出産後、「パパを嫌いになったわけでもないのに、まったく性欲がわかない」というママの声をよく耳にします。そのせいで夫婦関係がギクシャクしてしまったら…と心配になってしまう人もいるかもしれませんね。しかし、産後に性欲が減退するのには、きちんとした理由があります。今回は産後に性欲がなくなる原因と、夫婦関係を維持するための対処法をご説明します。
産後に性欲がないのは普通のこと?
産後に性欲がない、あるいは減ってしまう女性はどのくらいいるのでしょうか。
日本家族計画協会が2015年に行った報告によると、男女およそ900人に対してアンケートを行ったところ、少なくとも過去1ヶ月間にセックスレスの状態にある人は約49%、結婚している人に限定すると約45%の人がセックスレスだそうです。
そして、その理由として「出産後なんとなく」をあげている女性が約17%という結果になっています(※1)。この傾向は、過去の調査でも同じだったため、産後にセックスレスになる女性は常に一定数いると考えられます。
そう考えると、産後に性欲がなくなってしまうことは、珍しいことではないのかもしれませんね。
産後に性欲がなくなる原因は?
産後にまったく性欲がなくなってしまうと、せっかく子供を授かったのに「パパへの愛情が薄れてしまったのかな…」と心配になると思います。しかし、ここには産後ならではの身体的・精神的な原因があるのです。
以下で、その一部をご紹介します。
ホルモンバランスの変化
産後のママの体内では、母乳を出すために必要な「プロラクチン」というホルモンの分泌量が増加します(※2)。実は、このホルモンには性欲を減退させる働きがあるといわれています(※3)。
産後は生まれたばかりの赤ちゃんのお世話に集中できるように、プロラクチンが卵巣の機能を抑制します。これによって排卵が起こらなくなるので、性行為を促す性欲も自然と減退すると考えられています。
寝不足や身体的疲労
出産という大仕事を終えると、ママはすぐに24時間体制で赤ちゃんのお世話が始まります。日中はもちろん夜中でも数時間おきに授乳やおむつ替えなどで起こされるため、産後はいつも寝不足の状態です。
また、赤ちゃんをずっと抱っこするなど体を酷使して疲れきっています。疲れた体を癒やすために、性欲以上に睡眠欲が勝ってしまい、性欲がなくなると考えられます。
パパの育児協力不足
ママが夜間授乳で疲れ切っているのに、パパは家事に非協力的。赤ちゃんが泣いているのに、ママが指摘しないとオムツ替えをしてくれない。ママはずっと赤ちゃんのお世話でお出かけできないのに、パパは毎日飲み歩いている。
このように、パパの育児や家事への協力が不足していると、どうしてもママのパパに対する感情は悪化してしまいます。その結果、性欲がなくなってしまうのは十分考えられることです。
精神的なストレス
思うように子育てができない、育児に対する周囲の無関心、出産前の生活とのギャップなど、産後のママは精神的にも追い詰められ、抑うつ状態に陥ってしまうことがあります。
知らず知らずのうちに精神的なストレスが溜まってしまうと、性欲などの欲求がなくなってしまうこともあります。
性交渉再開への不安
産前のように体が反応してくれるのか、痛くないか、あるいは、性行為の最中に赤ちゃんのことが気になって集中できないのではないか、といった性交渉再開に対する不安があると、性欲がなくなってしまう人もいるようです。
産後に性欲がないのはいつまで続く?
産後の性欲がない期間がいつまで続くかはどうかについては、個人差があるため、一概には言えません。
産後4ヶ月のうちに性行為を再開する人はおよそ54%だという報告があります。しかし一方で、産後3ヶ月で性欲の減退を訴えた女性のうち、産後12ヶ月たっても性欲の減退を訴えていた女性が51%もいた、という報告もあります(※4)。
また、性欲がない原因がプロラクチンの分泌量増加によるものである場合は、赤ちゃんに母乳を与えるのをやめることで、性欲のない期間が短くなるかもしれません。
精神的なストレスが原因の場合は、家族の協力体制が整ったことで、ストレスの解消とともに性欲の減退もおさまるかもしれません。
このようにいつまで続くかどうかに関しては、原因によるとこともあるでしょう。
産後に性欲がないときの対処法は?
産後は、性欲がなくなるものだと割り切ることが大切です。精神的・身体的な理由があるなかで、無理をすると心にも体にも負担がかかってしまいます。
ただし、パパのほうは妊娠前と変わらず性欲があることが多いため、2人の間で夫婦生活の考え方に溝ができてしまうこともあります。そのため、産後の夫婦生活について、一度2人でしっかりと話し合っておきましょう。
その際、女性は産後に性欲がなくなるという事実がわからないパパに対して、「察してほしい」と期待するのではなく、きちんと理由を説明して、できるだけ理解してもらうようにしたいですね。
夫婦生活を営むことが難しくても、パパの気持ちも考慮して、普段から積極的に会話やスキンシップをとるように心がけましょう。
産後に性欲がないときは夫婦でよく話し合おう
産後に性欲が減退するのは自然なことではありますが、だからといってお互いに何の歩み寄りもせずにいると、気持ちのすれ違いが生じてしまいかねません。最悪の場合、産後クライシスを迎えてしまうこともあります。
そうならないためにも、どちらか一方が我慢するのではなく、きちんと話し合ってこれからの夫婦生活をどうしていくのかを決めることが大切ですよ。
どのような形がよいのかは、夫婦それぞれで違うので、自分たちらしい良い関係性を築きあげてくださいね。