妊娠すると、ママの体には様々な変化が起こりますが、胎盤が作られるのもそのうちの一つ。胎盤は、妊娠してはじめて作られる特殊な臓器なんですよ。今回は、胎盤の役割や重さなどの基本的な情報のほか、赤ちゃんに影響を与える胎盤異常についてもご説明します。
赤ちゃんができるまでの過程は?
まずは赤ちゃんができるまでの過程をおさらいしましょう。
女性の体内で排卵が起こり、男性の精子と受精すると、受精卵ができます。この受精卵が女性の子宮内膜に着床すると、妊娠が成立します。
受精卵が細胞分裂を繰り返したあと、人間の形へと成長していくのと並行して、ママの子宮内では赤ちゃんの成長に必要な環境が作られていきます。
胎盤とは?完成はいつ頃?
「胎盤」は、妊娠することによって作られ、お腹の赤ちゃんが元気に育つために大切な役割を果たす臓器です。
妊娠7週頃から作られはじめ、安定期直前の妊娠15週(妊娠4ヶ月末)までに機能が完成します(※1)。
そのあと、妊娠10ヶ月頃まで大きくなり続け、赤ちゃんが生まれたあとは胎盤もママの体外に排出されます。これがいわゆる「後産」です。
胎盤の役割は?
赤ちゃんとママは、胎盤についている「絨毛(じゅうもう)」を通じて様々な物質のやり取りをします。
赤ちゃんは、胎盤を通じてママから栄養をもらい、老廃物を出します。また、二酸化炭素を排出し、ママの体から酸素を取り入れます。
ママが妊娠を維持したり、赤ちゃんが成長したりするために必要なホルモンも胎盤で作られます。
このように胎盤は、呼吸や消化、排泄など、ママのお腹のなかで赤ちゃんが順調に育つための機能を担う臓器なのです。
なお、妊娠中にお酒を飲むと、アルコール成分が胎盤を通過して赤ちゃんに悪影響を与えると考えられているので、禁酒するようにしましょう。
胎盤の大きさや重さの目安は?
胎嚢や胎芽とは異なり、妊婦健診のエコーで胎盤の様子を見ることはないため、どのくらいの大きさになるのか気になる人もいるかもしれません。
胎盤は妊娠15週頃までに完成し、出産直前には重さ約500g(胎児の体重の約6分の1)になります。
ちなみに、出産を迎えるまでに胎児、胎盤、羊水、血液、子宮・乳房の重さが増加するうえに、脂肪や水分が蓄積するため、最終的に妊婦さんの体重は約8~10kg増加するのが一般的です(※1)。
胎盤の状態は胎児に影響するの?
何らかの原因で、胎盤の機能が下がると「胎盤機能不全」になることがあります。
先述のとおり、胎盤は赤ちゃんの成長にとって大切な役割を果たしているので、胎盤機能不全が起きると、赤ちゃんに酸素や栄養が行かなくなってしまい、赤ちゃんの成長に影響が出てしまうことがあります。
胎盤機能不全は、胎盤や臍帯の異常や、妊娠高血圧症候群の合併、妊娠42週を過ぎても赤ちゃんが生まれない場合などに起こりやすいとされています(※1)。
妊娠高血圧症候群は、妊婦さんのうち10%弱に見られる合併症で、高血圧による頭痛や蛋白尿、手足のむくみなどの症状が見られます。
原因はよくわかっていませんが、もともと肥満や高血圧であったり、糖尿病などの病気を持っていたりすると、妊娠高血圧症候群になるリスクが高いことがわかっています(※1)。
胎盤を産後に食べることもあるの?
赤ちゃんを出産して役割を終えると、胎盤はお腹から取り出されますが、この胎盤を産後に食べる「胎盤食」について聞いたことはありますか?
胎盤は赤ちゃんに栄養を送る器官なので、栄養価が高く、産後の回復や美肌・健康などに効果があるのではないか、と考える人もいますが、実際のところどれだけ健康上のメリットがあるかは明らかになっていません。
この胎盤のことを「プラセンタ」と呼び、生食や加熱調理、乾燥させたりするほか、海外ではカプセルやスムージーで摂取する例もあります。
ただし日本では、感染症のリスクもあることから、胎盤は感染性廃棄物として医療機関で処理されることになっています(※3)。
胎盤が完成したら、安定期へ突入
胎盤が完成する妊娠16週からは、いわゆる安定期に入ります。流産の確率もぐっと下がり、体調が落ち着いてきますが、お腹が大きくなってくる時期なので、あまり無理はしないでくださいね。
安定期に入ってからも、胎盤にトラブルが起きる可能性はゼロではありません。たとえば、胎盤が正常よりも低い位置にある「前置胎盤」の場合、安定期以降に大量出血を起こすこともあるため、注意が必要です。
あまり心配しすぎるのも良くありませんが、もし急にお腹が痛くなったり、出血が見られたりしたら、すぐにかかりつけの産婦人科を受診するようにしてくださいね。