妊娠中は食事制限が多く「たまには美味しいものを食べたい!」と、ちょっと贅沢をしてローストビーフを食べようと思う妊婦さんがいるかもしれません。妊娠前は普通に食べていたけれど、妊娠中に食べてもいいのか気になりますよね。そこで今回は、妊娠中にローストビーフを食べてもいいのか、食べたいときに気をつけることについてご説明します。
妊婦はローストビーフを食べてもいいの?
結論から言うと、妊娠中はローストビーフを食べないようにしましょう。
なぜならローストビーフには、「トキソプラズマ」という胎児に危険を及ぼす可能性のある寄生虫がいないとは言い切れないからです。
トキソプラズマとは?
トキソプラズマとは、牛や豚、鶏、羊といった動物の生肉や猫のフン、庭の土などの中にいる寄生虫のことです。健康な大人がトキソプラズマに感染しても、軽い風邪のような症状が出るだけですぐに治りますが、妊婦さんが感染した場合、胎盤を通じて胎児に感染し、胎児が先天性トキソプラズマ症を発症する可能性があります(※1)。
胎児が先天性トキソプラズマ症になると、水頭症や視力障害、精神運動機能障害などがみられることがあるため、妊娠中は注意が必要です。
トキソプラズマの胎内感染率は?
トキソプラズマは体内に抗体があれば感染しませんが、抗体を持っている妊婦さんは都市部では5〜10%程度です(※2)。
抗体を持っていない妊婦さんがトキソプラズマに感染すると、前述のとおり胎児にも感染する可能性があります。
胎内感染率は、妊娠の時期によって異なります。妊娠初期は、胎内感染率は17%と低いものの感染すると重症化することが多く、妊娠末期の場合は、胎内感染率が65%と高いものの胎児への影響は小さいというデータがあります(※2)。
ローストビーフは危険?
トキソプラズマは、肉の中心温度が67℃以上になるまで加熱することで威力がなくなります(※1)。ローストビーフの中心温度はだいたい60℃前後であることが多いので、中心部がピンク色の柔らかいローストビーフを食べてトキソプラズマに感染するリスクはゼロとは言い切れません。
リスクを避けるためにも、妊娠中にローストビーフを食べるのは控えたほうが良いでしょう。
妊娠中にローストビーフを食べてしまった場合の対処法は?
ローストビーフからトキソプラズマを摂取して妊婦さんが感染した場合、筋肉痛が2、3日間続いたり、インフルエンザのような症状が出たりすることがありますが、先述のようにほとんど症状がないことも多いため、なかなか感染していることに気づかない人が多いようです。
また、症状が出るとしても、最短で10日〜数週間の潜伏期間があります。
妊娠中にローストビーフを食べてしまい、トキソプラズマの感染が疑われる場合は、血液検査でトキソプラズマ抗体の有無を調べて胎児への感染リスクを検査することが可能です。
病院でトキソプラズマに感染していると判断された場合、「アセチルスピラマイシン」を投与することでお腹の中の赤ちゃんの障害を減らすことができたという報告もあるので(※2)、ローストビーフを食べてしまったら、病院で検査を受けることをおすすめします。
妊婦がローストビーフを食べたいときはどうする?手作りは?
妊娠中でもどうしてもローストビーフが食べたい、ということがあるかもしれませんが、飲食店で提供されるものや市販のものは、中まで完全に火が通っているかは分からないので、トキソプラズマに感染するリスクをなくすという意味でやはり食べるのを控えた方が良いでしょう。
「家で手作りすれば大丈夫」と思うかもしれませんが、妊婦さんが生肉を扱うと、それだけでトキソプラズマに感染する可能性があります。生肉は、できればパートナーや家族に調理してもらってください。もし自分で調理する場合は、必ずゴム手袋を使用しましょう(※3)。
また、肉の中心部からピンク色の部分が完全になくなって、肉汁が出なくなるまで火を通してから食べてください(※3)。
ほんのり赤くて柔らかいローストビーフを食べたいかもしれませんが、産後の楽しみにとっておきましょう。
妊娠中はローストビーフに注意!
妊娠中は、ママとお腹の中の赤ちゃんの健康を第一に考えて、ローストビーフを食べるのは控えた方が安心です。妊婦さんは食べ物の制限が多くて大変かもしれませが、生まれてくる赤ちゃんが病気になるリスクを少しでも減らせるように、妊娠中は他の食品で食事を楽しみましょう。
もし妊娠中にローストビーフを食べてしまい、感染したのではないかと不安に思う場合は、早めに病院を受診して検査を受けてくださいね。