妊娠を目指して基礎体温グラフをつけている人は、毎日の体温の変化が気になりますよね。「妊娠したかも!」と思った矢先に基礎体温が下がったりと、一喜一憂することもあるかもしれません。今回は、妊娠すると基礎体温はどう変わるのか、妊娠超初期や妊娠初期に見られる体温の動きについてご説明します。
基礎体温とは?
基礎体温とは、運動や食事、感情の起伏など、体温に影響を与える条件を取り除いたときの体温のことです。一般的に、寝起き直後で体が一番安静な状態にあるときに測る体温のことを指します。
基礎体温を正しく測るには、朝目を覚ましたときに体をできるだけ動かさず、横になったままの状態で、舌の裏側に婦人体温計を当てて測定する必要があります。
女性の基礎体温は、生理周期によって、体温が低い「低温期(低温相)」と、低温期よりも0.3~0.6度体温が高くなる「高温期(高温相)」の二相に分かれるのが特徴です(※1)。
妊娠していないときの基礎体温は?
妊娠していないとき、排卵が起こっている人であれば、基礎体温は上のグラフのように「低温期」と「高温期」に分かれます。
低温期
生理開始から排卵日ごろまでの期間、基礎体温は「低温期」になります。
低温期、特に生理が終わってからの女性の体内では、卵子を包んでいる卵胞が発育し、卵胞から「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が分泌されます。エストロゲンの作用で子宮内膜が厚くなり、受精卵の着床(妊娠)に備えている状態です。
低温期の終盤に、ガクッと体温が下がる日があり、この前後2~3日のあいだに「排卵」が起こります。
高温期
排卵が起こると、卵胞が黄体という組織に変わり、体温を上げる作用がある「プロゲステロン(黄体ホルモン)」というホルモンが分泌されるため、基礎体温は「高温期」に入ります。
高温期は、プロゲステロンの作用によって子宮内膜の厚さが維持され、受精卵の着床により適した状態になります。
妊娠が成立しなかった場合、不要となった子宮内膜が剥がれ落ち、血液と一緒に体外に排出されます。これが「生理(月経)」です。
生理が来ると、基礎体温が下がり、ふたたび「低温期」に戻ります。
妊娠したときの基礎体温グラフは?
妊娠したときの基礎体温は、上のグラフのように、高温期が長く続きます。
これは、妊娠が成立すると、排卵後にできた黄体が妊娠黄体という組織に変わり、そこからプロゲステロンの分泌が続くためです。
プロゲステロンが分泌されているあいだは、受精卵を育てるために子宮内膜が厚いまま保たれるため、剥がれ落ちることがなく、生理が起こりません。
目安として、高温期が17日以上続いている場合、妊娠の可能性が高いといえます(※1)。
基礎体温がどうなれば妊娠検査薬を使える?
基礎体温を記録している人は、高温期が17日間続いたらすぐに妊娠検査薬で調べたくなるかもしれません。
しかし、一般的な妊娠検査薬で正確に判定できるのは、生理予定日の1週間後です。一般的には、高温期14日目が生理予定日にあたるので、高温期が17日間続いた時点では、検査薬を使うにはまだ早いといえます。
「高温期が17日以上続いている」だけでなく、「生理予定日を1週間過ぎでも生理が来ない」ときにはじめて、妊娠検査薬を使えると考えてくださいね。これより前にフライング検査してしまうと、正確な判定結果を得られないので、焦らずタイミングを待ちましょう。
妊娠超初期の基礎体温が高くても、流産する可能性はある?
高温期が17日以上続き、妊娠検査薬も陽性反応を示したのにもかかわらず、産婦人科のエコー検査で「胎嚢」(赤ちゃんを包む袋)が確認できる前に妊娠が中断してしまうこともあります。これがいわゆる「化学流産」です。
化学流産は、医学的には「生化学妊娠」といい、流産には含まれません。
かつては、病院で妊娠判定される前に化学流産が起こっても、気づくことなく次の生理を迎えていました。しかし最近では、市販の妊娠検査薬の精度が上がったことで、早く妊娠に気づく女性が増え、化学流産が判明する頻度が増えたのです。
化学流産の原因ははっきりわかっておらず、強い腹痛や大量出血などの症状は特に現れません。しかし、妊娠成立後、化学流産が起きるまでのあいだは、つわりなどの妊娠初期症状が現れる人もいます。
妊娠超初期に体温が下がることがあるの?
