「黄体化未破裂卵胞症候群」は、排卵していないのに排卵しているように見えることがあるため、妊娠を希望するカップルは注意が必要です。今回は、黄体化未破裂卵胞とは何なのか、妊娠しにくくなるのか、黄体化未破裂卵胞症候群が疑われる3つの条件などについてご説明します。
黄体化未破裂卵胞とは?
黄体化未破裂卵胞とは、排卵が起きないまま黄体になってしまった卵胞のことです(※1)。
通常、卵子のもとになる卵胞は卵巣内で発育し、成熟すると卵巣の表面で破裂して、一部が卵子として卵巣の外へ排出されます。これが排卵です。排卵後、卵巣に残った卵胞の一部は黄体となり、プロゲステロンなどのホルモンを分泌するようになります(※2)。
ところが、何らかの理由で成熟した卵胞が排卵をせず、そのまま黄体化してしまうことがあります。この卵胞を黄体化未破裂卵胞といい、これが生じる状態を黄体化未破裂卵胞症候群と呼びます。
一般的に、排卵が起きるとプロゲステロンの作用によって基礎体温に高温期が現れますが、黄体化未破裂卵胞もプロゲステロンを分泌するため、高温期が現れます(※1)。そのため、排卵が起きていないのに、まるで排卵が起きたかのように見えるかもしれません。
なお、黄体化未破裂卵胞が生じることは特別なことではなく、誰にでも時折起きていると考えられています。
黄体化未破裂卵胞症候群の原因は?
黄体化未破裂卵胞症候群の原因はまだよくわかっていませんが、可能性としては次のようなことが考えられています。
● 卵巣の表面が繊維性組織に覆われたり、周囲と癒着してしまったりして排卵ができないため
● 排卵に関与するプロスタグランジンというホルモンの産生が低下するため
また、黄体化未破裂卵胞症候群は子宮内膜症や卵巣の周りで炎症が起きている女性に多いため、卵巣の癒着との関連が示唆されています(※3)。
黄体化未破裂卵胞症候群は妊娠しにくい?
黄体化未破裂卵胞症候群は不妊症と関係があると考えられています。
不妊症のカップルのうち10〜20%は、機能性不妊といって、検査を行ってもその原因を特定できない不妊症です。しかし、まったく原因がないとは考えづらく、従来の不妊症検査では原因を見つけにくいだけで、何らかの病気や障害が存在しているとされています。
機能性不妊の原因となる病気や障害はいくつか考えられていますが、その一つに黄体化未破裂卵胞症候群が含まれています(※3)。
黄体化未破裂卵胞症候群が疑われる3つの条件は?
黄体化未破裂卵胞症候群が疑われるのは以下の3つの条件を満たしたときです。
● 基礎体温に高温期と低温期がある
● 生理がある
● 排卵検査薬などを使っても排卵が確認できない
ただし、この条件を満たしても、あくまで「黄体化未破裂卵胞症候群の可能性がある」という状態です。正確に診断するには、病院へ行って超音波検査を受け、卵胞の未破裂と黄体が存在しているかどうかを確認する必要があります(※3)。
黄体化未破裂卵胞症候群の治療法は?
黄体化未破裂卵胞は毎回起きるわけではないため、一度起きたからといって必ずしも治療を行わなければいけないわけではありません。ただし、実際に不妊の治療を行うときには、以下のような方法で行います(※3)。
排卵誘発法
hMGやhCGなどのホルモンを使った排卵誘発が黄体化未破裂卵胞症候群に効くことがあります。
人工授精
排卵誘発法と一緒に人工授精を行うと、排卵誘発法だけのときよりも数倍妊娠しやすくなるといわれています。
体外受精
排卵誘発法と人工授精でも妊娠できなかった場合、体外受精などの生殖補助医療が行われます。ただし、患者への身体的・社会的負担も増えるため、行うかどうかは慎重に検討する必要があります。
黄体化未破裂卵胞の他に機能性不妊の原因はある?
機能性不妊の原因として考えられる病気や異常は、黄体化未破裂卵胞症候群だけではありません。ここでは、その一例をご紹介します。
なお、これらの病気が不妊症の原因であると診断するには、従来の不妊症検査だけでなく、ホルモンや免疫的な観点での詳細な検査をする必要があります(※3)。
黄体機能不全
排卵はあるけれど、プロゲステロンの産生量が減ってしまったり、あるいは産生される期間が短くなってしまった状態を黄体機能不全といいます。排卵はするものの、着床障害が起きるので妊娠しづらくなってしまいます。
潜在性高プロラクチン血症
潜在性高プロラクチン血症は排卵障害を引き起こすため、妊娠しづらくなってしまいます。その原因は様々ですが、脳の視床下部というところから分泌されるべきホルモンの分泌量が減ってしまったり、卵胞の発育に関係するホルモンが分泌されなくなったりすることで起こります。
黄体化未破裂卵胞の疑いが続くようなら病院で検査を
なぜ黄体化未破裂卵胞ができるのかはよくわかっていませんが、一部の不妊症の原因だと考えられています。ただし、自分では黄体化未破裂卵胞症候群かどうかを確かめられないため、疑いがある場合は病院で検査してもらった方がいいでしょう。
仮に黄体化未破裂卵胞症候群だったとしても悲観しすぎる必要はありません。毎回起きていると決めつけることはできませんし、治療法もあります。また、早く発見できればそれだけ治療が早く始められます。
不妊は夫婦だけで悩んでいても解決しないことが多くあります。病院で検査を受けて原因がわかり、治療に向かっていけるといいですね。