妊娠・出産にかかわる子宮のしくみは、とても神秘的なもの。たとえば、生理周期にあわせて子宮口の位置や状態が変化するので、子宮口の変化で排卵日を予測することもできます。自分の子宮口の変化と生理周期の関係を知ることで、妊活に役立つこともありますよ。今回は、生理前に子宮口の位置が下がる理由や、子宮口の状態の変化についてご説明します。
生理前の子宮口の位置は下がる?降りてくる理由は?
女性の腟の突き当たりにあるのが、子宮への入り口となる「子宮口」です。生理の経血も、ここから出てきます。
この子宮口は、通常は指ではなかなか触れられない位置にあるのですが、排卵日が近づくと、下のほうに降りてきて、指で比較的簡単に触れられるようになります。
生理前に子宮口の位置が下がる理由は、はっきりと分かっていませんが、精子が入ってきたときに子宮内に入りやすくする、あるいは生理時にはがれ落ちた子宮内膜や血液を体外に排出しやすくするためではないかといわれています。
子宮口は生理周期に合わせて下がるの?
生理前に子宮口の位置が下がる、というのは一例で、生理周期にあわせて、子宮口の位置や状態は下記のように変化をしています。
1. 生理が終わった直後
生理が終わるのにあわせて、子宮口の位置は腟から指を入れても届かないところまで上がっていきます。状態もやや硬くなります。
子宮口の周りのおりものは、サラサラとした粘り気のない状態になります。
2. 排卵1週間前~排卵日付近
排卵の1週間程前になると、子宮口は、指を入れると届くくらいの位置まで下がってきます。状態はやわらかくなって、開いてきます。
子宮口の周りのおりものは、透明な卵白状になり、一気に量が増えます。
3. 排卵後~生理前
排卵後から生理前にかけても、子宮口は下がったままです。子宮口自体もやわらかくなり、少し開いた状態になります。
子宮口の周りのおりものは、排卵後は減少し、生理が近づくとまた増えだします。
4. 生理開始~生理終了
生理が始まる頃になると、子宮口は、指が簡単に届くところまで下がってきています。子宮内のものを出しやすくするために子宮口はやわらかく、少し開いた状態が維持されています。
生理前に子宮口が降りてこないと妊娠の可能性もある?
生理前の子宮口の位置や状態は、妊娠したかどうかでも異なります。
妊娠していなければ、子宮口は指で触れられるほど下がった位置にあり、やわらかいままの状態で、生理を迎えます。しかし、妊娠すると子宮口の位置は上がり、子宮口の状態も赤ちゃんを守るために硬く閉じていきます。
ただし、子宮口の状態には個人差があるものなので、正確に妊娠の有無が判断できるわけではありません。妊娠しているかどうかは、市販の妊娠検査薬で確認するようにしてくださいね。
子宮口が下がると排卵日がわかる?
妊活をしていて、「福さん式」と呼ばれる排卵日の予測方法を耳にしたことがある人もいるかもしれません。これは、元助産師の「福さん」がインターネット上で公開したもので、妊娠を希望している人の間ではよく知られています。
福さん式は、自分で子宮口を触診し、位置や状態、おりものなどから、妊娠しやすいタイミングを判断するという方法です。先にご説明したとおり、子宮口がゆるく開いて、下の方まで下がってきていたら、排卵日が近づいていると判断します。
ただし、子宮口の状態には個人差があるものですし、清潔にしておかないと細菌に感染してしまう恐れなどもあるので、注意が必要です。
福さん式について、詳しくは下記の関連記事でご確認ください。
生理前以外に子宮口が降りてくるときは病気の可能性?
生理前以外の時期に子宮口が下がってきたり、生理前でも子宮口が下がりすぎているときは、「子宮下垂」の恐れもあります。
正確に言うと、子宮下垂は、子宮が腟のなかに落ち込んでしまった状態です。
出産によって、骨盤を支える靭帯にダメージを受けることや、閉経後のホルモンバランスの変化で、靭帯が弛緩することなどが原因で、経産婦さんや、高齢の女性に起こりやすいものです(※1)。
最初は自覚症状がありませんが、下垂が進むと、腟や下腹部に違和感を覚えるようになり、痛みを伴うことがあります。
命にかかわる病気ではありませんが、排尿や排便が難しくなったり、痛くて歩けなくなったりと、日常生活に支障をきたしてしまうことがあるので、早めに治療を行うことが大切です。
子宮口が下がってきていて違和感があるようなときは、一度婦人科を受診した方がいいでしょう。
生理前に子宮口が下がるのは参考程度に
子宮口の位置や状態の変化で、排卵日や生理が近くなっていることがある程度はわかりますが、個人差があるもので、正確に判断することはできません。あくまでも参考程度に考えてくださいね。
また、子宮口が下がってきすぎると病気の可能性もあります。違和感があるようなときは、「排卵日が近いから」と軽く考えすぎず、病院を受診することが大切ですよ。