出産という大仕事を乗り越えた後は、穏やかに過ごしたいものですが、さまざまな体調不良に悩まされることがあります。なかでも、頭痛に悩まされるママは多く、出産を機に偏頭痛が出始めることがあります。また、もともと偏頭痛持ちで、妊娠中は改善されたのに、産後にまた痛み出すことも。今回は産後の頭痛について、原因と対処法をご紹介します。
産後の頭痛にはどんな種類がある?
ひとことに「頭痛」と言っても、その原因や症状は様々です。産後に起こりやすい頭痛としては「偏頭痛(片頭痛)」「緊張型頭痛」「二次性頭痛」があります。
偏頭痛は、こみかめや目の周辺がズキズキ痛み、一度起きると、4~72時間ほど続き、吐き気や嘔吐を伴うことが多いという特徴があり、日常生活が困難なほど辛いこともあります(※1)。
緊張型頭痛は、後頭部から首筋にかけて頭全体にしめつけられるような痛みが起き、短いと30分ほどでおさまりますが、長いと7日ほど続きます(※1)。気持ち悪さや嘔吐は伴わず、寝込んでしまうほど頭痛がひどくなることはありません。
二次性頭痛は、何らかの病気が原因で起こるものです。とはいえ、偏頭痛と緊張型頭痛の両方の症状を持つ場合、緊張型頭痛の症状だが実は二次性頭痛である場合など、複雑な要因が絡み合っているのが実情です。
産後に頭痛が起きやすい原因は?
頭痛は様々な要因によって引き起こされるため、原因を特定することは難しいもの。しかし産後の頭痛が起きる原因としては、以下のようなものが考えられます。
肩こりや骨盤の歪み
赤ちゃんを抱っこし続けるのは、かなりの重労働です。授乳も、腕や肩に負担がかかり、血液の循環が悪くなるため、肩こりになり、偏頭痛や緊張型頭痛を引き起こします。
また骨盤の歪みも頭痛の原因になり得ます。出産時に緩んだ骨盤が歪んでしまうと、上半身や頚椎にまで影響し、血液の流れが悪くなります。そうすると、頭痛が起こることがあります。
睡眠不足
赤ちゃんのお世話はいろいろと手がかかり、睡眠時間が十分にとれないというのはよくあること。体に疲労が蓄積していくと、体調不良を引き起こします。特に夜泣きが激しい時期は、睡眠不足により疲労が溜まり、頭痛が起こりやすくなります。
ストレスやホルモンバランスの変化
慣れない育児に不安を感じ、精神的に疲れてしまうことがあります。育児や家事による身体的な疲れもストレスを増長し、頭痛を引き起こします。これには、出産によってホルモンバランスが変化していることも関係しているといわれています。
頭痛だけでなく、眠れなくなったり、食欲がなくなったり、怒りっぽくなったりすることもあります。
授乳による水分不足
母乳育児中は、水分が不足しがちです。体内の水分が不足すると、代謝や血流が悪くなり、頭痛を引き起こす恐れがあります。特に夏場は、水分不足になりやすいので注意が必要です。
貧血
出産時に大量に出血するため、また、授乳を通してママの鉄分が赤ちゃんに送られるため、産後は貧血になりやすい状態です。貧血になると、頭痛だけではなく、めまいが生じることも。
産後の頭痛はどう対処すればいいの?
頭痛以外に症状がなければ、何かの病気を心配する必要はほぼありません。頭痛を和らげるためには、以下のような方法を試してみてください。
冷やす
偏頭痛の症状があるときは、首の後ろを濡れたタオルで冷やすことで、血管の収縮を促せます。温めると痛みがひどくなることがあるので、入浴は避け、代わりにシャワーを浴びるようにするといいですよ。
温める
緊張型頭痛の症状があるときは、後頭部や首、肩に温めたタオルをのせると、血行が良くなり、症状が改善できることがあります。リラックスもできておすすめですよ。
安静にする
脳の活動を安静にすることにより、血管収縮が起きやすくなるので、暗くて静かな部屋で体を休めましょう。アイマスクや耳栓で外的刺激を減らすと、なお良いでしょう。
適度な運動をする
体を軽く動かすことで、血液の循環が良くなります。首・肩・腕をゆっくり大きく回すなど、簡単なストレッチをしてみてください。
産後すぐの無理は禁物なので、あくまで疲れない程度で体を動かすように心がけましょう。産後1ヶ月を過ぎたら、骨盤スクワットが自宅で手軽にできておすすめです。
骨盤の歪みを矯正する
緊張型頭痛の原因が骨盤の歪みであれば、歪みの解消が必要です。
骨盤の歪みは、運動によっても矯正できますし、整体やカイロプラクティックのプロにお願いして矯正することも可能です。また手軽に使用できる骨盤ベルトもおすすめです。下半身痩せやお腹のたるみ解消など、美容効果も期待できます。
産後の頭痛には、まず休息
産後に溜まる疲労が、頭痛を引き起こすことがたびたびあります。赤ちゃんと元気に向き合うためにも、上手く息抜きしながら、意識的に休息をとるようにしましょう。
ストレスを解消する
産後ママにとって、ストレスは大敵です。家事に育児に忙しいのは日常茶飯事ですが、できれば1日10分だけでもリラックスできる、自分の時間を作るように心がけましょう。1日に1回はおやつタイムを設けて、好きな飲み物やおやつを食べるのもいいでしょう。
カフェインの摂取が赤ちゃんに影響があることについては、1日1~2杯のコーヒーであれば、授乳中でも大きな問題はないとされています(※2)。
できるだけ睡眠をとる
夜中の授乳や夜泣きがあり、なかなか難しいかもしれませんが、寝不足にならないように時間を見つけて、できるだけ睡眠をとりましょう。
赤ちゃんがお昼寝しているときには、「その間に家事をしなくちゃ」と思わず、一緒に寝てしまうのもいいでしょう。パパに家事と育児を任せて、まとめて睡眠の時間をとれるといいですね。
産後の頭痛に吐き気が伴うときは?
産後に頭痛だけでなく嘔吐や吐き気が伴うときは、確率は低いものの子癇(しかん)の可能性もあります。
子癇は妊娠20週以降や産褥期に起こるけいれん発作のことで、退院後に発症する可能性もゼロではありません(※3)。急激な頭痛や吐き気、嘔吐、目のかすみなどが起こったときは、早めに病院を受診した方がいいでしょう。
産後の頭痛は薬を飲んでもいいの?
母乳で赤ちゃんを育てているママは、「薬を飲んだら赤ちゃんに影響があるのでは」と思っているかもしれません。しかしママが薬を飲んでも、母乳に薬の成分が入り、赤ちゃんに影響を与えるケースはあまりないことがわかっています。
解熱鎮痛薬として使われている、アセトアミノフェンやイブプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナクなどは、授乳中でも安全に使用できる薬とされています(※4)。
もちろん、自己判断でむやみに薬を飲んでいいというわけではないので、産後に頭痛がひどい場合には病院に相談して、薬を処方してもらうといいでしょう。
産後の頭痛は回復プロセスのひとつ
産後は、頭痛以外にもさまざまな体調不良が起きやすい時期です。しかし、どれもずっと続くものではありません。
出産は新しい命を産み出す大仕事で、体は妊娠や出産を通じて、さまざまな変化を遂げています。その変化を急激に元に戻そうとしているのだから、不調が起きるのは普通のことだとも考えられます。
すぐに出産前と同じ状態を求めず、「ゆっくり改善していこう」と気長に構えてみてくださいね。