先述のとおり、妊娠すると高温期が長く続くのですが、実は上図のように、高温期の途中で突然体温が下がることもあります。これを「インプランテーションディップ」と呼びます。
ただし、これは医学的に根拠の裏付けがある現象ではなく、インプランテーションディップがなくても妊娠していた、ということも多くあります。あくまでも妊娠超初期に見られる一つの現象として、参考程度に考えてくださいね。
妊娠超初期は基礎体温以外にも変化がある?
妊娠超初期には、先述のような基礎体温の変化が見られることもありますが、そのほかにも下記のような体調の変化が現れることがあります。
● わずかな不正出血がある
● 胸が張る、痛い
● 体がだるい、眠い
● 味覚、嗅覚が変わる
● 情緒不安定になる
● 腰痛や胃痛がする
なお、これらの症状の現れ方には個人差があり、妊娠超初期の段階では何の変化も感じない人がほとんどです。一般的には、妊娠5週頃(生理予定日の約1週間後)から妊娠初期症状が出ると考えてくださいね。
妊娠初期に入ると基礎体温が下がるの?
妊娠が成立すると高温期が長く続きますが、「妊娠初期の途中で基礎体温が下がった」という人も多くいます。その理由として考えられるものは、次のとおりです。
正しく測れていない
基礎体温は、少しの体調や環境の変化によって変動します。
睡眠不足や室温の変化が原因で、いつもより基礎体温が下がることもあるので、できるだけ毎日同じ条件で落ちついて測るようにしましょう。
胎盤が完成してきた
先述のとおり、妊娠すると、卵巣内の「妊娠黄体」から分泌されるプロゲステロンの作用によって高温期が続きます。
妊娠7週頃になると、母体から胎児へ栄養などを送るための「胎盤」が作られはじめます。そうすると、プロゲステロンが作られる場所が少しずつ妊娠黄体から胎盤へと移り、卵巣内で分泌されるプロゲステロンの量は減っていきます(※1)。
プロゲステロンがほぼ完全に胎盤で作られるようになるのは、胎盤が完成する妊娠15週(妊娠4ヶ月末)頃です(※1)。この頃には、妊娠直後に比べるとプロゲステロンの増加のペースがゆるやかになるので、基礎体温がやや低くなることがあります。
妊娠初期に基礎体温が下がると、「赤ちゃんに何かあったのでは?」と心配になる妊婦さんもいるかもしれませんが、妊婦健診で特に問題がなければ、あまり心配しすぎないでくださいね。
流産の可能性はある?
妊娠初期に基礎体温が低いと、「流産の兆候なのでは?」と不安になる人もいるかもしれません。
しかし、仮にお腹のなかで赤ちゃんが亡くなってしまったとしても、妊娠黄体や胎盤からすぐにプロゲステロンが分泌されなくなるわけではないため、基礎体温の変化だけで流産かどうか判断するのは難しいといえます。
流産の症状として、性器出血や下腹部痛などが見られることも多いので、このような症状があった場合は基礎体温に関係なく産婦人科を受診しましょう(※1)。
基礎体温は妊娠チェックの目安に
基礎体温を日々記録していると、体温の上がり下がりに敏感になるもの。「ちゃんと妊娠したかな?」「赤ちゃんは無事かな?」と心配になってしまうこともあるかもしれませんが、基礎体温だけで妊娠の経過を判断することはできないので、目安のひとつとして考えてくださいね。
一番大切なのは、基礎体温だけでなく体調管理もしっかり行うことです。栄養バランスのとれた食事や十分な睡眠をとって、健康な体で新しい命を迎えてあげたいですね。