新生児をよく観察していると、呼吸が早かったり、不規則だったりすることがあって、心配になることはありませんか?「新生児呼吸窮迫症候群」という病気もあり、もしかしたら…と、思うことも。しかし、新生児が大人より早い呼吸をするのは、ごく自然なことなのです。今回は、そんな新生児の正常な呼吸数がどれくらいなのか、病院に連れていく目安などについてご説明します。
新生児の呼吸が早いのは、よくあること?
新生児の呼吸が大人より早く、荒いのは普通のことなので、心配しすぎないでくださいね。
新生児は呼吸をするための筋肉が未熟で、大人のように上手に口での呼吸ができず、鼻と口の両方で呼吸をしています。そのため、風邪などでちょっと鼻がつまっただけでも呼吸がしづらくなります。
また、手足を動かしたり反り返ったりするだけの簡単な動作であっても、小さな赤ちゃんにとってはハードな運動なので、その影響で呼吸が早くなることは珍しくありません。
新生児の呼吸数はどれくらい?
日本小児感染症学会の「小児呼吸器感染症ガイドライン」によると、年齢別の正常な呼吸数は下表のとおりで、成長とともに少なくなっていきます(※1)。
時期 | 呼吸数 |
新生児期 | ~60回/分 |
乳児期 | ~50回/分 |
幼児期 | ~40回/分 |
学童期 | ~30回/分 |
健康な新生児の場合、呼吸数は1分間あたり40~50回くらいが目安です。
新生児は代謝が高いためたくさんの酸素を必要としますが、肺や胸筋などが未熟なため1回の呼吸でたくさんの空気を吸い込むことができません。そこで呼吸数を多くして酸素を補っていると考えられています。
新生児の呼吸が早い・不規則なときに考えられる病気は?
大人の呼吸数がいつも一定ではないように、新生児の呼吸数も常に変動しています。少し息苦しそうに見えても、しばらくして落ち着くようであれば、様子を見てあげてください。
しかし、次のような状態が見られたら小児科の受診を考えたほうがいいでしょう。
高熱や激しい咳が続く
新生児はママからもらった免疫があり、外出もしないため、風邪を引きにくいのですが、風邪のウイルスは数え切れないほど種類が多く、新生児でも感染の恐れがあります。
赤ちゃんが風邪をひくと、発熱、鼻水、鼻づまり、咳などの症状が現れ、呼吸が速く、荒くなることもあります。また、月齢が低い赤ちゃんの場合は、はっきりとした風邪症状が出なくても、急に細気管支炎や肺炎を起こすことも。
哺乳をしなくなったり、機嫌が悪くいつもと顔色が違ったりするときは、他の症状が現れていないかを確認し、呼吸困難が疑われる場合は早めに病院を受診しましょう。
突然咳き込む、もしくは喘鳴がする
呼吸がとても浅くて荒く、咳き込んだり、ゼロゼロ・ゼーゼーという音がしたりする場合、喘息性気管支炎の疑いがあります。気管支喘息のようにゼロゼロとした咳が出るので、「喘息様気管支炎」と呼ばれることも。
気管支喘息(小児喘息)と診断されるのは1~2歳を過ぎてからがほとんどですが、赤ちゃんの気管支はとても細く、咳をする力が弱いので、痰が溜まりやすいのです(※2)。
「ゼロゼロ、ゼーゼー」と苦しそうに呼吸している場合は、病院へ連れて行きましょう。
唇や皮膚が青ざめている
何らかの原因で酸素不足になり、皮膚や粘膜が紫色になる症状をチアノーゼといいます。呼吸の乱れとともに、赤ちゃんの顔や唇、体の皮膚が青紫色になる症状が出たら、チアノーゼの疑いがあります。
チアノーゼは、心臓や肺に何らかの疾患があるサインの可能性があるので、早急に医師に診てもらいましょう。
呼吸時に肋骨の間・下がへこむ
状況によって呼吸数は大きく変わるものですが、新生児の呼吸数が常に「60回以上/分」である場合や、おとなしくしているときや、眠っているときでも常に呼吸が早い場合、呼吸時に肋骨の間・下がへこんでいる場合は、呼吸器疾患の可能性が考えられます。
生まれてすぐの新生児が呼吸困難になることもある?
新生児が呼吸困難に陥ってしまう病気を「新生児呼吸窮迫症候群」と呼びますが、肺をふくらませる機能が未成熟であるときに起こります。
通常、肺をふくらませるサーファクタントという物質は、妊娠33~34週頃、ママのお腹の中にいるときに作られます。そのため、それより前に生まれた赤ちゃんは、まだ肺が未成熟のため新生児呼吸窮迫症候群になる可能性が高く、生まれたあとも入院期間中は注意深く観察されます(※2)。
新生児の呼吸が早いときもまずは落ち着いて
大人から見ればささいなことでも、新生児の呼吸は早く、荒くなるものです。慌てず冷静に状況を見極めるようにしてください。
何らかの刺激で興奮したりバタバタと手足を動かしたりした後など、一時的に呼吸が早くなる原因が分かっている場合は様子を見ましょう。抱っこして背中をトントンたたくなど、気持ちを落ち着かせてあげてください。
先ほどご説明したように、呼吸の異常だけでなく、ほかの症状も一緒に出ている場合は、早めに病院を受診しましょう。
病院に行くべきかどうか判断しにくい場合は、「小児救急電話相談」を利用するのも一つの方法です。「#8000」に電話をかけると、小児科医師や看護師に相談できますよ。まずはママやパパが冷静になり、赤ちゃんを安心させてあげましょう。