「妊娠中はビタミンAの過剰摂取に気をつけて」とよく耳にしますよね。でも、どんな食べ物にビタミンAが含まれていて、どのくらいなら摂取してもいいのか疑問に感じている妊婦さんも多いのではないでしょうか。そこで今回は、妊娠中、特に妊娠初期にビタミンAを過剰摂取するリスクや1日にどのくらいなら摂取してもいいのか、摂取するときの注意点についてご説明します。
ビタミンAとは?妊娠中の風邪予防に効果があるの?
「ビタミンA」は、脂溶性のビタミンの一種です。
大きくわけて、うなぎやレバーなどの動物性食品に含まれる「レチノール」と、にんじんやほうれん草などの植物性食品に含まれる「βカロテン」の2種類があります。
一般的に、ビタミンAというとレチノールを指します。βカロテンは体内でビタミンAに変換されるので、総称してプロビタミンAとも呼ばれます。
ビタミンAには粘膜を強く保ち、体の抵抗力を高める効果があります。普段からビタミンAを摂取していると粘膜が強くなり、病原菌などが侵入するのを防いでくれるため風邪を引きにくくなります(※1)。
妊娠中は免疫力が低下しているうえに、風邪を引いても薬を気軽に飲めないので、できるだけ食事などの生活習慣で風邪を予防できるといいですね。
また、ビタミンAは目の健康維持や、暗い所で目が見えにくくなる夜盲症の予防、動脈硬化の予防にも効果を発揮します(※1)。
最近の研究によると、ビタミンAにはがんを抑制・予防する働きもあるともいわれています(※1)。
妊婦はビタミンAを摂取していいの?妊娠初期は?
妊婦は、推奨量を超えるビタミンAの過剰摂取に気をつけるようにいわれますが、植物性食品に含まれるβカロテン(プロビタミンA)であれば気にする必要はありません。
妊娠中のビタミンAの摂取で問題になるのは、レチノールを多く含む食品を継続的に摂取した場合や、サプリメントや医薬品によりビタミンAを過剰に摂取した場合です。
レチノールは、肝臓に蓄積し、体外に排出されにくい特性があります。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、ビタミンAを過剰に摂取し続けると胎児の奇形を発症するリスクが高まるとされているため、レチノールの摂取量に注意が必要です(※2)。
特に妊娠初期(妊娠15週まで)は胎盤が未完成で、食べ物による胎児への影響が大きいため、レチノールの摂取量に注意が必要です(※3)。
レチノールは主に、レバー(鶏・豚・牛)、うなぎ、銀だら、あなごなどに多く含まれます。
下記に、ビタミンAを多く含む食品の、レチノールの量(100gあたり)をまとめました。
食品100g当たりのレチノール活性当量(※4)
- 鶏レバー(生):14,000μgRAE
- 豚レバー(生):13,000μgRAE
- 牛レバー(生):1,100μgRAE
- やつめうなぎ(生):8,200μgRAE
- うなぎのかば焼き:1,500μgRAE
- 銀だら(生):1,100μgRAE
- あなご(生) :500μgRAE
- 鶏卵全卵(ゆで) :130μgRAE
- プロセスチーズ :240μgRAE
レバーの中では、鶏と豚が特にレチノールを多く含んでいるので、妊娠初期はできるだけ食べないほうが安心です。
食品安全委員会によると、イギリスでは、「妊娠中はビタミンAを含むサプリメントを摂らないように」と注意喚起が行われています。サプリメントからの、ビタミンAの過剰摂取にも注意してくださいね(※5)。
妊婦はビタミンAを1日どのくらい摂取していいの?
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、女性のビタミンAの食事摂取基準(推奨量)は以下の通りです(※2)。
- 18〜29歳:650μgRAE
- 30〜49歳:700μgRAE
妊娠後期のみ、上記に80μgRAEを足した量が推奨量になります。いずれも、プロビタミンAを含む量です。
上記の摂取基準量(推奨量)から妊婦が1日にどのくらいの量のうなぎやレバーを食べられるか計算すると、うなぎのかば焼きは約50g、鶏レバーは約5gです。ほんの少しの量しか食べられないことがわかりますね。
耐容上限量(ほとんど全ての人が、過剰摂取によって健康障害を起こすことのない最大限の量)は、以下の通りです(※2)。
- 18〜49歳:2,700μgRAE
妊娠中、とりわけ妊娠初期にうなぎやレバー類といったレチノールを多く含むものを食べるときは、できるだけビタミンAの推奨量を超えすぎないようにしましょう。食べ過ぎたとしても、耐容上限量を超えないように気をつけてくださいね。
もし、ビタミンAを多く摂りすぎてしまった日があったら、週単位、月単位で考えながら、食べる量を調節していけば大丈夫ですよ。
妊婦中は緑黄色野菜でビタミンAを補おう
ビタミンAには、風邪予防をはじめとした様々な健康効果があるので、妊娠中にも不足しないように摂りたい栄養素です。
ただし、前述のとおりうなぎやレバーのような動物性の食べ物から摂取するのではなく、植物性の食べ物から摂取するようにしましょう。
ビタミンAのなかでもβカロテンであれば過剰摂取の心配はないので、安心して食べられますよ。可食部100gあたりにカロテンを600μg以上含む野菜を、緑黄色野菜といいます。
緑黄色野菜に含まれるβカロテンは、油脂分といっしょに摂ると吸収率がアップします。炒めものにしたり、肉と一緒に調理したりするのがおすすめです(※1)。
緑黄色野菜には、モロヘイヤ、にんじん、小松菜、春菊、ほうれん草、西洋かぼちゃ、チンゲン菜といった野菜があります。
妊婦はビタミンAとバランスよく付き合おう
ビタミンAには体に良い効果がたくさんあります。
レチノールを豊富に含む動物性食品の摂取量に気をつけながら、βカロテンを含む緑黄色野菜を積極的に食べて、ビタミンAを摂取するようにしましょう。
「妊娠中に食べてはいけないもの」を気にしすぎてもストレスが溜まってしまいます。どんな食べ物でも、バランスよく食べることが大切です。
体に良い栄養素を適度に摂りながら、お腹の中の赤ちゃんにたくさんの栄養を注いであげてくださいね。