妊娠してから「食べ物の好みが変わった」「味が分かりづらくなった」という経験をしている人も多いのではないでしょうか?妊娠するとこうした味覚の変化が起こるのはよくあることですが、なかには「味覚障害かも…」と戸惑う妊婦さんもいるようです。そこで今回は、妊娠中の味覚障害の原因や症状、対策などについてご説明します。
妊娠中の味覚障害はよくあること?
妊娠すると、「酸味の強いものや塩辛いものを好むようになる」「脂っこいものが食べられなくなる」など、味覚や食べ物の好みの変化を経験する人は多くいます。
これについて、統計的に有意なデータがあるわけではありませんが、100名近くに妊婦さんに問診を行った結果、90%以上がなんらかの味覚変化を経験していた、とする調査報告もあります(※1)。
一方で、味覚障害は「濃い味しかわからない」「まったく味を感じない」というように、味覚の機能が正常に働いていない状態を指します。
「特定の味しか美味しいと思えないなんて、味覚障害かも」と心配している妊婦さんもいるかもしれませんが、ほかの味が感じられないなど極端な問題がないのであれば、それは単に嗜好が変わっただけで、味覚障害ではない可能性もあります。
妊娠中の味覚障害の症状は?いつまで続くの?
味覚障害の症状は、大きく分けて2つあります。1つは、甘味・酸味・塩味・苦味などの味覚が減退し、味がわからなくなる「無味覚」。2つ目は、何を食べても変な味がしたり、常に口のなかで渋みを感じたりする「異味覚」です(※2)。
これらの症状を自覚することもあれば、料理の味付けがいつもとかなり違うことを家族から指摘されて気づくこともあるようです。
なお、味覚の違和感が続く時期は人によって異なり、「安定期に入ったら治まった」という人もいれば、「出産を終えるまでずっと続いた」という人もいます。
一時的なものであればそれほど気にする必要はありませんが、不安なときは妊婦健診のときなどにかかりつけの産婦人科で相談してみましょう。
妊娠中に味覚が変化する原因は?
妊娠してから味覚の変化や味覚障害が起こることはあるものの、実際のところその原因はよくわかっていません。
妊娠によってホルモンバランスが変化したり、唾液が減って口のなかが乾燥したりすることで、味覚が変わる可能性も指摘されています(※1)。
また、一般的に、味覚障害になる原因の一つとして「亜鉛不足」が挙げられます。
舌には味を感じる「味蕾(みらい)」という細胞があります。亜鉛はこの味蕾の形成に大きく関与しており、体内の亜鉛が不足すると味蕾の機能が低下して味覚障害を引き起こします(※3)。
しかし、妊婦さんがみんな亜鉛不足になるわけではないので、妊娠中の味覚変化の原因であるとは言い切れません。
そのほか、貧血やカンジダ症なども味覚障害の原因として考えられますが、心因性のものや原因不明なケースもあるので、特定することは難しいといえます。
妊婦さんの味覚障害への対策は?
妊娠中に味覚の変化や味覚障害があったとしても、その影響で食事や水分補給がまったくできないという状況でなければ、過度に心配する必要はありません。
妊娠中に料理を美味しく味わえなかったり、妊娠前は好きだったものが食べられなくなったりするのはつらいので改善したいところですが、原因がはっきりしていない以上は対策が難しいのも事実です。
できる範囲の対策として、亜鉛不足を解消するために、煮干しや牛肉、ごま、のり、きな粉などの亜鉛の多い食べ物を積極的に食べるようにしてみましょう。
また、妊婦さんは貧血になりやすく、それが味覚障害につながる可能性もゼロではありません。牛の赤身肉や小松菜、切り干し大根など鉄分を豊富に含む食品を意識的に摂るのもいいですね。
ただし、つわりの症状で吐き気などがつらいときは無理しすぎず、「食べられるものを食べられる量だけ」にしておきましょう。
妊娠中に味覚障害が続くときは産婦人科で相談を
妊娠中の味覚の変化はだれにでも起こりうるものなので過度に心配する必要はありません。しかし、「何を食べても味がおかしく感じられ、まともに食事ができない」といった場合には、栄養不足や極端な体重減少が起きる前に、かかりつけの産婦人科を受診しましょう。
違和感を抱えて1人で悩むことがないように、早めに医師に相談して、できるだけ楽しい気持ちで食事を味わえるようにしたいですね。