妊娠中は母体と赤ちゃんのために、さまざまな栄養素をバランスよく摂ることが大切です。特に「ビタミンE」は、妊娠中や妊活中の女性にとって大切な栄養素だといわれています。
今回は、妊娠中のビタミンE摂取について、期待できる効果や流産との関係、どんな食べ物に多く含まれるのかなどをご説明します。
ビタミンEとは?
ビタミンは、人が生きていくうえで必要な栄養素の一つです。体内でほとんどつくることができないため、食べ物などから摂取する必要があります(※1)。
ビタミンの中でも、油に溶けやすく水に溶けにくい脂溶性ビタミンの一つが「ビタミンE」です。
ビタミンEの化学名は「トコフェロール」といい、ギリシャ語の「tocos=子どもを生む」と「pherein=力を与える」が語源となっています。その名のとおり、ビタミンEは、妊娠・出産に必要な女性ホルモンの代謝に大きく関与すると考えられています。
妊娠中にビタミンEを摂るとどんな効果があるの?
ビタミンEには、抗酸化作用や細胞の老化防止など、さまざまな作用がありますが、ここでは特に妊娠中・妊活中の女性に影響する効果を2つご紹介します。
血行が良くなる
ビタミンEは、毛細血管を広げて血行を促進する作用があります(※2)。血の巡りがよくなることで、女性に多いといわれている「冷え」の改善が期待できます。
妊娠中に体が冷えると、お腹の張りや足のむくみなどを引き起こすこともあります。また、妊活中も冷えは大敵です。冷えによって子宮の働きが悪くなると、卵巣機能や黄体機能が低下する可能性もあります。
妊娠中や妊活中の冷えの予防として、ビタミンEをバランスよく摂取できるといいですね。
女性ホルモンの分泌を促進する
ビタミンEは、脳に働きかけることで、女性ホルモンの分泌を促進する働きも持っています(※2)。
受精卵が着床して妊娠が成立し継続するためには、女性ホルモンが正常に分泌されることが大切です。
また、生理不順などのトラブル改善にもつながる可能性があるので、不妊治療のためにビタミンEのサプリメントが使用されることもあります。
妊娠中のビタミンEで流産を予防できるって本当?
「ビタミンEを摂ると流産のリスクが減る」という噂を聞いたことがある人もいるかもしれません。
ただし、ビタミンEと流産は関係なく、摂取したからといって流産を防げるわけではありません(※4)。
妊娠初期の流産のほとんどは、染色体異常など胎児側に原因があることがほとんどです。
ビタミンEに限らず、特定の栄養素や食材で流産を防ぐことはできないので、体調にあわせて無理のない範囲で、バランスのよい食事を心がけるようにしてくださいね。
妊娠中はビタミンEをどれくらい摂ったらいい?多く含む食べ物は?
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、妊娠していない女性のビタミンEの摂取目安量は1日あたり5.0〜5.5mg、妊婦さんは少し多めで6.5mgとされています(※4)。
ビタミンEを多く含む食べ物には、以下のようなものがあります。
●魚介類:うなぎの蒲焼、にじます、あゆ、はまち など
●ナッツ類:アーモンド、ヘーゼルナッツ、落花生 など
●植物油:ひまわり油、サフラワー油、コーン油、綿実油 など
●その他:卵、かぼちゃ、小麦胚芽、モロヘイヤ、菜の花 など
妊娠中の摂取目安量6.5mgを満たすには、例えば、うなぎの蒲焼で約130g、生のかぼちゃで約130g、アーモンドで約20粒を食べる必要があります(※5)。
1つの食品から摂る必要はないので、さまざまな食品を組み合わせて上手に取り入れてくださいね。
ただし、ビタミンEは通常の食生活をしている限り、不足したり過剰になりすぎたりする心配はあまりありません(※4)。
生まれてくる赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクを下げるために妊娠前から積極的に摂りたい葉酸サプリには、ビタミンEが含まれているものも多いので、飲んでいる人は確認してみてくださいね。
ビタミンEをバランスよく摂ろう
妊娠中は、栄養バランスの整った食事をとることが大切です。ビタミンEは血行改善やホルモンの分泌促進などの働きがあるので、ほかの栄養と一緒に上手に取り入れて、健康的な妊娠生活を送っていけるといいですね。