子宮体がんとは?原因や症状、治療法は?妊娠できるの?

監修医師 産婦人科医 山本 範子
山本 範子 日本産科婦人科学会専門医。平成5年、日本大学医学部卒。日本大学附属病院および関連病院で産婦人科医として経験を積み、その間に日本大学総合健診センターで婦人科検診にも力を注いできました。現在は港区の日野原... 監修記事一覧へ

子宮にできるがんのうち、約30~40%を占める「子宮体がん」(※1,2)。発生する場所が子宮の奥なので、発見が難しいがんの一つとして知られています。今回は、「もし子宮体がんになってしまっても妊娠できる?」「子宮体がんを予防するには?」といった、気になる疑問を、子宮体がんの原因や症状などの基礎知識と合わせてご紹介します。

子宮体がんとは?

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子宮体がんとは、子宮の内側の粘膜(子宮内膜)から発生するがんのことで、「子宮内膜がん」とも呼ばれています。

子宮は、妊娠した際に胎児を育てる「子宮体部」(子宮の上部2/3)と、産道の一部になる「子宮頸部」(子宮の下部1/3)に分けられます。このうち、子宮体部にできるがんは「子宮体がん」、子宮頸部にできるがんは「子宮頸がん」と診断されます。

子宮体がんにかかりやすい年齢は?

女性 高齢 更年期 のぼせ ほてり ミドルエイジ

子宮体がんと診断される女性は、40代から増加し、50代~60代の閉経前後の年齢が発症のピークです(※3)。

子宮体がんには主に2つのタイプがあります。女性ホルモンのエストロゲンに依存して発生するものが8~9割を占め、多くは、閉経前~閉経直後に発症します。エストロゲンと関係なく発症するタイプの子宮体がんは、閉経してから発生しやすくなります(※1)。

子宮体がんの原因は?

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子宮体がんの原因の一つとして、女性ホルモンのエストロゲンが影響していると考えられています。通常、女性の体内ではエストロゲンとプロゲステロンがバランス良く分泌されていますが、何らかの理由でエストロゲンの作用が強くなりすぎると、子宮体がんの発生率が高まることがわかっています(※1)。

エストロゲンの刺激が、過剰に続いてしまうリスク要因として、次のようなものが挙げられます(※1,3)。

● 肥満、高血圧、糖尿病である
● 乳がん治療でタモキシフェンを投与されている
● エストロゲン製剤を長期的に使っている
● 無排卵周期症やPCOSなど卵巣機能の異常により、月経不順がある
● 不妊である
● 出産の経験がない

近年では、食生活の欧米化による肥満や糖尿病の増加、出産年齢の高齢化や不妊症の増加などに伴い、日本でも子宮体がんの発症数が増えています。しかし、早期であれば治る可能性が高いことから、早期発見が重要ながんといえます。

子宮体がんの症状は?

女性 腹痛

子宮体がんの初期症状として、最も多いのは不正出血で、その他の症状として過多月経や水っぽい黄色~褐色のおりものが出ることもあります。また、がんが進行すると腰痛、下腹部痛が現れる場合もあります。

不正出血があっても、異常に量が多いか、数日間続くものでなければ、すぐに病院へ行こうとはなかなか考えないかもしれません。しかし、閉経後の不正出血は、子宮体がんなど何らかの体調不良のサインであることが多いので、気づいたら迅速に病院を受診して原因を突き止めることが大切です。

なお、子宮頸がんは進行してからでないと不正出血は起きませんが、子宮体がんの場合は比較的初期の段階で見られます。そのおかげで子宮体がんは、早期のステージで発見されることが多く、そのため予後も良好になるという結果につながっています。

子宮体がんの検査方法は?

婦人科 健診 内診

子宮体がんは、子宮体がん検診で検査することができます。内診のあと、子宮内部に細い器具を挿入し、子宮の内側をこすって細胞組織を採取する、「子宮内膜細胞診」という検査を行います。このとき、人によっては少し痛みを感じることもあります。

この検査で採取した組織を調べ、異常が見られたときには超音波(エコー)検査や、CT・MRIによる画像検査、さらに詳しい組織診断などの精密検査を行い、経過観察か手術の選択を検討します。

なお、20歳から2年に1回自治体の補助がある「子宮がん検診」は、一般的に「子宮頸がん検診」を指し、子宮体がんの検査は自治体によって補助が出る場合と出ない場合があります。そのため、検査が自費になることもありますが、40歳を過ぎたら定期的に受けることをおすすめします。

子宮体がんのステージとは?

数字 1・2・3 ステップ

他のがんと同じように、子宮体がんにもステージ(進行期)があり、ステージが進むほど治療法が限られてきます。

● I期:がんが子宮体部のみに見られる。子宮内膜の外側にある「子宮筋層」への侵入が1/2以下の場合IA期、1/2以上の場合IB期という。
● II期:がんが子宮体部を越えて子宮頸部に広がっている(ただし子宮内にとどまっている)
● III期:がんが子宮外に広がっているが、小骨盤を越えていない/リンパ節に転移している
● IV期:がんが小骨盤を超えている/膀胱や腸の粘膜を侵している/遠隔転移している

子宮体がんの治療法は?妊娠できるの?

病院

子宮体がんの治療は基本的に手術になります。進行状況(ステージ)や妊娠の希望があるかどうかにもよりますが、子宮を摘出する「単純子宮全摘術」や「広汎子宮全摘出術」、「準広汎子宮全摘出術」とあわせて、卵巣・卵管・リンパ節を摘出するのが一般的です。

手術後、摘出した組織を検査し、再発の可能性が高いと判断された場合には、放射線治療や抗がん剤治療も行われます。

妊娠を希望している若い女性の場合には、子宮や卵巣を摘出せずに、子宮内膜全面掻爬術と、「黄体ホルモン療法」を組み合わせた治療が取られることもあります。黄体ホルモン(プロゲステロン)製剤には、子宮内膜細胞の増殖を抑える作用があります(※1)。

ただし、ホルモン治療が適応できるのは、子宮体がんのステージがIA期で内膜にとどまっているものであり、プロゲステロンによく反応する「高分化型腺癌」のケースに限られます。担当医とよく相談のうえ、治療法を選択しましょう。

できるだけ早い妊娠を望むときには、ホルモン治療によって症状が治まったあと、排卵誘発剤を使用したタイミング法や体外受精といった不妊治療を行う女性も多く、治療後に赤ちゃんを授かる人もいます。

ただし、約半数の人が不妊治療中に子宮体がんを再発するともいわれており、十分な経過観察が必要です(※4)。

子宮体がんの予防法は?

年齢が若いうちは放っておきがちな月経不順ですが、もしかすると無排卵やPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)などの病気が隠れているかもしれません。月経不順は子宮体がんのリスク要因になるので、早めに婦人科を受診し、適切な治療を受けておきましょう。

また、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病も、子宮体がんにかかるリスクを高めてしまいます。高カロリーの食事を摂りすぎていないか、食生活を見直すのも普段から心がけることができる予防法の一つです。

子宮体がんは早期発見が大切

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子宮体がんは、早期発見が可能で予後が良いがんである一方、治療は子宮の切除が基本となっているがんでもあります。妊娠を望んでいる女性にとっては、難しい選択となるかもしれません。

子宮温存治療ができるケースはそれほど多くありませんが、医師と相談しながら納得のいく治療方法を検討しましょう。

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