陣痛促進剤とは?出産までの時間は?費用やリスクは?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

出産が間近に迫ってきて、陣痛促進剤の存在を初めて知った人も多いのではないでしょうか。陣痛促進剤はその名の通り、陣痛を促すために使われる薬です。分娩は必ずしも順調に進むとは限らないため、陣痛促進剤を使わなければならないケースもあります。今回は、陣痛促進剤の効果やリスク、投与してから出産までにかかる時間、費用について、「こそだてハック」の読者アンケート(※)による体験談とあわせて、ご紹介します。

陣痛促進剤とは?どんな効果がある?

陣痛室 日本人 夫婦

「陣痛促進剤」とは、子宮収縮を促して陣痛を引き起こす薬です。出産予定日を過ぎても陣痛が始まらない、破水したのに陣痛が始まらない、陣痛は来たけど子宮口がなかなか開かない、陣痛が強くならず出産が長引く、といった状況になったときに、薬の力で陣痛を起こします。「陣痛誘発剤」という名前で呼ばれることもあります。

陣痛促進剤を投与する際は、医師から説明を受け、同意する場合は同意書にサインをします。

陣痛促進剤を投与したら絶対に陣痛が起こるというわけではなく、効果には個人差があります。その場合には、投与量の増加や緊急帝王切開といった方法がとられます。

陣痛促進剤の使い方は?種類によって違うの?

点滴

陣痛促進剤には、子宮収縮を促す作用のあるホルモンである「オキシトシン」または「プロスタグランジン」が使われます(※1)。

オキシトシン

点滴で投与され、自然陣痛に近いかたちで子宮収縮を促します。効果には個人差が大きく、投与しても陣痛が起きないこともあります。

プロスタグランジン

点滴と経口投与の2通りの方法があり、経口投与では投与量を調整するのが難しくなります。オキシトシンに比べて陣痛を引き起こしやすいため、効果の個人差が少ないという特徴があります。

基本的には、オキシトシンとプロスタグランジンが同時に投与されることはなく、どちらかを使って効果が見られなかった場合に、数時間置いてからもう一方の投与を行うことがあります。

陣痛促進剤を使うタイミングは?

分娩室

陣痛促進剤を使うタイミングは主に2つあります。

陣痛を誘発するとき

たとえば、出産予定日を数日から1週間ほど過ぎて胎盤の機能が低下したり、胎児の状態が悪くなったりした場合には、陣痛促進剤の使用が検討されます。

出産予定日を超過していなくても、陣痛の前に破水が起きる「前期破水」の場合や、妊娠高血圧症候群などで母体の状態が悪くて早期の出産が望ましいと診断された場合にも使われます。

陣痛を後押しするとき

陣痛は自然にきたものの、子宮口の開きが遅くて微弱陣痛と診断された、あるいは、お産が長引いてそのままでは母子に危険が及ぶ場合に、ママと赤ちゃんの様子を見ながら陣痛促進剤を使用が検討されます。

陣痛促進剤を投与してから出産までにかかる時間は?

時計

陣痛促進剤を投与してから陣痛が始まるまでの時間、出産を終えるまでの時間は、人によって大きく違います。

投与してすぐに陣痛が始まり4時間後には出産を終える人もいれば、投与してから数時間後に陣痛が始まり、その後も子宮口が開くまでに10時間以上かかり、出産が終わるまでには24時間以上かかる人もいます。

読者アンケート(※)でも、陣痛促進剤を投与してから陣痛が起こるまで・出産するまでにかかった時間について、様々な体験談が寄せられました。

投与したら急に陣痛が強まった

上の子の出産時、陣痛が弱く促進剤を使用しました。急激に陣痛が強まり、5分間隔になってから分娩に移るまでとても長く感じました。

虹の母さん(30代)

促進剤がなかなか効かず…

バルーンを入れても子宮口が開かなかったので、点滴で陣痛促進剤を使用しながら陣痛室で待ちました。なかなか薬が効かなかったので、医師が手を入れて破水をさせてくれて、分娩台に乗り2〜3回いきんだら生まれました。

