排卵誘発剤とは?注射で不妊治療をするの?費用や種類、妊娠率は?

監修医師 産婦人科医 藤東 淳也
藤東 淳也 日本産科婦人科学会専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医、がん治療認定医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医で、現在は藤東クリニック院長... 監修記事一覧へ

不妊治療は一般的に、妊娠しやすいように排卵日を調べて性交に取り組むタイミング法から始まりますが、その次のステップとして「排卵誘発剤」の使用を医師から提案されるケースが多くあります。排卵誘発剤には、飲み薬や注射薬など様々な種類がありますが、どのような違いがあるのでしょうか?今回は、排卵誘発剤の種類や費用、妊娠の確率などをご説明します。

排卵誘発剤とは?

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排卵誘発剤は、その名のとおり、排卵を促すための薬です。

不妊の原因として、生理は来るものの排卵が起こらない「無排卵周期症(無排卵月経)」や、生理がない「無月経」、卵胞の発育を妨げる「黄体機能不全」など、排卵障害があると考えられる場合に排卵誘発剤が使われます。

また、タイミング法でなかなか妊娠ができず、その原因がはっきりしない場合や、体外受精や顕微授精のために採卵する卵子の数を増やす目的などでも排卵誘発剤を使うことがあります。

後述のとおり、排卵誘発剤には様々な種類があります。自分の症状や目的に合わせて、医師から処方されたとおりに使うことが大切です。

排卵誘発剤の種類は?注射薬もあるの?

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排卵誘発剤には、内服薬(飲み薬)と注射薬があります。以下、婦人科でよく処方される排卵誘発剤をご紹介します。

内服薬(飲み薬)

クロミッド(成分:クロミフェン)

クロミッドは、比較的軽い排卵障害があるときや、排卵のリズムが不安定で性交のタイミングを取りづらいときなどに処方される、スタンダードな排卵誘発剤です。

通常、生理(月経)の5日目から1日1錠、5日間内服します。

クロミッドの成分であるクロミフェンは、脳の視床下部や脳下垂体に作用して「FSH(卵胞刺激ホルモン)」と「LH(黄体刺激ホルモン)」の分泌を促します。この2つのホルモンが分泌されることで卵胞が成熟し、排卵が促されます。

セキソビット(成分:シクロフェニル)

セキソビットは、生理がこない「無月経」や、生理周期が長い「稀発月経」などの排卵障害に対して改善効果を発揮します。

通常、生理(月経)の5日目から1日1錠、5日間内服します。

セキソビットも、FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体刺激ホルモン)の分泌を促して排卵を誘発する薬ですが、クロミッドに比べると効果は少し弱くなります。

そのぶん副作用も少ないため、排卵障害が比較的軽いときや不妊治療の初期段階で使われることが多くあります。

テルグリド(成分:テルグリド)

排卵を抑制する「プロラクチン」というホルモンの数値が高すぎて、排卵・妊娠しにくくなっている場合、プロラクチンの分泌を抑えるためにテルグリドという内服薬が使用されます。

テルグリドは、基本的には1日2錠、毎日続けて飲む薬ですが、症状に応じて量を減らすこともあります。

注射薬

hMG製剤・FSH製剤

hMG製剤とFSH製剤は、FSH(卵胞刺激ホルモン)と同じ作用を持つ注射薬で、卵胞を発育させる作用があります。通常、生理開始の3日目から数日間にわたって注射します。

hMG製剤やFSH製剤だけで使用されることもありますが、クロミッドの効果をより高める目的で補助的に使われることもあります。

hCG製剤

クロミッドやhMG注射で卵胞を発育させたあとは、卵胞が成熟した段階でLH(黄体刺激ホルモン)の作用が必要となります。そこで使われるのが、LH作用を持つhCG製剤です。

一般的に、生理が始まった日を1日目として、3~5日目からクロミッドやhMGを投与したあと、10~14日目にhCG製剤を注射し、排卵を促します。

排卵誘発剤の排卵率・妊娠率は?

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排卵誘発剤を使った場合の排卵率と妊娠率は、薬の種類やその人の年齢、症状などによっても異なります。

たとえば、クロミッドによる「クロミフェン療法」の排卵率は、無月経の場合は60~70%、無排卵月経の場合は約80~90%で、最終的な妊娠率は25~30%とされています(※1,2)。

hMG注射またはFSH注射と、hCG注射を併用する「ゴナドトロピン療法」の場合、排卵率は70~80%、妊娠率に至る確率は30~40%ほどです(※1)。

単純に数字を比較すると、ゴナドトロピン療法の方が妊娠率が高くて良い治療法なのでは、と思う人もいるかもしれませんが、そのぶん流産率も高く、後述のとおり副作用も現れやすいため、その人の状況にあった適切な排卵誘発剤を選ぶ必要があります(※1)。

排卵誘発剤の副作用は?

リスク

排卵誘発剤は薬の力で排卵を促すため、使用後に副作用が現れることもあります。

たとえば、クロミッドによるクロミフェン療法の場合、子宮頸管粘液の分泌が少なくなったり、子宮内膜の発育が悪くなったりすることがあります(※1)。そのため、何ヶ月かクロミッドを使用しても妊娠しない場合は、ゴナドトロピン療法などに切り替えます。

一方、ゴナドトロピン療法の場合、双子や三つ子で生まれてくる「多胎妊娠」や、薬の影響で卵巣が腫れてしまう「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」などが起きるリスクが高くなります(※1)。

特に卵巣過剰刺激症候群は、hCG注射で排卵誘発を行った場合、20~30%の確率で発症するといわれているため、治療中は慎重に経過を見る必要があります(※1)。

排卵誘発剤を処方されたときには、起こりうる副作用について必ず医師に確認し、薬の使用中に何らかの症状が現れたときも、すぐ医師に相談するようにしましょう。

排卵誘発剤の費用は?保険は適用される?

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排卵誘発剤の使用にかかる費用は、薬の種類や使用目的によっても異なります。基本的には健康保険の適用対象となり、自己負担額は3割で済みますが、場合によっては一部自由診療となり、自己負担額が高くなるケースもあります。

クロミッドなどの飲み薬は、ほとんどのケースで健康保険の適用対象となります。そのため比較的費用が安く、1ヶ月(5日分)あたりの自己負担額は500円程度です。

注射薬の場合、「注射をしないと排卵に至らない」という場合には保険適用で、「採卵のために意図的に卵子を増やしたい」という場合は保険適用外になるなど、ケースによります。保険適用の場合、1回あたり約1,000~1,500円ほどです。

飲み薬も注射薬も、初診料や再診料、事前の検査費用などがプラスでかかることもあります。

また、治療の内容によっては、数日間にわたって通院し、毎日注射をする必要がある場合もあり、そのぶん費用もかさみます。

それに加えて、排卵誘発剤は保険適用の回数に制限があるため、その回数を超えたぶんについては自己負担となります。

治療を始める前に、目安としてどのくらいの費用がかかるのか医師に確認したうえで、不妊治療にかける予算などを検討しましょう。

排卵誘発剤の種類はさまざま

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排卵誘発剤には様々な種類があり、それぞれ効果や副作用、適切な使い方などが異なります。まずは婦人科で検査を受け、自分の症状や体質に合った薬を処方してもらいましょう。

排卵誘発剤を使ううえでわからないことがあれば、かかりつけの産婦人科医に相談し、不安を解消したうえで治療に取り組んでくださいね。

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