今やカップルの5~10組に1組が不妊症だといわれます。「妊娠したいけどなかなか授からない…もしかしたら不妊症かも」と感じたときは、一度「不妊検査」を受けてみることをおすすめします。不妊の原因は様々ですが、年齢が上がるにつれて妊娠しにくくなるので、早めに検査を受けましょう。今回は、男性・女性それぞれの不妊検査の内容や費用、検査を受ける時期やタイミングなどについてご説明します。
産婦人科で不妊かどうかわかるの?
そもそも不妊とは、「妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性交をしているにもかかわらず、1年以上妊娠しない」状態のことをいいます(※1)。
不妊検査とは、その名のとおり、不妊が見られる場合にその原因を調べるための検査です。不妊の原因の割合は、男女それぞれ半数ずつといわれ、できるだけ早く不妊の理由を突き止めるためには、女性と男性どちらも不妊検査を受ける必要があります。
産婦人科で不妊検査を受けるタイミングは?
不妊の定義から考えると「避妊をしていないのに1年以上妊娠しない」というのが、病院で不妊検査を受けるタイミングのひとつの目安です。
ただし、一般的に、女性の年齢が上がるにつれて妊娠しにくくなっていくため、早い段階で不妊を疑うことが大切です。アメリカの生殖医学会では、女性の年齢が35歳以上の場合、6ヶ月の不妊期間が経過したら不妊検査を受けることを提唱しています(※2)。
また、女性の年齢が34歳以下であっても、生理不順が見られる人は妊娠しにくい可能性があります。避妊をしていないのに半年間妊娠しない場合、病院を受診することをおすすめします。
不妊検査は、不妊外来のある病院の産婦人科か、不妊治療専門のクリニックで受けられます。男性の場合は、女性と一緒に産婦人科の不妊外来を受診するか、泌尿器科でより精密な検査を受けることができます。
不妊検査の初診の内容は?
不妊検査は、男女ともにまず初診で基本検査をして、検査結果でなんらかの異常が認められた場合、精密検査をするという流れで行われます。
初診の主な検査内容は、次のとおりです。
女性の不妊検査の流れ
まず「問診」で、受診理由や生理の様子、夫婦生活や妊娠・出産・既往歴などが確認されます。その後、「触診(内診)」で腟や子宮、卵巣の状態や痛みの有無などをチェックします。基礎体温を記録している人は基礎体温表を持参しましょう。
内診のあと、「超音波検査」で腟に器具を入れ、子宮や卵巣の状態を確認します。必要に応じて、子宮がんの検診や性感染症の検査が行われることも。それに加えて、「血液検査」ではホルモン数値や感染症の有無を調べます。
男性の不妊検査の流れ
女性の場合と同じく、まず「問診」を受け、射精の状態や夫婦生活について医師から質問があります。さらに、視診や触診で生殖器の状態を診ることもあります。
男性の不妊検査では、初診から「精液検査」が行われる場合もあります。採精方法は様々ですが、クリニックの採精室やトイレなどで専用の容器に精液を採取して、精子の状態を調べます。
女性の不妊検査の内容とは?
