サイトメガロウイルスは、健康な人であれば感染しても症状が出ないことがほとんどです。しかし妊娠中に感染すると、生まれてくる赤ちゃんが病気を持っていたり、障害が残る可能性があります。やっと授かったわが子には、健康に生まれてきて欲しいですよね。そこで今回は、サイトメガロウイルス感染症の予防と感染してしまった時に慌てないように、その症状や感染経路、妊娠中にかかるとどうなるかなどをご紹介します。
サイトメガロウイルスとは?
サイトメガロウイルスは世界中にいるウイルスです。突発性発疹や水ぼうそうの原因であるヒトヘルペスウイルスの仲間で、たいていの人は子供のころに感染し、抗体を持っているとされています(※1)。
しかしサイトメガロウイルスは、感染してから長期にわたり体内に留まることがあります。そのため、ウイルスを体内に保持しつつ抗体も持っているという人も多くいます。
サイトメガロウイルスに感染して現れる症状を「サイトメガロウイルス感染症」と言います。ただしほとんどの場合、サイトメガロウイルスに感染しても何も症状が現れません。
サイトメガロウイルスの感染に注意が必要なのは、以下の人たちです。
● 妊娠中の女性
● 臓器移植を受けたり、HIV感染症で免疫が抑制されている人
● 免疫が先天的に低下している人
ただし健康な子供や大人でも、何らかの症状が現れることもあります。サイトメガロウイルス感染症の症状については、後ほど詳しくご説明します。
サイトメガロウイルスの感染経路は?
サイトメガロウイルスの感染経路は様々で、サイトメガロウイルスは、唾液・母乳・膣分泌物・精液・尿・糞便・血液など、体液を介して人から人へと感染します(※1,2)。
保育園や幼稚園などの接触が多いところで感染しやすく、感染者との性行為や感染者からの輸血によっても感染します。
サイトメガロウイルスの症状は?肝炎や肺炎になる?
サイトメガロウイルス感染症は、発熱を伴う単核症や急性肝炎、肺炎を引き起こし、長期にわたる発熱と、悪寒、頭痛、筋肉痛などの症状が見られます(※1)。
サイトメガロウイルス感染症の症状が現れる頻度が高いのは、以下のような人です。
新生児、赤ちゃん
妊婦さんやママがサイトメガロウイルスを体内に持っていると、産道や母乳を介してサイトメガロウイルスに感染することがあります。ただしほとんどはママの抗体も受け継いでいるため、何も症状がないか、あったとしても軽く済みます。
ただし早産で生まれた赤ちゃんや低出生体重児の場合は、母親の抗体を十分に引き継いでいないことがあり、症状が重くなる傾向があります。そうしたときは、母乳などは慎重に投与していくことがあります(※2)。
免疫力が低下している人の感染
臓器移植や骨髄移植を受けたり、HIV感染者の場合は、感染して抗体を持っていたとしても、抗体が弱まってウイルスが再活性化することにより、症状が悪化することがあります(※2)。
サイトメガロウイルスの治療法と期間は?
サイトメガロウイルス感染症の治療には、抗ウイルス剤であるガンシクロビルがよく使われます。1日2回、1時間以上かけて14日間点滴するのが一般的です。
ただし、ガンシクロビルはサイトメガロウイルスの活動を鎮めるものの、サイトメガロウイルスを完全に殺すものではありません(※1,2)。
なお、サイトメガロウイルスの中にはガンシクロビルが効かないものもいます。その場合はホスカルネットという薬を使いますが、こちらは1日複数回の点滴を14〜21日間かけて行います(※2)。また、外国からの取り寄せになるため、対応できる医療機関が限られます。
サイトメガロウイルスは妊娠中に要注意?
前述したとおり、多くの人にとってはサイトメガロウイルスはそれほど心配する必要のない病原体です。ただし妊娠中の女性が初めて感染すると、お腹の中の赤ちゃんが「先天性サイトメガロウイルス感染症」にかかる可能性があるので注意が必要です。
先天性サイトメガロウイルス感染症とは?
妊娠中にサイトメガロウイルスに初めて感染すると、1割ほどの確率でお腹の中の赤ちゃんに以下のような影響が現れます(※1)。
● 子宮内での発育の遅れ
● 早産
● 小頭症
● てんかん
● 黄疸
● 肝臓や脾臓の腫れ
● 点状出血
● 網膜炎
● 肺炎
この症状を「先天性サイトメガロウイルス感染症」と言います。また、生まれて時間が経ってから難聴や視力障害、知能や全身を使った運動の発達に遅れなどが見られることもあります。
妊娠が可能な年齢の女性におけるサイトメガロウイルスの抗体の保有率は70%台とされています(※2)。つまり、妊婦さんのうち4~5人に1人は抗体を持っておらず、お腹の赤ちゃんが先天性サイトメガロウイルス感染症になる可能性があるということです。
1人目の子供が先天性サイトメガロウイルス感染症だと2人目もなるの?
サイトメガロウイルスの抗体は、一度サイトメガロウイルスに感染すると体の中で作られます。
そのため、1人目の子供が先天性サイトメガロウイルス感染症だったとしても、2人目の妊娠時にはすでに抗体があるので、先天性サイトメガロウイルス感染症になることはほぼないといえます。
サイトメガロウイルスの検査方法は?
前述のとおり、サイトメガロウイルスは妊娠中に初めて感染すると、赤ちゃんに影響が出る可能性があります。ただしサイトメガロウイルスに感染しても自覚症状がないことがほとんどなので、免疫があるかは血液中の抗体を検査してもらわなければわかりません。
なお、この検査は、保険が適用されない場合があります。
サイトメガロウイルスの抗体がないときは?
もしサイトメガロウイルスの抗体を持っていないと分かった場合、妊娠前の女性や妊婦さんは何をすべきでしょうか?
残念ながらサイトメガロウイルスのワクチンは実用化されておらず、自分で予防するしか対策法はありません。そのため、誰かの体液に触れたあとは手を洗い、体内にウイルスを取り込まないための対策が大切です(※1)。
乳幼児との密接な接触を避けることも大切とされているので、2人目の赤ちゃんを妊娠中のママは、1人目の子供の尿や糞便がついたおむつ交換などは、できるだけパパに代わってもらうといいでしょう(※2)。
サイトメガロウイルスは妊娠前・妊娠中に検査して対策を
サイトメガロウイルスは、ほとんどの人にとっては気にする必要のない病原体です。
しかし妊娠中に初感染すると生まれてくる赤ちゃんに障害が出る可能性もあるので、妊婦さんは正しい知識を身につけ、しっかりと予防した方がいいでしょう。まずはサイトメガロウイルスの怖さと、感染しているかどうかを早めに知ることが大切ですよ。