私たちの食生活に欠かせない魚。季節によって美味しい魚がたくさんありますよね。妊娠中は食べるものに気をつかうため、「どの魚を食べたらいいのだろう?」と悩んでしまうことも。今回は、妊娠中は魚を食べてもいいのか、妊娠中に注意しなければいけない魚、妊婦が魚を食べるときのポイントについてご紹介します。
そもそも妊婦は魚を食べてもいいの?
妊娠中は、種類と摂取量にさえ注意すれば、魚を食べても問題はありません。魚には、妊娠中の体に嬉しい栄養素が多く含まれています。
魚に含まれる主な栄養素とその働き
DHA(ドコサヘキサエン酸)
DHAは、多価不飽和脂肪酸のオメガ3脂肪酸に分類され、マグロやイワシなどの魚油に多く含まれています。血流を改善する効果があり、高血圧、脳梗塞、心筋梗塞といった生活習慣病の予防が期待できます(※1)。
妊娠中にDHAなどのオメガ3脂肪酸を適切に摂取することで、早産予防につながる、という結果が報告されています(※2)。また、乳幼児の脳の発達や心筋発達、視力向上に不可欠な栄養素です。
たんぱく質
たんぱく質は、体を形成する主成分で、胎児の血液や筋肉をつくるためにも重要な栄養素。産後の体の回復を助けるためにも、たんぱく質は欠かせないので、妊娠初期から出産後まで、十分に摂取したいですね。
カルシウム
赤ちゃんの骨や歯をつくるカルシウムは、妊娠中にしっかり摂りたい栄養素です。
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、成人女性の1日あたりのカルシウム推奨量は650mgです(※3)。妊娠中も推奨量は変わりませんが、不足しがちな栄養素なので、妊娠中は積極的に摂取しましょう。
妊娠中に注意が必要な魚はあるの?
このように、妊娠中も積極的に食べたい魚ですが、魚の種類によっては、「メチル水銀」という有害物質が含まれていることがあります。妊娠中にメチル水銀を多量に摂取すると、胎児の発育に悪影響を及ぼすリスクがあります(※4)。
メチル水銀が含まれている可能性がある魚は、食物連鎖の上位に位置する大きな魚です。厚生労働省は妊婦さん向けに、水銀含有量の観点から「注意が必要な魚」を以下のように紹介しています(※4)。
妊娠中に注意が必要な魚
キンメダイ、メカジキ、マカジキ、クロマグロ(本マグロ)、メバチマグロ、ミナミマグロ(インドマグロ)、マバチ、ユメカサゴ、キダイ、マッコウクジラなど。
ただし、これらの魚を一切食べてはいけないというわけではありません。種類によって1週間の上限摂取量が決まっているため、下記の量を守ってください。
注意が必要な魚の1週間あたりの上限摂取量
- クロマグロ(本マグロ)…約80gまで
- メバチマグロ…約80gまで
- ミナミマグロ(インドマグロ)…約160gまで
- キンメダイ…約80gまで
- メカジキ…約80gまで
- マカジキ…約160gまで
80gは、日本人が1食に食べる魚の平均量で、切り身1切れ、または刺身1人前にあたります。週に一度、クロマグロを1人前食べるのであれば問題はありません。
ただし、クロマグロ1人前を食べた週は、メチル水銀を多く含む他の魚を食べないようにしましょう。たとえば、クロマグロとメカジキを食べるときは、1週間にそれぞれ半人前(約40g)ずつにする、といったように、魚の種類や組み合わせによって調整してください。
妊婦におすすめの魚は?さんまやブリは食べてもいいの?
水銀含有量が少ない魚であれば、妊娠中に食べても問題はありません。厚生労働省は、水銀含有量からみて、妊娠中でも特に注意が必要ない魚として、以下をあげています(※4)。
妊娠中に食べても問題のない魚
キハダマグロ、ビンナガマグロ、メジマグロ、サケ、アジ、サバ、イワシ、サンマ、タイ、ブリ、カツオ、ツナ缶など。
米食品医薬品局は、妊娠中は水銀含有量が少ない魚介類を1週間に340gまで食べてもいいと発表しています(※5)。しかしこの数値はアメリカ人の体格向けに作られているので、これより少なめの摂取量を目指すようにしましょう。
また、青魚に多く含まれるDHAおよびEPAの摂取目標量(下限)は、1日あたり1gと設定されています(※6)。DHAおよびEPAを1g摂取するには、サンマの塩焼きで0.4尾分、アジの開きで0.7枚分、ブリ(ハマチ)の刺身で4.7切分にあたります。1日1回は、この量の魚を食べるように意識していきたいですね。
妊娠中に魚を食べるときの注意点は?
前述の通り、水銀含有量が少ない魚であれば、妊娠中に食べても問題はありません。ただし、寿司や刺身といった生の魚を食べるときは、注意が必要です。
生の魚介類には、食中毒を引き起こすリスク、腸炎ビブリオ、ノロウイルスといった細菌が生息していることがあります(※7)。
妊娠中は免疫力が低下しやすく、食中毒にかかるリスクが高くなります。妊娠中に食中毒になると、飲める薬が限られてしまうだけでなく、嘔吐や下痢などの症状によって胎児の発育に影響が出てしまう可能性があります。
厚生労働省は、リステリア菌による食中毒について、胎盤や胎児への感染、流産、生まれてきた赤ちゃんへの影響のリスクを指摘しています(※8)。
妊娠中に生の魚介類を食べるときは、信頼できる店で鮮度が良いものを選びましょう。自宅で食べるときは、保存状態にも気をつけてくださいね。
妊娠中に魚を食べるときは種類や量に注意
妊娠中に気をつけたい魚があると聞くと、心配になってしまうかもしれませんが、食べられる魚はたくさんあります。妊娠をきっかけに、魚に含まれる水銀量や生で食べるときの注意点などを知っておくと、出産後にも役に立ちますよ。
魚は、離乳食や幼児食にも活躍する食材です。旬の魚を上手に取り入れて、家族でおいしく食べられるといいですね。