多くの女性を悩ませる「貧血」。日常生活の中でめまいや立ちくらみなどの症状に困っていても、慢性的に貧血気味の人は「仕方がないもの…」と諦めているかもしれません。しかし、きちんと鉄分を補給すれば症状を緩和することができることも。そこで今回は、鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」という2つの種類があること、貧血対策のためにそれぞれの鉄分を効率的に摂取する方法についてご説明します。
どうして女性は貧血になりやすいの?
女性は貧血になりやすいといわれますが、なぜなのでしょうか?これは生理による出血が定期的にあることと大きな関係があります。
そもそも貧血とは、全身に酸素を運ぶのに重要な役割をもつヘモグロビンが少なくなることや赤血球の数が低下すること、血液量が減少することなどによって起こります。
ヘモグロビンは鉄分を材料として生成されますが、女性は生理のたびに出血があり、血液が体の外へ排出されてしまうため、鉄分が不足してヘモグロビン自体が少なくなりがちなのです。
厚生労働省によると、男性よりも1日あたり3mg多く鉄分を摂取することが推奨されていますが、多くの女性は十分な鉄分量を摂取できていません(※1)。
また、生理の影響で子宮に血液が集まり、一時的に血液が不足する「虚血性貧血」を起こす可能性もあります。普段からヘモグロビンが少ないと酸素の供給量が少なくなって虚血性貧血が起きやすくなるので注意が必要です。
貧血対策には鉄分が大事!ヘム鉄と非ヘム鉄って?
女性は貧血を起こしやすいものの、日々の食事の中で鉄分をしっかりと摂取していれば貧血を防ぐことができます。
ただ、一口に「鉄分補給」といっても鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、それぞれの特徴を知ることが効率的な鉄分補給には不可欠です。
ヘム鉄
肉や魚などに多く含まれる鉄分です。「動物性鉄分」とも呼ばれ、吸収率が高いのが特徴です。ただし、肉や魚をたくさん食べるのは大変なので、ヘム鉄だけを大量に摂取するのは大変です。
非ヘム鉄
野菜や穀類、海藻類、卵、乳製品に多く含まれる鉄分です。「植物性鉄分」とも呼ばれ、吸収率が低いのが特徴です。ただ、野菜や海藻類はたくさん食べることはできます。タンパク質やビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が高まるので、食事の仕方を工夫すれば非ヘム鉄でもしっかりと鉄分を補給できますよ。
ヘム鉄と非ヘム鉄のどちらか一方を摂取するというよりは、それぞれを多く含んだ食材をバランスよく摂取して、鉄分の推奨摂取量を目指すことが大切です。
ヘム鉄と非ヘム鉄が多く含まれる食べ物は?
ヘム鉄と非ヘム鉄を多く含む食べ物はいろいろあります。今の食事に取り入れやすいものを使ったメニューを考えてみてくださいね。
ヘム鉄を多く含む食べ物(※2)
● 豚レバー(焼き鳥1串/約30g):3.9mg
● 鶏レバー(焼き鳥1串/約30g):2.7mg
● かき(むき身5個/約75g):1.4mg
● 牛もも肉(赤身約1枚/70g):1.9mg
● めじまぐろ(切身1切/70g):1.3mg
● あさり(むき身約10個/30g):1.1mg
● しじみ(むき身約10個/20g):1.7mg
● あゆ(1尾/60g):3.3mg
● めざし(4尾/50g):2.1mg
● 赤貝(刺し身3切れ/25g):2.8mg
● ビーフジャーキー(5切れ/20g):1.3mg
非ヘム鉄を多く含む食べ物(※2)
● 乾燥大豆(40g):2.7mg
● 小松菜(70g) :1.5mg
● 切干大根(20g):0.6mg
● ほうれん草(70g):1.4mg
● 高野豆腐(20g):1.2mg
● 納豆(1パック):1.3mg
ヘム鉄を多く含んだ肉や魚をメイン料理にして、非ヘム鉄を多く含む食材を使った副菜を添えると、鉄分を効率的に摂取できるメニューになりますね。
妊婦さんはヘム鉄の摂取に注意しましょう
ヘム鉄は吸収率がいいので、積極的に摂取したいと考えがちですが、妊娠中の人は注意が必要です。妊娠中も貧血を起こしやすく、積極的な鉄分補給は書かせませんが、ヘム鉄を多く含むレバーにはビタミンAが大量に含まれています。
妊娠中にビタミンAを過剰摂取すると、お腹の赤ちゃんに口蓋裂や水頭症などの奇形を引き起こすリスクが高まります。そのため妊娠中に鉄分を摂取するときはヘム鉄を摂取する食材に気をつけながら、非ヘム鉄を多めに摂取するように心がけましょう。
ヘム鉄や非ヘム鉄の吸収率を下げる成分がある?
せっかく摂取した鉄分の吸収を妨げるものがあります。食事中・食後に以下の栄養素を摂取すると頑張って鉄分の摂取量を増やしても意味がなくなってしまうので注意しましょう。
タンニン
お茶やコーヒーに含まれるタンニンは、鉄の吸収率を下げます。食後すぐはお茶やコーヒーを飲みたくなるものですが、鉄分の吸収率を高めたいときは、食後に飲むのを控え、飲む量も調節するようにしましょう。
フィチン酸
穀類や豆類に多く含まれるフィチン酸は、鉄やカルシウムの成分を不溶性に変えてしまうため吸収率を下げます。
そのほか食物繊維や炭酸、リンを過剰摂取すると鉄分の吸収率が下がるといわれますが、日常生活で摂取する量なら影響は少ないので気にしすぎないでください。
ヘム鉄と非ヘム鉄をバランスよく摂取して貧血改善
女性を困らせる貧血は、食事を一工夫するだけで改善できます。ヘム鉄と非ヘム鉄を多く含んだ食材を積極的に取り入れましょう。
ただ、鉄分をたくさん摂取しようとするあまり、食事のメニューが偏ってしまわないように注意してください。過度なダイエットや偏食も貧血の原因となるため、全体の栄養バランスを意識していろいろな食材を取り入れ、そこに鉄分を多く含んだ食材を織り交ぜるようにしましょう。
また、食事を見直しても症状が改善しないときはほかに原因があるかもしれません。病院では原因をはっきりさせ、鉄剤を処方してもらえるので、不安があるときは一度婦人科で検査してもらってくださいね。