子宮がん検診とは?検査の費用は?痛みや出血はある?

監修医師 産婦人科医 城 伶史
城 伶史 日本産婦人科専門医。2008年東北大学医学部卒。初期臨床研修を終了後は、東北地方の中核病院で産婦人科専門研修を積み、専門医の取得後は大学病院で婦人科腫瘍部門での臨床試験に参加した経験もあります。現在は... 監修記事一覧へ

近年、20代~30代の若い女性の間で、子宮頸がんが増加しています。子宮頸がんは婦人科で定期的に子宮がん検診を受けていれば早期に発見でき、治療で完治できる病気です。そこで今回は、子宮がん検診について、その方法や費用、痛みや出血はあるのか、検査結果の見方などをご説明します。

子宮がん検診とは?

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子宮がん検診とは、子宮にがんがあるかどうかを調べるための検診で、「子宮頸がん検診」と「子宮体がん検診」があります。ただし、子宮がん検診と呼ばれる場合、一般的には「子宮頸がん検診」を指すことが多いようです。

子宮頸がん検診は、地方自治体で費用を助成しているところも多くあります。これは、子宮体がんに比べて子宮頸がんの方が、若い年齢から高齢までと発症年齢の幅が広いこと、早期では症状が出にくいこと、検診での体への負担が少ないこと、早期発見しやすく早期治療により予後がよいことが理由です。

ただ、日本における子宮頸がん検診の受診率は、他の先進国に比べて低いという結果が出ています。アメリカでは子宮頸がん検診の受診率が85%であるのに対して、日本は38%です(※1)。これが、日本での子宮頸がん患者の増加に拍車をかけているといわれます。

子宮体がんについては、若いうちは比較的発症しにくいですが、全くかからないということではありません。症状があった際などは、必要に応じて検診が必要になります。

子宮がん検診で何がわかる?

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子宮がん検診では、子宮頸がんと子宮体がんに対して、次のような判断が可能になります。

子宮頸がん

子宮頸がんは、そのほとんどが「ヒトパピローマウイルス」への感染が原因で発症します。

ヒトパピローマウイルスは、性交渉経験のある女性のほとんどが一度は感染したことがあるくらい、ありふれたウイルスです(※2)。通常は感染しても、免疫機能で体外に出されますが、体外にウイルスが出されずに感染期間が長引いてしまうと、子宮頸部に根付いてしまうことがあります。

ヒトパピローマウイルスが子宮頸部に根付いて感染すると、特に自覚症状はないまま、子宮頸部の細胞が悪性へと変化していきます。これを「異形成」といいます。

子宮がん検診は、この異形成を見つけるのが目的です。

子宮がん検診を定期的に受けていれば、子宮頸部の異形成があるかどうか、ヒトパピローマウイルスに感染しているかどうかを発見でき、早めに治療が行えます。

子宮体がん

子宮体がんにかかると、一般的に不正出血などの自覚症状が現れますが、無症状のこともあります。

子宮がん検診の方法は?痛いの?出血することもある?

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子宮頸がん検診の場合は、問診で月経周期や生理痛の有無、妊娠歴や出産歴、閉経している場合は閉経年齢などを確認した後で、子宮頸部やおりものの状態を確認し、子宮頸部の細胞をブラシやへらなどで採取します。所要時間は5~10分ほどです。

細胞を採取する際に痛みはなく、時間的にも身体的にも負担の軽い検査です。ただし、細胞を採取する際に少しこするので、少量の出血が見られることはあります。

子宮体がん検診の場合は、子宮内の子宮内膜の細胞を採取して観察する必要があるため、細胞を採取する際に、少し痛みを感じることや出血が見られることがあります。

どちらの検診も、細胞の検査で異常が認められた場合は精密検査に進み、その結果によって経過観察か、手術や放射線治療などを行うかを検討することになります。

子宮がん検診は生理で出血していても受けられる?

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子宮がん検診は、受ける医療機関にもよりますが、生理期間前半などの出血が多いタイミングでは受けられないことが多いです。

それは、検査に使用するための細胞が、出血の影響できちんと採取できない可能性があるためです。採取できなかった場合は、再検査になってしまうこともあります。

子宮がん検診の予約をするときは、あらかじめ生理に重ならないような日程で予約しておくことをおすすめします。

子宮がん検診の費用や料金は?

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自分で婦人科を受診して子宮がん検診を受ける場合は、原則自費になります。子宮頸がん検診も子宮体がん検診も、費用や料金は病院によって様々ですが、3,000円~1万円程度が相場です。

地域の自治体によっては、無料〜2,000円程度で受けられる助成金制度もあります。助成が適応される年齢が決められていることが多いので、子宮頸がん検診や子宮体がん検診を受ける場合は、一度住んでいる地域の保健福祉センターなどに確認してみましょう。

子宮がん検診の結果の見方は?