ゆな、りなのママさん(30代)

あっという間に陣痛が来た

破水した後、陣痛促進剤を打つとすぐに陣痛が来ました。陣痛の痛みは夫や助産師さんに尾てい骨を押してもらうことで和らぎました。

soyoさん(30代)

投与後3日目で分娩台へ

予定日を過ぎて破水し管理入院をしたものの、陣痛が来ず、点滴による促進剤を使用しました。促進剤3日目に分娩台へ。分娩台にあがると1時間30分後に出産しました。

べべさん(30代)

陣痛促進剤は痛いの?出産までの痛みの感じ方は?

日本人 分娩台 出産 女性

陣痛促進剤を投与して陣痛が来た場合と、自然に陣痛が起こった場合とで、痛みに違いがあるのかどうか気になるところですよね。

陣痛促進剤は人工的に子宮を収縮させるため、陣痛が自然に進んでいくときに比べて、急に痛みが強くなる可能性はあります。ただし、そもそも陣痛や分娩の痛みには個人差があり、初産婦と経産婦でも違いがあります。促進剤を使ったほうが痛みが強い、使っていないほうが痛みが弱い、とは一概には言えません。

陣痛促進剤を使ったときのリスクは?

陣痛 出産 分娩 分娩台
陣痛促進剤は人工的に陣痛を引き起こすものなので、リスクや副作用があります。なかでも代表的なのが、「過強陣痛」です。

過強陣痛とは、陣痛が強くなりすぎることで、ほとんどの場合、陣痛促進剤の過度な使用によって起こります。子宮内圧の上昇、陣痛周期の短縮、持続時間の延長のうち、1つ以上の症状があると、過強陣痛が疑われ、注意が必要となります(※2)。

自然に起こる陣痛は母体の状態にあわせて適度な強さで進んでいきます。一方、陣痛促進剤で人工的に陣痛を引き起こすと、子宮の収縮が強くなりすぎる恐れがあります。

その結果、胎児が圧迫されて胎児機能不全になったり、子宮破裂が起きたりすることがあります。出産後に子宮筋が疲れ切って止血が行われなくなる弛緩出血を起こすこともあります(※2)。

陣痛促進剤を使う場合は、リスクを回避するために分娩監視装置を装着したうえで、子宮収縮の状態や血圧・脈拍数、胎児の心拍を細かく確認しながら適切な量を投与します(※2)。危険な予兆があれば投与量を減らす、投与を中止するといった処置が行われます。

陣痛促進剤の費用はどれくらい?保険は適応される?

お金 保険 病院 診察 料金 費用

陣痛促進剤の費用は、病院や産院、投薬量によって違いますが、一般的には、1万円以上が目安です。薬がなかなか効かず投薬量が多くなると、そのぶん費用がかかります。

微弱陣痛などのトラブルで緊急的に使用された場合、健康保険が適用されます。しかし、自然分娩を誘発する目的で使用されたときは健康保険は適用されません。

個人で契約している医療保険は、加入内容によって保険が効くケースと効かないケースがあるため、保険会社に確認してくださいね。

陣痛促進剤の使用前には医師からの説明を受けよう

陣数促進剤にはリスクもありますが、大切なのは無事に赤ちゃんが生まれてくるかどうかです。陣痛促進剤を使うことなく自然に産みたいと思っていても、赤ちゃんや母体のことを考えて投与したほうがいいと医師が判断することもあります。医師からの説明をしっかり聞いて、不安なことがあったら聞いておくようにしましょう。

お産の進み方は人それぞれ違います。実際に陣痛促進剤を使うことになったときに焦ったり迷ったりしないためにも、出産予定日が近づいたら、陣痛促進剤の効果や必要性、リスクなどを確認しておくと安心ですね。

※アンケート概要
実施期間:2017年5月26日~6月4日
調査対象:陣痛・出産の経験がある「こそだてハック」読者
有効回答数:369件
収集方法:Webアンケート

こそだてハックに「いいね!」して情報を受け取ろう