子宮は、妊娠・出産にかかわる大切な臓器です。生理が繰り返し起きたり、胎児を育てたりと、状況に応じた働きをしますが、実は様々な病気にかかる可能性もあり、30代女性の5人に1人は子宮に腫瘍が見つかるといわれています。今回は、子宮にできる腫瘍の種類や、良性と悪性の違いなどをまとめました。
子宮にできる腫瘍とは?良性と悪性の違いは?
「腫瘍」とは、体内にできるコブのようなもので、本来あるはずのない場所で勝手に細胞が増殖してできます。子宮にできる腫瘍のうち、約95%は子宮体部(子宮の上部分2/3)、残りの約5%は子宮頚部(子宮の下部分1/3)から発生します。
腫瘍は「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」の2つに分けられます。良性腫瘍は「他の細胞を破壊せずに腫瘍だけが大きくなる」もので、すぐに命を脅かすものではありません。子宮にできる腫瘍の多くが「子宮筋腫」という良性の腫瘍です。
一方、悪性腫瘍は、「体内で他の細胞を破壊して全身に広がっていく」ものです。子宮にできる腫瘍のうち、悪性化して「がん」になるものは0.5%以下といわれていますが、放置していると命に関わる危険性があるので、早期発見が大切です(※1)。
子宮の良性腫瘍の種類は?
子宮の良性腫瘍である「子宮筋腫」は、基本的には命にかかわるものではありません。しかし、悪化してしまうと貧血や不妊、出産の妨げになりうるので注意が必要です。
もし子宮筋腫が発見された場合は、症状、患者の年齢、今後の妊娠の希望、治療の希望などを総合的に考え、医師と相談のうえ治療方針を決めることが求められます。
子宮筋腫の中にもいくつかタイプがあり、筋腫が成長しないものもあれば、ある程度の大きさまで発育するものもあります。子宮筋腫は、できる場所によって主に次の3つに分類されます(※1,2)。
粘膜下筋腫
子宮内部を覆う「子宮内膜」という粘膜のすぐ下に発生し、子宮腔内に向けて大きくなっていくのが「粘膜下筋腫」です。
子宮筋腫のうち約5~10%の割合でできるもので、筋腫が小さくても「過多月経」などの症状が最も強く現れ、月経以外での出血も起きやすいのが特徴です。また、生理痛がひどくなり、月経困難症となることもあります。
筋層内筋腫
子宮内膜の外側にある「子宮筋層」で発生・発育するのが「筋層内筋腫」です。子宮筋腫の中では最も多く発生するタイプで、発生頻度は約70%を占めます。
筋層内筋腫は、小さいうちはほとんど症状が見られません。しかし、筋腫が大きくなるにつれて、子宮そのものも大きくなり、子宮の内側が広がります。それによって、生理のときに剥がれ落ちる子宮内膜が多くなるので、「過多月経」を引き起こします。
また、筋腫が何らかのメカニズムで子宮収縮を強くするため、下腹部痛などの月経困難症がひどくなることがあります。そのほか、膀胱が圧迫されて頻尿になることもあります。
漿膜下筋腫
子宮の外側を覆う「子宮漿膜(子宮外膜)」のすぐ下にできるのが「漿膜下筋腫」です。子宮筋腫の中では筋層内筋腫の次に頻度が高く、約10~20%の頻度で発生します。
漿膜下筋腫は症状がないことが多いですが、キノコ状になった茎がねじれて「茎捻転」を起こすと腹痛を伴い、巨大化して膀胱を圧迫すると頻尿が起きます。
なお、子宮筋腫の60~70%は、上で挙げた筋腫が2つ以上同時発生する「多発性筋腫」です。上記3種類のうち、同じ種類の筋腫がいくつかできることもあれば、異なる種類の筋腫が合併するケースもあります。
子宮の良性腫瘍は合併症を起こすこともあるの?
子宮筋腫はほとんどが良性腫瘍で、命を脅かす危険性はあまり高くありません。しかし、次のような病気を合併し、不妊の原因となることもあるので、定期的に子宮筋腫の検査を受けておくと安心です。
子宮内膜症
約20%の子宮筋腫に、「子宮内膜症」が合併しています(※1)。子宮内膜症とは、本来は子宮の中にしかないはずの組織が、卵巣や卵管など別の場所にできてしまう病気です。
子宮内膜症にかかると、子宮の外で剝がれ落ちた子宮内膜が癒着を起こし、卵管などをふさいで受精を妨げるなど、不妊につながることもあります。
子宮腺筋症
子宮筋腫は、高い確率で「子宮腺筋症」を合併することもわかっています(※1)。子宮腺筋症は、子宮筋層に子宮内膜が入り込み、エストロゲンによって増殖する病気です。
子宮腺筋症は30歳代後半から増えて40歳代で最も発症数が多く、不妊や初期流産を引き起こすこともあります。
子宮の悪性腫瘍の種類は?
子宮にできる悪性腫瘍は、命にかかわる危険性があります。どれも発症すると不妊につながりかねないものでもあるので、検査による早期発見・早期治療が大切です。
子宮頸がん
子宮の出入り口である「子宮頸管」にできるがんです。子宮頸がんの原因は主にヒトパピローマウイルス(HPV)感染で、特に30~40代の女性に発生数が多い悪性腫瘍です。
子宮頸がんは、発見が早ければ早いほど、子宮を温存して手術や放射線治療で治せるがんです。20歳からは、2年に1回の公費負担の子宮頸がん検診を受けることができるので、早期発見のために定期的に受けるようにしましょう(自治体によっては一部自己負担)。
子宮体がん
「子宮体部」という子宮の奥にできる子宮体がんは、発見しにくいがんの一つです。女性ホルモンである「エストロゲン」に長期間さらされることで発症しやすいといわれており、特に50歳代の女性に多く見られます。
子宮体がんを発症すると、多くの場合「不正性器出血」が見られるのが特徴です。生理以外や、閉経後でも性器からの出血が続くときは、念のため婦人科を受診しましょう。
子宮体がんは、公費の検診対象にはなっていないため、検診費用が自費となりますが、早期発見のためには定期的に受けることをおすすめします。
子宮肉腫
子宮肉腫は、主に「子宮体部」にできる悪性腫瘍で、その大部分は子宮筋層内に発生するものです。子宮肉腫は子宮体部にできる悪性腫瘍の約6%ですが、その原因はよくわかっておらず、女性ホルモンの状態とはほとんど関係がないといわれています(※3)。
見た目には子宮筋腫と区別しにくいですが、子宮筋腫とは違い、大きくなるスピードが速く、閉経後も子宮が大きくなっている場合、子宮肉腫が疑われます。初期段階はほぼ無症状ですが、不正出血や下腹部痛などの違和感があるときには、婦人科を受診しましょう。
子宮の腫瘍は良性でも悪性でも早期発見が大切
子宮の腫瘍は、良性であれ悪性であれ、必要な治療を早く受けることで、その後の妊娠の可能性を高めることにつながります。子宮の病気は命に関わることもあり、妊娠や出産など女性のライフイベントにも大きく関わってくるので、1~2年に1度は婦人科で検診・検査を受け、早期発見に努めましょう。
不正出血やおりものの変化など気になることがあれば、一人で悩まず、婦人科で医師に相談してくださいね。