子宮がん検診の検査結果の表示方法は、子宮頸がん検診と子宮体がん検診で異なります。

子宮頸がんでは、「ベセスダ分類」という分類が使われ、子宮体がんでは、がん細胞の進行度合いによって3段階に分けられます。以下にそれぞれの評価について詳しくご紹介します。

子宮頸がんのベセスダ分類

NILM

細胞は全て正常で、今は異常が見られない状態。

ASC-US

異形成とまでは言い切れないが、細胞に変化が見られる状態。HPV検査(ヒトパピローマウイルスに感染していないかの検査)をし、陰性なら1年後に細胞診(細胞を採取して顕微鏡で観察する検査)、陽性なら精密検査が必要。

ASC-H

中度〜高度な細胞異形成の可能性が疑われる状態。

LSIL

HPV感染や軽度の細胞異形成が見られる状態。

HSIL

中等〜高度な細胞異形成や、上皮内がんが考えられる。

SCC

明らかな扁平上皮がんが疑われる。

子宮体がんの細胞診の判定

陰性

細胞の異常が全く見られない状態。正常で、子宮内の細胞にも異常はない。

疑陽性

細胞に異常があるが、がんが原因だと断定できない状態。

陽性

細胞に異常があり、がんが原因だと断定できる状態。

子宮がん検診の再検査や精密検査が必要なのはどんなとき?

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子宮がん検診の結果によっては、再検査や精密検査を行うことがあります。それぞれ、下記のような検査が行われます。

子宮頸がん検診

子宮頸がん検診の結果がNILM、もしくはASC-USで、HPV検査が陰性と診断された場合以外は、精密検査を行います。

精密検査ではまず、コルポスコープという専用の器具を使って、子宮頸部や腟壁を拡大し、異常がないか見ていきます。その診断結果によって、組織の一部を検査する組織診(生検)が行われ、異形成があるかどうかや、異形成の度合いなどを詳しく診断します。

子宮体がん検診

子宮体がんの検査でクラス2b以上と診断されたときは、いくつかの再検査や精密検査を行い、確定診断を行います。

検査には、子宮内膜を採取して組織診断を行う子宮内膜組織診のほか、子宮鏡や超音波検査、腫瘍マーカーがあります。

子宮がん検診を受ける場所や頻度は?

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子宮がん検診は、婦人科のある病院であればほぼどこでも受けることができます。また、自治体で集団検診などが行われていれば、地域の健診センターなどで受診することもできます。

子宮頸がんは一般的に進行スピードが穏やかで、病気が進行した状態になるまで2〜3年かかると言われています。そのため、2年に1回の検査で十分有効であるとする意見が多いです。

ただ、進行が早まる可能性もゼロではないので、念のため、年に1回の検診を受けておくことをおすすめします。

子宮体がんの場合、40歳以上・出産経験がない・肥満・月経不順など、子宮体がんになりやすい条件にあてはまる人は、無症状でも、年に1回の検診を受けるようにしましょう。

子宮がん検診は妊娠中に受けても大丈夫なの?

子宮頸がん検診については、妊娠中に検査を行っても基本的には問題ありません。

むしろ、妊娠中に子宮頸がんに気づかず、子宮頸がんが進行するということが無いよう、多くの病院で妊婦健診の項目に子宮頸がん検診が入っています。

妊娠が進むと子宮は出血しやすくなるため、比較的出血しにくい妊娠初期に行うことが多いですが、必要があれば妊娠初期以外でも検査を行うことがあります。

ただし、子宮体がん検診は、妊娠中や妊娠の可能性がある場合には受診できません。妊娠の可能性がある場合は、検査を受ける前に医師に相談してください。

子宮がん検診の定期化で、早期発見・早期治療を

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子宮頸がんも子宮体がんも、早期に発見し、早い段階から治療を行うことで、よい予後が期待できます。そして、早期発見のためには子宮がん検診が欠かせません。

20代以降は、自覚症状がなくても、定期的に子宮頸がん検診を受けてください。また、不正出血があった場合や、症状がなくても40代以降であれば、子宮体がん検診も受けることがすすめられます。

検診を受けるのを忘れてしまいそうだという方は、20歳を過ぎたら毎年誕生月は検診を受けると決めておくと忘れずにすみますよ。今のうちからスケジュールに検診の予定を入れておくなど、子宮がんに対する意識を持つようにしてくださいね。

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