妊婦は胃薬を飲める?妊娠中の胃痛に市販薬を飲んでも大丈夫?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

妊娠中は体に様々な不調が現れます。胃の不快症状もそのひとつ。胃薬を飲んでスッキリしたいところですが、妊娠中に胃薬を服用しても良いのでしょうか?今回は妊娠中に胃薬を飲んでもいいのか、市販されている胃薬の中で飲んでよいもの・避けるべきものについてご紹介します。

妊婦は胃が痛くなりやすい?

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妊娠中は、みぞおちのあたりがキューッと締め付けられる、チクチク・キリキリ痛むなど、胃痛や胃の不快感を覚えることがよくあります。

妊娠初期はつわり、妊娠中期や後期は、大きくなった子宮が胃を圧迫することが主な原因です。

また妊娠中は、ストレスが原因で胃が痛くなってしまうこともあります。初めての経験に対する不安や、出産・育児への緊張がストレスになって、自律神経が不安定になり、胃に痛みが現れるのです。

妊婦は胃薬を飲んでもいい?妊娠初期でも大丈夫?

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「妊娠すると薬を飲んではいけない」と思っている人も多いかもしれません。しかし、大切なのは「どのような薬を、いつ使用するか」ということであり、妊娠中に薬を一切飲んではいけないというわけではありません(※1)。

ただし、妊娠中はママが口にしたものが少量であっても胎児に移行することがあるので、薬の服用には慎重になる必要があります。

その薬の服用がどれだけ治療に大切か、胎児に対してどのようなリスクがあるかを総合的に判断し、服用の有無を決めていくことが大切です。

それは、赤ちゃんにとって大切な器官が作られる妊娠初期だけでなく、赤ちゃんがたくさんの栄養を必要とする妊娠中期や後期でも同じです。

ここからは、代表的な胃薬と妊娠時の服用に関してご説明しますが、妊娠中の服用は、自己判断せずに医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

妊娠中に病院で処方される胃薬は?ムコスタやセルベックスは?

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妊娠中の胃痛を病院で相談すると、胃腸の粘膜保護成分として比較的作用が緩やかな「レバミビド(ムコスタ)」や「テプレノン(セルベックス)」といった胃薬を処方されることがあります。

これらは医師が妊娠中の服用でも有益だと判断した場合に処方されるものです。服用することで、流産や、妊娠に有害なことがあったという報告はありません。

妊娠中にもよく使われている薬で、服用に際して特に心配はないと考えられています(※2)。

また、「スクラルファート」や「水酸化アルミニウムゲル製剤」を含む「アルサルミン」や「マーロックス」などの胃薬は、消化管からほぼ吸収されず胎児に影響がないとされています(※2)。妊娠初期から後期まで比較的安心して飲める薬なので、まずはこれらが処方されるのが一般的です。

ただし、どの薬も自己判断での使用は控え、服用の前に、医師や薬剤師としっかりと相談するようにしてください。

妊娠中に飲める市販の胃薬は?太田胃酸、ビオフェルミンは?

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市販薬は、副作用や相互作用のリスクの高さに応じて4つに分類されています。もっとも注意が必要な「第1類医薬品」、次に注意が必要な「第2類医薬品」、比較的副作用が少ない「第3類医薬品」、作用が穏やかで副作用のリスクが最も小さい「医薬部外品」です。

どれも処方薬に比べると作用は穏やかですが、処方薬に使われている成分がそのまま含まれている薬もあるので、注意が必要です(※1)。

下記の薬は、公式サイトや添付文書にて「妊娠中でも服用できる」としているものです。ただし、妊娠中は体の変化も大きく、状態は妊婦さんによって異なるので、服用の前に必ず医師や薬剤師に相談してください。

医薬部外品

エビオス錠

ビール酵母に含まれる栄養素の働きで、胃腸の働きを活発にします。

効果・効能に「妊産婦・授乳婦・虚弱体質者の栄養補給」と記載されており、妊娠中でも服用が可能です(※3)。

第3類医薬品

太田胃散チュアブルNEO

水がなくても服用できる胃薬です。胸やけ、胃の膨満感、胃の不快感、胃痛など、胃のあらゆる症状に効果が期待できます。

胎児に影響のある成分は配合しておらず、妊娠中でも服用できるとされています(※4)。

ビオフェルミン健胃消化薬錠

乳酸菌や消化酵素、生薬の働きで、胃を強くし、腸にも働きかける胃薬です。

公式サイトには、妊娠中の服用は特に問題なく、用法や用量を守って、症状のあるときに服用するように記載されています(※5)。

第2類医薬品

太田胃散

生薬の効果で、弱った胃を元気にしてくれます。独自の製法による、スッキリとした服用感が特徴的とされています。

胎児に影響のある成分は含まれてないため、妊娠中でも服用できるとされています(※4)。

第1類医薬品

ガスター10

胃痛、もたれ、胸やけ、むかつきの症状を胃酸の分泌をコントロールします。

基本的に第1類医薬品は、服用に際してやや注意が必要ですが、ガスター10は医師が有益だと判断した場合は、妊娠中でも服用できるとされています(※2)。

妊娠中に飲んではいけない胃薬は?

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「プロスタグランジンE1誘導体」という成分が含まれる「サイトテック」などの胃薬は、強力な子宮収縮作用があるため、妊娠中の投与が禁忌とされています(※2)。

添付文書にも、妊娠中の服用によって、流産や子宮出血がみられたとの報告があると記載されています(※6)。

サイトテックは市販されていませんが、以前病院で処方されたものが家にあるという場合に、間違って服用しないようにしてください。

妊娠中は胃薬を飲む前に、生活改善でトラブルを防ごう

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妊娠中に服用できる胃薬もありますが、服用しなくて済むならそれに越したことはありません。日々の生活のなかで食べすぎないようにする、消化にいいものを食べるなどの工夫だけでも、症状が改善することはありますよ。

まずは日々の暮らしを改善して胃の調子を整え、それでも調子が悪いときには医師に相談してください。薬の服用については、自己判断しないようにしましょう。

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