出産が始まる兆候として見られることがある「おしるし」。その色や状態はさまざまですが、おしるしがあったからといって、あわてて病院へ行く必要はありません。しかし、出産のときが近づくにつれて不安や緊張が高まってくると、「おしるしではなくて異常出血かも?」と心配になってしまうこともあるかもしれません。今回は、おしるしと異常出血の違いや、陣痛中に出血があったときの対応などについてご説明します。
おしるしとは?
子宮口が開きはじめると、胎児と羊水を包む「卵膜」の一部が剥がれ、子宮頸管粘液と混ざり合ってわずかに性器から出血することがあります。これが「おしるし」で、出産兆候の一つです。
おしるしから陣痛開始までにかかる時間は、個人差があります。おしるしから数日で陣痛が来ることもあれば、1週間経っても陣痛が来ないケースもあります。またおしるしが全くないままお産を迎える妊婦さんも多くいます(※1,2)。
おしるしの出血量はどれくらい?
おしるしで出る血の量は人それぞれです。
「おしるしはなかった」「どれがおしるしなのかわからなかった」「出産後に振り返ると、あれがおしるしだったのかなと気づいた」という人がいる一方で、「月経のように出血が多かった」という人も。
一時的に出血量が多いからといって心配しすぎる必要はありませんが、生理用ナプキンを当てても漏れてしまうほど量が多かったり、何日も出血が続いたりするときは、異常出血の可能性も考えられるため、すぐにかかりつけの産婦人科を受診してください。
臨月の陣痛中に出血があったら、おしるし?
陣痛が来てから、性器から出血が見られることもあります。陣痛の痛みがつらいうえに出血まであると、妊婦さんは焦ってしまうかもしれませんが、まずは落ち着きましょう。
異常出血ではなく、おしるしの可能性が高いですが、念のためかかりつけの病院に連絡し、陣痛の痛みの感覚と一緒に出血の状況を伝え、すぐ病院へ行くべきかなど医師の指示を仰ぐようにしましょう。
出血量やタイミングだけで正常かどうかを自己判断するのは難しいものです。迷ったときはすぐに産婦人科医に相談し、できるだけ早い段階で適切な対処ができるよう心がけてくださいね。
粘り気や色で、おしるしか異常出血か分かる?
おしるしは、卵膜や子宮頸管の粘液が混ざり合っているものなので、不正出血と比べると少し「粘り気」があるのが特徴です。
また、おしるしの色は、ピンク、褐色、茶色であることが多いのですが、血液の量が少なければ卵白のような半透明のおしるしが出てくることもあります。
ただし、人によっては鮮血のような真っ赤なおしるしが出ることもあるので、色や状態だけでおしるしと異常出血を見分けるのは難しい可能性があります。
お腹の痛みで、おしるしか異常出血か分かる?
出血の有無を問わず、最も意識しておきたいのが「お腹の痛みを伴っているかどうか」です。腹痛の強さや痛みの間隔は、何らかの異常が起きているのかどうか見分けるための一つのポイントとなります。
不規則な痛みで、安静にすると治まる
分娩前の準備運動として、「前駆陣痛」というものがあります。不規則にお腹が痛み、弱くなったり強くなったりするのが特徴で、安静にしていれば自然と治まることがほとんどです。
このような腹痛があり、性器から出血がある場合、おしるしの可能性が高いと考えられます。前駆陣痛があってもすぐに病院へ行く必要はありませんが、お産がもうすぐ始まる兆候だと考え、落ち着いて過ごしましょう。
なお、前駆陣痛の痛みは人それぞれで、お腹に張りを覚える程度の人もいます。
痛みの間隔が一定で、だんだん強くなる
腹痛を感じる間隔が一定で徐々に短くなり、痛みが少しずつ増すようであれば、「陣痛(いわゆる本陣痛)」だと考えられます。
前述の前駆陣痛はお産に向けた準備運動のようなものですが、本陣痛は子宮が収縮して赤ちゃんを押し出すための痛みです。この前後に少量の性器出血があれば、おしるしの可能性が高いでしょう。
本陣痛が来たら、痛みの間隔をアプリなどで記録しておき、あらかじめかかりつけの産婦人科医から指示された間隔まで縮まったら病院を受診しましょう。
急に下腹部が痛み、お腹がカチカチに張る
急激な下腹部痛があり、おなかが板のようにカチカチに張ったら、「常位胎盤早期剥離」が起きている恐れもあります。
これは、赤ちゃんが生まれる前に胎盤が子宮から剥がれ落ちてしまう状態で、母体・胎児ともに命に危険が及ぶ可能性があるため、早急な処置が必要です(※1)。
たとえ性器からの出血が少なくても、おしるしではなく異常出血である恐れがあるため、すぐに産婦人科を受診してください。
おしるしか異常出血か迷ったら病院に連絡を
おしるしは人によって量や色、状態が違うので、異常出血と見分けるのは難しいかもしれません。出血は体の異変を知らせるサインでもあるので、自分の身に起こっている出血の原因が分からないときは、迷わず病院に連絡してください。
出産を間近に控えた臨月は、「無事に産めるかな」「産んだ後もきちんと育てられるかな」と不安が募る時期です。できるだけ病院やパートナーのサポートを得ながら、もうすぐ赤ちゃんに会えると考えて、落ち着いた気持ちで毎日を過ごせるといいですね。