人も。また、重症化すると治まるまでに1年以上かかることもあるため、治療のためになるべく早く医師の診断を受けることが大切です(※3)。
「産後うつになるのは、自分がダメな母親だからだ」と自分を責めてしまう人もいますが、決してそうではありません。ホルモンや環境の変化などが重なると、誰でもなる可能性があります。1人で抱えこまないでくださいね。
産後うつの症状のチェックリスト!

産後うつの主な症状を、下記に挙げています。「産後うつかもしれない…」と感じたら、冷静に自分の行動を振り返って、以下の項目をチェックしてみましょう。
産後うつチェックリスト
□ わけもなくイライラして落ち着かない
□ 気分が落ち込んで涙が出てくる
□ 考えがまとまらず、家事にやたらと時間がかかる
□ 以前は好きだったものを楽しめない
□ 寝つきが悪かったり、逆に眠りすぎたりしてしまう
□ 食欲がない、または逆に食べすぎてしまう
□ 赤ちゃんやパートナーにつらく当たってしまう
□ 何事も自分が悪いと考えてしまう
□ 漠然と不安になる
□ 他人との交流を面倒に感じる
□ 頭痛や動悸、息苦しさ、肩こりなどがひどい
当てはまる項目が多いときは、精神科や心療内科のある病院、地域の保健センターなどで相談してください。まず、1ヶ月健診で産婦人科医に相談するのも一つの方法です。
産後うつは治療が必要なの?

産後うつの症状によっては、きちんとした治療が必要になる場合もあります。症状が長引いたり、明らかに重かったりする場合は、精神科や心療内科でカウンセリングや薬物療法を行うこともあります。
症状が軽ければ、カウンセリングで悩みや不安などの話を聞いてもらうだけで改善されていくこともよくあります。場合によっては抗うつ剤や精神安定剤が処方されるので、医師の指示に従って正しく服用してください。
産後うつ対策は?いつからすればいいの?

産後うつを発症したママたちは、赤ちゃんのお世話や家事に追われ、疲れ切ってしまい、いつの間にかうつになっていた、というケースが多くあります。そのため、産後うつ対策は、できれば妊娠中から始めたいところです。
対策といっても、特別な準備をするのではなく、いざというときに助けてもらえるように、パートナーや親族、友人と関係性を築いておくことが大切です。気軽に頼れる人が近くにいないときも、以下のことを意識してみてくださいね。
完璧にやろうとしない
責任感が強い頑張り屋さんほど、産後うつになりやすい傾向にあります。家事や仕事は完璧にできても、子育ては自分でコントロールできない部分が多く、思ったとおりに行かないもの。
子供は突然泣き叫んだり、思わぬときにおしっこをしてしまったり、ママの想像を超えることもしばしば。完璧にできなくて当然、ということを忘れないでくださいね。
また、赤ちゃんのお世話が中心になり、家事は後回しになってしまうのも仕方のないことです。出産前よりも料理が手抜きになったり、部屋が散らかったりしても、自分を追い詰めすぎず、「完璧にやらなくてもいいんだ」と、肩の力を抜きましょう。
睡眠時間を確保する
睡眠不足になると精神的に不安定になることも多いので、産後うつを防ぐには睡眠時間の確保が不可欠です。
育児に追われていると、「赤ちゃんが寝ている間に家事をしよう」と思ってしまいがちですが、できるだけ赤ちゃんと一緒に寝るようにしましょう。夜は授乳や夜泣きで睡眠時間が細切れになるので、日中もしっかり寝ることが大切ですよ。
パパが仕事で忙しい場合も、休みの日は子供のお世話をしてもらい、ママは長く寝かせてもらうようにするのがおすすめです。
育児本を参考にしすぎない
初めて子育てをするママにとって、育児本は強い味方ですが、赤ちゃんにも個性があり、その成長過程は多様で、育児本と違う状況がたくさん出てきます。
育児本の内容はあくまでも「一般論」と考え、「うちの子はきちんと成長しているかな?」と不安を感じたときは、出産した病院の医師や看護師、地域の保健師に相談するのがおすすめです。乳児健診のときに相談してもいいですね。
本とにらめっこして1人で悩むよりも、たくさんの赤ちゃんを見てきた専門家に相談してみると、少しずつ育児の不安が解消されるかもしれません。
産後うつの症状があっても、考えすぎないで
赤ちゃんが生まれると、親としての責任感が生まれます。子供をしっかりと育てようと思うことは素晴らしいことですが、育児がうまくいかなくても自分を責めたり、完璧にやろうと思い詰めすぎたりしないでくださいね。
赤ちゃんがはじめは1人で歩けないように、ママだって最初からきちんとお世話ができるわけではありません。「赤ちゃんと一緒に成長していこう」と考え、おおらかな気持ちで向き合っていけるといいですね。