出産後直後は体中が痛くて、その回復に努めることで精いっぱいですが、出産直後から2週間ほど経ったとき、ふと股のあたりに痛みを感じる人が多くいます。これは「恥骨痛」と呼ばれるものですが、なかには歩く度に激痛が起きたり、寝ているだけでも痛みを感じたりすることも。デリケートな部分のため、恥ずかしくて病院にも行きづらいかもしれませんが、早めに改善することが大切です。今回は産後の恥骨痛について、原因と対処法をご紹介します。
そもそも恥骨痛とは?産後に現れる症状は?
恥骨痛とは、股あたりの恥骨に現れる痛みのことです。ただし、恥骨そのものではなく、左右にある恥骨を結ぶ軟骨である「恥骨結合」に痛みが出ています。この恥骨結合が損傷することによって、恥骨痛が現れるのです。
産後の恥骨痛の症状には個人差があり、生理痛のようなチクチクした痛みを感じる人もいれば、歩けないほど強い痛みを感じる人もいます。
産後の育児で忙しいママは放っておきがちですが、徐々に痛みが激しくなることもあるので、できるだけ早く対処をしましょう。
産後に恥骨痛を引き起こす原因は?
産後は、なぜ恥骨結合部分が損傷しやすいのでしょうか?産後の恥骨痛には、出産とホルモンが関係しています。
出産時に胎児が産道を通るときに骨盤が開き、恥骨結合部分が伸びたり捻じれたりすることによって損傷してしまうと、産後の恥骨痛につながります。特に、妊娠前や妊娠中から恥骨痛があった、姿勢が悪い、脚を組みやすい、などで骨盤が歪み気味だった人は、恥骨痛が起きやすくなります。
「リラキシン」という女性ホルモンも恥骨痛に関係しています。リラキシンには関節や靱帯を緩める働きがあり、このホルモンの分泌量が増えることによって、分娩の際に赤ちゃんが産道をスムーズに通れるようになります。
リラキシンが分泌されると、恥骨結合も緩むため、恥骨痛の原因となることがあります(※1)。
また、産後の寝方が悪いと骨盤の歪みがひどくなり、恥骨痛を引き起こすこともあります。
産後の恥骨痛はいつまで続くの?
産後の恥骨痛は、骨盤の歪みや、恥骨結合の損傷の程度によって、治る時間に個人差があります。産後1ヶ月を過ぎた頃に治ったという人もいれば、産後6ヶ月まで痛みが続いた人もいます。
出産による損傷が原因であれば、産褥期(産後6~8週間)を過ぎるまでに自然に治まることが多いのですが、骨盤がひどく歪んでしまっている人は長く痛みが続きやすい傾向にあります。
生後1ヶ月健診の時点でも完治していない場合は、健診のときに医師に相談してください。また、産後1ヶ月未満でも、立ち上がれないほどの激しい痛みがあるときは、早めに医師に診てもらいましょう。
産後の恥骨痛には、どう対処したらいいの?
産後の恥骨痛の原因である恥骨周辺の歪みは、すぐに戻るということはありません。根気強くゆっくり歪みを治していく必要があり、その方法としては以下のようなものがあります。
骨盤ベルトを着用する
恥骨痛の対処法として、まずは骨盤ベルトがおすすめです。骨盤ベルトは骨盤を安定させる効果があり、歪みの解消につながります。
骨盤ベルトはきつすぎると、血流を悪くする可能性があります。骨盤ベルトの正しい着用方法は、産院で助産師や医師に指導してもらってくださいね。恥骨痛を長引かせないために、出産直後や翌日から骨盤ベルトを使い始める人もいます。
骨盤矯正体操をする
個人差はありますが、歪んだ骨盤は、産後6ヶ月頃までが戻りやすいといわれていて、この時期に骨盤矯正の体操をすることにより、恥骨痛を緩和できることがあります。
産後1ヶ月は、出産で疲れ切った体を回復させる大事な時期です。骨盤矯正体操は、生後1ヶ月健診で医師に許可をもらってから、少しずつ始めてみるといいでしょう。
また、産褥期でもできる「産褥体操」もおすすめです。
整体の施術を受ける
産後の骨盤の歪みを矯正する整体もあります。産後1ヶ月健診でママに健康上の問題がないと診断されたら、整体の施術を開始しましょう。
整体院を選ぶときは、産後ママ向けのメニューやコースがあるか、経験豊富な整体師がいるか、といったことを事前に確認しておくと安心ですね。
赤ちゃんを預かってくれる託児所がついているところもありますよ。
産後ヨガをする
産後のヨガは骨盤矯正効果があるだけではなく、リラックス効果や基礎代謝を高める効果もあります。産後ママに向けたクラスがある教室を探してみましょう。
産後ヨガも他の運動と同様、1ヶ月健診のときに医師に許可をもらってから始めてください。
教室に通わずに、自宅でヨガを行うのもおすすめです。無理をせず、疲れたら休憩をするようにしましょう。
安静にする
産後の恥骨痛の対処法として大切なのが、産後1ヶ月間は特に無理をしないことです。体調が少しずつ戻ってきて、妊娠前と同じように家事をしたり、ものを持ち上げたりすると、歪んだ骨盤に負担をかけてしまいます。
反対に、全く動かないというのも、広がった骨盤が戻らず歪みが長引く原因になります。適度に骨盤矯正体操やヨガをしながら、できるだけ安静を心がけてくださいね。
産後の恥骨痛は我慢せず対処法を見つけよう
産後の恥骨痛は自然に治まっていくことが多いのですが、立つのがつらいほど激しい痛みを感じたら、我慢せず早めに病院を受診してください。
骨盤の歪みが原因になって起こっていることも多いので、医師とも相談しながら、骨盤ベルトや整体を利用して、少しずつ歪みを矯正していきましょう。
恥骨痛を抱えながら、赤ちゃんをお世話するのは大変なことです。元気に育児ができるように、痛みから目をそらさず、しっかり対処することを心がけてくださいね。