胎児機能不全とは?原因や症状は?後遺症が出ることもある?

妊婦健診などで「胎児機能不全」という言葉を耳にしたことはありませんか?この状態の赤ちゃんには、様々な健康上の問題が起こる可能性があるため注意が必要です。そこで今回は、胎児機能不全とはどのような状態のことなのか、原因や症状は何か、後遺症が出ることもあるのかなどについてご説明します。

胎児機能不全とは?

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「胎児機能不全」とは特定の病気や障害の名前ではなく、赤ちゃんの健康に問題がありそう、あるいは将来的に健康に問題が出るかもしれないという状態を指す名称です。そのため、胎児機能不全と呼ばれる状態の赤ちゃんには、いろいろな異常や病気が起こりえます。

かつては同じ意味で「胎児ジストレス」や「胎児仮死」という言葉が使われていました。しかし、妊婦さんやその家族の誤解を招くことが多かったため、現在は「胎児機能不全」と呼ばれるようになっています。

なお、後ほど説明するように、胎児機能不全を引き起こす原因はたくさんあり、妊娠中に起きることもあれば、分娩中に起きることもあります(※1)。

胎児機能不全の症状は?後遺症が出るの?

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胎児機能不全になった赤ちゃんは低酸素状態に陥っています。

低酸素状態になると、生命維持に必要のない臓器の血流が減り、代わりに脳や心臓などの重要な臓器への血流が増えます。この段階では赤ちゃんには特に異常が出ないか、出たとしても軽症であることがほとんどです。

しかし、低酸素状態が長く続いて重症化すると、脳や心臓以外の臓器に酸素が行き渡らなくなり、異常が現れます。

例えば、様々な臓器に障害が現れたり、脳細胞の一部が死滅して、後遺症として成長とともに脳性麻痺が現れたりすることがあります。また、重篤な状態になると、赤ちゃんの生命に危険が及ぶ可能性もあります(※1)。

胎児機能不全の原因は?

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胎児機能不全の原因となるものは様々で、ママに由来するものもあれば、赤ちゃんやへその緒、胎盤などに由来するものもあります。以下でその一例をご紹介します。

なお、このなかでもっとも多い原因はママと胎盤に由来するもので、そのなかでも妊娠高血圧症候群が原因でよく起こることが知られています(※1)。

ママ由来の原因

● 妊娠高血圧症候群
● 糖尿病合併妊娠
● 母体低血圧

胎盤由来の原因

● 常位胎盤早期剥離
● 前置胎盤
● 過期妊娠

赤ちゃん由来の原因

● 多胎妊娠
● 血液型不適合妊娠
● 胎内感染

子宮由来の原因

● 過強陣痛
● 子宮破裂

へその緒由来の原因

● 臍帯脱出
● 臍帯巻絡

胎児機能不全の診断方法は?

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妊娠中は、お腹の中の赤ちゃんに直接触れて検査することができません。そのため、胎児機能不全かどうか診断するには次のような方法を使い、赤ちゃんの心拍数の変化やへその緒の血流の流れ具合、羊水量、体重を調べます。そして、その結果から総合的に判断します。

● 胎児心拍数モニタリング
● 超音波断層検査
● 超音波パルスドプラ法

一方、分娩中は胎児心拍数モニタリングの結果が、胎児機能不全かどうかを判断するうえで最も重視されます。

しかし、胎児心拍数モニタリングの結果は、必ずしも胎児の状態が悪化していることを示すわけではありません。胎児機能不全と疑われる結果が出たとしても、30〜90%ほどの確率で、実際には胎児が元気な状態であることがあります。

そのため、胎児機能不全と診断されても、赤ちゃんが重症でないことも多くあります(※1)。

大事なことは、胎児機能不全と診断されたとしても、早く出産をすることで赤ちゃんが苦しい状態を一時的なもので済ませ、健康に生まれてきてもらうことです。

胎児機能不全の治療法は?

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胎児機能不全の治療では、検査結果や妊娠週数、ママと赤ちゃんの合併症の有無、病院の設備やできうる治療範囲などを考慮して以下のようなことが行われます。ただし、場合によっては特に治療は行わず、経過観察となることもあります(※1)。

赤ちゃんの低酸素状態を改善する

胎児機能不全が疑われるけれど軽症である可能性が高い場合は、赤ちゃんの低酸素状態を改善するために、次のような治療が行われることがあります。

● 血管の圧迫を解除するためにママが横向きに寝る
● ママへ酸素を投与する
● 羊水が漏れ出てへその緒が圧迫されている場合は人工羊水を注入する

急いで分娩を行う

胎児機能不全が強く疑われて、赤ちゃんの状態が悪いサインが繰り返し見られ、低酸素状態になってしまう可能性が高い場合は、すみやかに分娩を行います。

なお、分娩中で、すでに赤ちゃんの頭が出てきているときであれば、吸引分娩や鉗子分娩を行って、少しでも早い出産を目指します。

一方、分娩中でも子宮口が広がりきる前であったり、陣痛が起きていないときや一刻を争う場合は、帝王切開を行います。

胎児機能不全と診断されても落ち着いて

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胎児機能不全は妊娠中や分娩中に起きることがあり、重症の場合は赤ちゃんに後遺症が出たり、生命に関わったりすることもあるため注意が必要です。しかし、胎児機能不全と診断されても重篤な状態にはならずに、健康な赤ちゃんが生まれてくる可能性も十分にあります。

そのため、妊婦健診などで胎児機能不全だと診断されてもすぐに悲観的にはならず、落ち着いて医師の指示に従いましょう。

胎児機能不全が起きていたときにすぐ気づけるよう、妊娠中はきちんと健診を受けることも大切ですよ。

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