女性の不妊症には様々な原因があるため、検査内容も多岐にわたります。加えて、月経周期に合わせて検査をする必要があるため、一通りの検査を終えるまでに1~2ヶ月程度かかります。
以下では、基本検査と精密検査それぞれで実施される主な内容をご紹介します(※3)。検査の進め方や、保険適用の有無・費用などは病院によって異なるため、詳しくは病院で相談してください。
1. 基本検査
血中ホルモン検査
<検査費用:1,000~10,000円>
採血して女性ホルモンなどのホルモン分泌状態を見て、排卵障害や黄体機能不全がないかどうかを調べます。
ホルモンの数値は生理周期の中で変化するため、検査の時期を低温期(月経期、卵胞期、排卵期)と高温期で分けて何度か検査を受ける必要があるため、検査費用に幅があります。
超音波検査
<検査費用:1,500~3,000円>
腟内に超音波が出るプローブという器具を入れ、子宮や卵巣の状態をモニターに映し出して確認する検査です。
超音波検査によって、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、多嚢胞性卵巣の有無などを見つけることができます。また、子宮内膜の厚さを測ったり、卵胞の大きさから排卵日を予測したりすることができます。
子宮卵管造影検査
<検査費用:5,000~15,000円>
腟から子宮口にカテーテルという細い管を入れ、造影剤を注入してX線撮影を行います。
子宮の形に異常はないか、卵子の通り道である卵管に詰まりや癒着がないかどうかなどを調べることができます。
卵管通気検査・通水検査
<検査費用:5,000~15,000円>
カテーテルを子宮に入れ、卵管に二酸化炭素や造影剤、生理食塩水などを注入して、卵管の通りを見る検査です。
この検査により、卵管がどの程度通っているのかがわかりますが、子宮卵管造影検査の方がより精密に見られます。
フーナーテスト(ヒューナーテスト)
<検査費用:500~1,000円>
排卵日近くに性交をしたあと、子宮頸管粘液を採取し、粘液の中に精子が進入しているか、動きの良い精子がどれくらいあるかを顕微鏡で見る検査です。
フーナーテストによって、男性の精子の数や運動率を調べることができます。検査の結果によっては、子宮頸管粘液の質が悪い、精子をブロックしてしまう抗精子抗体がある、などの可能性が見つかります。
2. 精密検査
子宮鏡検査
<検査費用:5,000~20,000円>
子宮内の異常が疑われる場合に、腟から子宮に内視鏡を挿入し、先端についたカメラで子宮の様子を映して状態を確認します。
子宮鏡検査によって、着床を妨げる子宮内膜ポリープや子宮粘膜下筋腫などがないかどうかを調べることができます。
子宮内膜組織検査
<検査費用:3,000~5,000円>
排卵後5~7日目に、細い耳かきのような器具で子宮内膜の一部を採取し、顕微鏡で状態を確認します。
子宮内膜が着床にふさわしい状態かどうかを調べる検査ですが、最近では行われることが少なくなっています。
抗精子抗体検査
<検査費用:5,000~10,000円>
先ほどご紹介したフーナーテストで精子の異常が認められなかった場合に行われる検査です。
採血し、血液中に「抗精子抗体」がないかどうか確かめます。抗精子抗体があると、精子を異物と判断して排除する作用が働いてしまうため、不妊の原因となります。
腹腔鏡検査
<検査費用:10万~20万円>
お腹に小さな穴を2~3箇所あけて、腹腔鏡を入れて中を検査します。
内診だけではわからない卵管や卵巣の様子を確認することができる検査です。検査と同時に、不妊の原因になっている病気を治療する場合もあります。
男性の不妊検査の内容とは?
男性の不妊検査は、女性と違って受ける時期は特に限定されていません。主に下記の検査を行うことで、不妊原因がないかどうかをすぐに確認できます。
精液検査
<検査費用:300~1,000円>
男性の不妊検査で最も基本的な検査です。自宅か病院で精液を採取して、精液の色や量、含まれる精子の濃度、運動率、奇形率、白血球数などを調べます。
なお、精液検査は基本的な検査項目であれば保険が適用されますが、保険適用外の場合は5,000~3万円程度かかることもあります。
精巣生検
<検査費用:10万円~30万円>
精液検査の結果、精子が全くない「無精子症」などと診断された場合に、精子を作る器官である「精巣」がどれだけ機能しているか、顕微鏡検査で調べます。
精巣検査は、産婦人科ではなく、泌尿器科や男性不妊治療に力を入れているクリニックなどで受けられます。
不妊検査の内容は男女それぞれ
不妊治療で効果を上げるには、できるだけ早く不妊検査を受けて原因を知り、それに合った治療を行うことが大切です。「なかなか妊娠できない」と悩んだら、まずはパートナーとともに病院を受診して検査を受けましょう。
ただし、検査をしても不妊の原因が見つからないケースも少なくありません。その場合は、パートナーと医師とよく相談のうえ、不妊治療の方針について検討してみてください。